暗号資産(仮想通貨)取引所bitbankを運営するビットバンクが公開した「LN Trends」最新号を転載してお届けします(LN:Lightning Network)。
1. LN市場の概況

参照:AMBOSS
概要:2026年5月28日時点で、公開ノード数は約15,033であり、4月末(約15,016)と比べてわずかに増加している。ノード数については、2026年に入ってから小幅な増加基調が続いている。
一方、キャパシティは約4,905 BTCであり、4月末(約4,916 BTC)から約11 BTC減少している(おおむね0.22%減)。このことから、ネットワーク上に預け入れられている流動性の総量は、引き続き弱含みで推移していると考えられる。
チャネル数は約45,528であり、4月末(約45,500)から約28本増加している(約0.06%増)。接続本数についても小幅に増加している。
以上を踏まえると、ノード数およびチャネル数は小幅に増加している一方で、キャパシティは減少している。このため、大口チャネルの閉鎖や、運用者による資金配分の見直しが続いている可能性がある。
| 日付 | ノード数 | キャパシティ数(BTC) | チャネル数 |
| 5/28 | 15,033 | 4,905 | 45,528 |
| 4/20 | 15,016 | 4,916 | 45,500 |
| 2/28 | 15,008 | 4,944 | 45,317 |
| 01/31 | 14,923 | 5,387 | 45,447 |
| 12/31 | 14,924 | 5,798 | 46,061 |
| 11/30 | 15,104 | 5,428 | 46,775 |
| 10/31 | 15,042 | 4,165 | 46,398 |
| 09/30 | 14,847 | 3,985 | 46,034 |
| 08/15 | 14,476 | 3,827 | 45,555 |
| 07/15 | 13,978 | 3,839 | 45,295 |
用語説明
ノードとは
ライトニングネットワークに参加するソフトウェア単位です。中継やチャネル開設の基点となり、ネットワークの広がりの目安になります。
キャパシティとは
ネットワーク上で送金に使えるビットコインの合計です。流動性や経済規模の目安になります。
チャネルとは
2ノード間のオフチェーン決済路です。即時・低コスト送金の経路として機能し、接続の密度を表します。
BitGo、Crypto-as-a-ServiceにLightning決済を追加(Voltageと提携)
概要:機関投資家向けの暗号資産インフラ企業であるBitGoは、2026年5月に、自社の「Crypto-as-a-Service」にライトニングネットワーク対応を追加すると発表しました。
これにより、フィンテックや取引所、決済プラットフォーム、消費者向けアプリが、BitGoのAPIを通じて自社プロダクトにビットコインの即時・低コスト決済機能を組み込めるようになります。
BitGoは、米通貨監督庁(OCC)の監督下にある信託銀行を通じた適格カストディや全米のライセンスを提供しており、ライトニングのノード運用と流動性管理についてはVoltageとの提携で自動化するとしています。
説明:この発表の要点は、ライトニングを「自分で運用するインフラ」から「規制対応の事業者が肩代わりするサービス」へ移す流れがより明確になった点にあります。事業者は、ノードの常時稼働や流動性の確保といった運用負担を負わずに、ビットコイン決済を自社サービスへ載せられます。
ライトニング単体では「誰が流動性を用意し、誰がノードを24時間動かすか」が導入の壁になります。BitGoはカストディ、ライセンス、API、流動性管理を束ねることで、その壁をまとめて引き受ける設計を採っています。クレジットカードの裏側を意識せずに加盟店が決済を受けられるのと似た構造です。
国内の事業者にとっては、ライトニング決済を「自前のノード構築」から始めるのではなく、規制対応済みのカストディ事業者のAPIを利用する選択肢が現実味を増していることを示します。入出金の高速化、加盟店精算、少額決済、リワード付与などの用途で、自社でフルノードを抱えずに検討を始める出発点になりえます。
Tando、ケニアの4,000万件のM-Pesa番号をLightningアドレス化
概要:ケニアのフィンテック企業Tandoは、2026年5月12日、同国のモバイルマネー「M-Pesa」に紐づく約4,000万件の電話番号を、そのままライトニングアドレス([電話番号]@bitcoin.co.keの形式)として使えるようにしたと発表しました。
世界中の送金者が任意のライトニングウォレットからケニアの電話番号宛にビットコインを送ると、受取人はその相当額をケニア・シリング(KES)でM-Pesa残高に即時受け取れる、という仕組みです。
基本的な受け取りにはアプリのダウンロードやKYC登録を必要とせず、希望者はbitcoin.co.keでアドレスを「請求」してノンカストディアルのビットコインウォレットとして確定することもできます。
説明:この事例の核心は、ライトニングの強みである「世界中から即時・低コストで価値を送れる」点と、現地で最も普及した決済手段(M-Pesa)の「最後の1マイル(着金・現金化)」を直接つないだことです。送金は速くても、受取人がウォレットや取引所の操作でつまずけば意味がない、という課題に正面から答えています。
受取側は法定通貨(KES)で着金し、送金側はライトニングを使う、という通貨変換をTando側が吸収する設計です。これは4月号で取り上げたニュージーランドのStackedと同じ発想であり、「ユーザーには見えないが裏でライトニングが動く」体験が、新興国の送金で具体的な形になりつつあることを示します。
国内の新規事業の観点では、「電話番号=送金アドレス」という設計が、海外送金や越境EC、出稼ぎ労働者向け送金サービスの企画の種になります。受取国側の既存のキャッシュアウト網(モバイルマネー、銀行、コンビニ等)とライトニングを橋渡しできれば、専用アプリの普及を待たずにサービスを立ち上げられる可能性があります。
一方で、KESでの着金は中間に事業者の換金・精算が入る「ブリッジ」であり、その区間ではTandoが為替・流動性・コンプライアンスの責任を負います。完全なノンカストディアルになるのは利用者が自らアドレスを確定した場合に限られる点は、設計上の前提として押さえる必要があります。
Mixin、Lightning対応をウォレットに追加(Taproot Assets対応を含む)
概要:マルチチェーン対応ウォレットを提供するMixinは、2026年5月22日、ビットコインのライトニングネットワーク対応をアプリに追加したと発表しました。
利用者はノードやチャネルの管理を意識せずに、アプリ内でライトニングBTCの送受信ができます。各ユーザーには無料のライトニングアドレスが付与され、日常の支払いに使える再利用可能な受け取り口となります。
報道によると、Mixinはライトニング経由のBTCに加えて、USDTやTaproot Assetsの入金にも対応するとしています。
説明:この対応のポイントは、ライトニングを「BTCの送受信」だけでなく、Taproot Assetsを通じたステーブルコイン等の資産移転の入口としても位置づけている点です。ビットコインのレイヤー上で、ドル連動資産を含む複数資産を同じ決済路で扱う動きが、消費者向けウォレットにも降りてきています。
「無料のライトニングアドレスを全ユーザーに配る」設計は、メールアドレスのような恒久的な受け取り口を一人ひとりに持たせる発想です。これにより、都度インボイスを発行する手間が減り、SNSのプロフィールや請求書に固定の受け取り先を載せる、といった使い方が広がります。
国内のウォレット・フィンテック事業者にとっては、自前でライトニングノードや流動性を抱えなくても、既存アプリにライトニングアドレスを組み込むことでビットコイン受け取り体験を提供できる、という参照例になります。少額の投げ銭、クリエイター支援、サブスクの少額課金などとの相性を検討する出発点になりえます。
マレーシアの取引所Sinegy、Lightningを統合し即時送受信に対応
概要:マレーシアの暗号資産取引所Sinegy(Sinegy DAX)は、2026年5月、自社プラットフォームにライトニングネットワークを統合し、利用者がビットコインを数秒で送受信できるようにしたと発表しました。
通常のオンチェーン送金が30分〜1時間程度かかるのに対し、ライトニング経由なら数秒で完了するため、小口決済やリアルタイムの資金移動に適するとしています。
Sinegyはマレーシア証券委員会に「認定市場運営者(RMO)」として登録されており、今回の統合は暗号資産入金の手数料無料方針を支えるものと位置づけています。同社は自動取引スクリーニングやトラベルルール対応などのコンプライアンス対策も維持するとしています。
説明:この事例の意味は、ライトニング統合が一部の先進的なサービスだけでなく、規制下にある地域の取引所にも広がっている点にあります。入出金の高速化と低コスト化は、取引所にとって顧客体験の改善とオンチェーン手数料負担の軽減に直結します。
注目すべきは、トラベルルール(送金者・受取人情報の特定・共有義務)への対応を維持したうえでライトニングを導入している点です。即時性とコンプライアンスは二者択一になりがちですが、規制登録済みの事業者が両立を図る実例として参考になります。
国内の交換業者・送金事業者にとっては、ライトニング導入を検討する際に「速度・コスト」だけでなく「トラベルルールやモニタリングをどう両立させるか」が論点になることを示します。海外の規制下事業者の実装は、国内のコンプライアンス設計を考えるうえでの比較対象になりえます。
Bitcoin++ Vienna:「LightningかArkか」ではなく「LightningとArk」
概要:2026年5月27〜28日にウィーンで開催された開発者向けカンファレンス「Bitcoin++(Economics Edition)」では、ライトニングとビットコインの別のセカンドレイヤー「Ark」の関係が主要な論点となりました。
研究者のRene Pickhardt氏は「LightningかArkかではなく、LightningとArkを一緒に使うものだ」という趣旨の発表を行い、両者を競合ではなく補完関係として位置づけました。会場では、Arkを実装したオープンソースのウォレット「Arkade」が公開されたほか、ライトニングとの相互運用のデモも示されました。
説明:ここでの論点は、ライトニングとArkの得意分野の違いです。ライトニングは、チャネルと流動性を持つ参加者間での即時・高頻度・少額の送金に強みがあります。一方Arkは、チャネル開設や着金用の流動性(インバウンド)を用意せずに受け取りを始められる「オンボーディング」と、まとめて決済するバッチ処理に強みがあるとされます。
Arkは「仮想UTXO(VTXO)」という事前署名済みのオフチェーン出力を使うため、利用者はチャネルを用意しなくてもビットコインを受け取れます。受け取りはArkで手軽に、支払いはライトニングで広く、という二段構えは、4月号で取り上げたウォレット「Bark」の発想とも重なります。ライトニングを各L2をつなぐ「共通語」として位置づける見方が、開発者コミュニティで共有されつつあります。
国内の事業者にとっては、ライトニング単体で「インバウンド流動性をどう用意するか」に悩むのではなく、ArkのようなL2と組み合わせて受け取りの障壁を下げる設計が選択肢になりつつあることを示します。ただしArkは定期的な処理(ラウンド)への参加や協調サーバへの依存というトレードオフがあり、まだ多くが初期段階・実験段階である点は、事業化の検討時に前提として押さえる必要があります。



