使われてこそビットコイン──東京ビットコインベース代表・川合氏に聞いた2年目の挑戦、佐渡のライトニング構想とANAPの認知戦略【独占取材】

ビットコイン(BTC)の普及を目的に、東京・四谷に開業した東京ビットコインベース(TBB)が4月25日、開業1周年を迎えた。

TBBがあるのは、四ツ谷駅から徒歩5分ほどの住宅街。ビットコインの理解と普及を支援する国際プロジェクト「Plan ₿ Network(プランビーネットワーク)」の一環として、スイス・ルガーノ市に続く世界で2番目のBTC普及施設として昨年設立された。

入り口にはBTC生みの親とされるサトシ・ナカモト像が鎮座し、来場者を迎える。施設の運営資金は、Plan ₿ Networkの財政支援パートナーである米Fulgur Venturesの日本法人、フルグル合同会社が全額出資している。

〈TBBの入り口に設置されているサトシ・ナカモト像〉

同社CEOを務める川合林太郎氏は、TBBを運営するBH Tokyoの代表のほか、企業によるBTC保有を進めるANAP(アナップ)ホールディングス代表取締役社長も務める人物だ。

1周年記念で行われたイベントの様子は既報の通りだが、NADA NEWSはこの日、川合氏にTBB1周年の歩みやANAPの事業展開、今後の展望について聞いた。

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思想ではなくユースケース

施設開業から1年の手応えについて川合氏は、「なんとかやりきったという感覚と、もっとできたはずだという思いの両方がある」と切り出した。

当初は「拠点をつくれば自然と人が集まり、コミュニティや事業が生まれる」と想定していたが、日本では海外のビットコインハブのような自発的な集積は起こりにくかったという。「誰に来てもらい、何を提供するのか」という設計の重要性が見えてきたと語った。

その反省から途中で運営方針を転換したとし、コアなビットコイナー向けの思想や技術の発信に加え、初心者や一般層を意識した導線づくりを意識するようになったと明かした。毎月1回、誰でも参加できるビットコインの交流イベント「First Friday」を開くなど、ブロックチェーンやビットコインの思想ではなく、「ユースケース」から関心を持ってもらう取り組みを進めている。

「いきなりビットコインの思想を語っても伝わらない。まずは生活に近いところから関心を持ってもらう必要がある」と川合氏。重視するのが「決済」での活用だという。

ビットコインは決済のためのもの

TBBでは毎週、ライトニング決済で支払いができるキッチンカーを招いている。ライトニング決済は、低手数料で即時送金を可能にするビットコインのレイヤー2技術で、少額決済にも適していることが特徴だ。利用者はスマートフォンにダウンロードした専用ウォレットを使い、QRコードを読み取ることなどで送金ができる。

〈1周年を迎えた東京ビットコインベース。イベント当日も、キッチンカーが出店していた〉

川合氏は飲食店やキッチンカー事業者などへのヒアリングで、クレジットカードや電子決済が抱える高い手数料や入金サイクルの遅さといった課題が多く聞かれたと指摘。ライトニング決済は、手数料や資金繰りに悩む事業者にとって合理的な選択肢になると述べた。

川合氏はビットコインについて、価格の話ばかりが先行するが「そもそもは“お金”として生まれたもの」と指摘。資産価値の保存という面では「誰も疑いようのない段階に来ている」と評価する一方で、「決済として使われるようになったときが次の成長のタイミングになる」とし、ビットコインを社会インフラとして捉える考えを強調した。

カフェと宿泊施設、TBB改修へ

こうした考えのもと、TBBは2年目に向けて施設の大規模な刷新を計画している。

同施設はもともと、シェアオフィスとして使われていた建物を改装して誕生した。地下1階・地上4階建てで、延床面積は約1300平米。ビットコイン関連企業のシェアオフィスとしても活用されているが、各階の構成を見直すという。

現在、来場者の交流スペースとして使われている1階はライトニング決済ができるカフェへと改装し、一般層が立ち寄りやすい導線を設けると川合氏は説明。2階はビットコインの歴史や思想を学べるミュージアムのような空間とし、3階以上はよりコアなコミュニティ向けのスペースとして再構築する方針を明かした。

工事は今夏にかけて実施し、秋口のリニューアルを見込む。

さらに、訪日する海外のビットコイナー向けの宿泊施設の整備も進んでいる。TBBから徒歩圏内に専用施設を建設中で、2026年中の稼働を予定しているという。世界各地から訪れるビットコイン関係者の受け皿を強化する構えも示した。

川合氏によると、TBBの運営自体は赤字だというが、ビットコインの社会実装は「50年くらいのスパン」で考える必要があるとし、長期視点の投資であることを強調した。

佐渡でライトニング決済の祭典を

川合氏の視線は、地方にも向かっている。「ビットコインは最終的にインフラになるものだ」と繰り返し、社会実装を進めるためのステップとして地方での実証にも乗り出しているとした。

〈新潟県北部に位置する佐渡島。高速船を使えば、新潟港から約1時間:Shutterstock〉

目下の野望として進めているのが、新潟県の佐渡島を舞台とした「ライトニングアイランド」構想だ。川合氏は、島の形がライトニング決済のシンボルマークである”稲妻”に似ていることをきっかけに着想を得たとし、ビットコインによる決済の普及と地域経済の再生を組み合わせた取り組みだと説明。現地の関係者と協議を進めていると明かした。

〈宿泊先のホテルにあったという、佐渡島をかたどったオブジェ。上空からの地形が稲妻のように見える:川合氏提供〉

「ビットコインで地域の経済が回るモデルをつくりたい」と川合氏。世界文化遺産に登録された金山や世阿弥が配流された地として知られる歴史、全国の能舞台の約3分の1にあたる約30棟が現存する能楽文化など、島の観光資源とビットコインを結びつけることで新たな経済圏の構築を目指す考えを示した。

その先に見据えるのが、ビットコインを軸とした大規模な祭典の開催だ。1969年に米ニューヨーク州で開かれた野外音楽イベント「ウッドストック・フェスティバル」になぞらえた“ビットコイン版ウッドストック”とも言える構想で、佐渡を舞台に国内外の参加者を集めるイベントを実現したいという。

ライトニング決済の普及を象徴する取り組みとして、同決済のリリースや実装から10周年を迎える2027年から28年ごろの開催を視野に入れる。この取り組みもフルグル、TBB、ANAPの3社で進める構えだ。

ANAPのビットコイン事業、認知拡大へ

こうしたビットコインの社会実装を見据えた取り組みは、自身が率いるANAPホールディングスでの戦略にも通じる。川合氏は、同社で進めるトレジャリー戦略についても、「信念がなければ続けられない」と強調。短期的な株価や市況に左右されない長期視点が不可欠だとし、本業のアパレルを活用したビットコインの打ち出しとともに、同社を黒字化させることが自身の使命だと述べた。

実際に同社は、昨年後半からの市況が軟調な中でもビットコインの買い増しを継続しており、4月22日には約9BTCを追加取得。総保有量は約1431BTCに達し、国内上場企業ではメタプラネット、ネクソン、リミックスポイントに次ぐ4番目の規模となっている。

一方で、同社を巡っては一部週刊誌報道でガバナンス体制の甘さが指摘されるなど、世間の注目を集める場面もあった。報道では川合氏について「ビットコイン事業にしか興味がない」との記述も見られた。

〈ANAPが昨年発表した新ブランド、COMMON BLOCK。ビットコインの要素を取り入れている〉

この点について川合氏は、「個別の報道に一つひとつ反応するつもりはない」としつつ、ビットコインを起点に金融や政治、地域経済など幅広い分野への理解が広がると説明。ビットコインは「知の起源」と言えるとし、ビットコインにしか興味がないという言葉は、むしろリスペクトだと受け取っていると述べた。

そのうえで、日本ではビットコインへの理解自体がまだ十分に広がっておらず、ANAPが取り組んでいる事業も「ほとんど知られていない」と指摘。「ANAPといえばビットコイン」と言われるくらいまで認知を高めたいと語り、TBBでの取り組みとあわせて発信を強化していく姿勢を改めて示した。

ANAP、TBB、フルグルの3社を軸に、ビットコインの社会実装をどのように進めていくのか。どこまで“生活に根ざしたインフラ”として浸透させられるか。川合氏の今後の取り組みに注目が集まりそうだ。

|取材・文・写真:橋本祐樹
|トップ画像:東京ビットコインベースの運営元代表を務める川合林太郎氏

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