■分析サマリー
● ビットコインは5月1日の76,305ドルから5月31日の73,670ドルまで下落し、月間では約3.5%のマイナスとなった。
● 長期保有者の保有継続、取引所残高の減少、供給の固定化は続いている一方、新規資金流入やネットワーク活動は弱く、需要不足が鮮明になった。
● オンチェーン上では「底割れ回避と構造改善」は進んだが、本格的な強気相場への転換を確認するには至らなかった。
2026年5月のビットコイン市場は、一言で表現するなら「売り崩された相場」ではなく、「買い手不足の相場」だった。
5月1日に76,305ドルでスタートしたビットコインは、5月31日に73,670ドルで月を終えた。月間では約3.5%の下落となり、S&P500や日経平均が史上最高値圏を維持する中で、ビットコインだけが軟調な推移となった。
しかし、オンチェーンデータを詳しく見ると、2022年の弱気相場や2025年後半の急落局面とは異なる景色が見えてくる。
5月前半には、ビットコイン価格が多くの投資家の平均購入価格帯を上回る場面が見られた。これは、それまで含み損を抱えていた投資家の損失が大きく改善し、市場全体の心理が回復し始めたことを意味する。実際、実現損益もプラス圏へ戻り、市場には一時的に楽観ムードが広がった。
ところが、その後のオンチェーンデータは市場の弱さを示していた。
添付のチャート「Bitcoin: Realized Cap」によると、実現時価総額(Realized Cap)の30日純増額は約28億ドルにとどまり、過去の強気相場初期に見られた月間100億ドル超の資金流入には遠く及ばなかった。市場には資金が流入していたものの、その規模は本格的な上昇相場を支えるには十分ではなかったのである。

つまり価格が一時的に回復しているように見えても、その裏側では新規の買い需要が不足していた。
これは現在の市場構造を理解するうえで非常に重要なポイントだ。
価格が下落する市場には、「売りが増えて下がる市場」と「買いが減って下がる市場」がある。
2026年5月のビットコインは後者だった可能性が高い。
実際、供給面のデータは決して弱くない。
月末時点で供給の59.84%が含み益状態にあり、60.66%のBTCは1年以上動いていない。さらに42.58%は3年以上移動しておらず、多くの長期保有者が依然として売却していないことが分かる。
また、添付のチャート「Bitcoin: Exchange Reserve – All Exchanges」によると、取引所が保有するBTC残高は継続的に減少している。30日ネットポジション変化はマイナス46.7億ドルとなり、市場に流通する供給量はむしろ減少していた。供給面だけを見ると、現在の市場は売り圧力よりも供給不足が意識される状態にある。

一方で、需要側は明らかに勢いを欠いていた。
5月後半になるとアクティブアドレス数や送金量が減少し始め、オンチェーン活動は鈍化した。
添付のチャート「Bitcoin: Active Addresses」によると、アクティブアドレス数は2024年の活況時と比較して低い水準で推移している。価格が反発する局面はあったものの、ネットワーク利用や新規参加者の増加は限定的であり、需要回復の弱さが続いていることが分かる。

ネットワーク利用者が増えていない中で価格だけが上昇する状態は長続きしにくい。
さらに、オンチェーンデータを見ると、多くの投資家は利益が出ている状態にあるものの、その利益を積極的に確定している状況ではなかった。
添付のチャート「Bitcoin: Spent Output Profit Ratio (SOPR)」によると、SOPRは1付近で推移している。これは多くの投資家が大きな利益確定も損切りも行わず、損益分岐点付近で売買していることを示している。

市場参加者の売買はほぼ損益分岐点付近で行われており、「強気だから買う」「弱気だから売る」という明確な方向感が見えにくい状態だった。
また、市場全体としては含み益を抱える投資家が増えている一方で、過去の強気相場終盤で見られたような過熱感や熱狂は確認されていない。投資家心理は改善しているものの、まだ本格的な強気相場を確信する段階には至っていないと言える。
さらに月末にはクジラの動きも警戒材料となった。
最新24時間では約3.53億ドル相当のBTCが取引所へ送金されていた。これは必ずしも即売却を意味するわけではないが、大口投資家が売却可能な状態に移していることを示している。市場の買い需要が弱い局面では、このような大口供給が価格の重しになりやすい。
もっとも、ネットワークそのものは依然として強固だ。
ハッシュレートは過去最高圏で推移し、難易度も高水準を維持している。マイナー収益は1日あたり約3,290万ドルを維持しており、マイナーによる大規模な投げ売りも確認されていない。ネットワークの安全性や長期的な健全性という観点では、ビットコインは依然として強い状態にある。
総合すると、2026年5月のビットコイン市場は「悲観の解消」には成功したが、「強気相場の再開」を確認するには至らなかった月だった。
供給は引き続き締まり、長期保有者は売っていない。しかし、新規資金流入、ネットワーク活動、実需の回復はまだ限定的である。供給不足は進んでいるが、それ以上に需要不足が目立つ状況だった。
現在の市場は、「売り手が多い市場」ではなく、「買い手が少ない市場」だ。
裏を返せば、需要さえ戻れば相場環境は大きく変わる可能性がある。取引所残高は減少し続け、長期保有者は依然として保有を継続している。供給面だけを見れば、2022年のような投げ売り相場とは全く異なる状況にある。
本格的な上昇相場への転換には、ETF資金流入の再加速、アクティブアドレスの増加、実現時価総額の力強い拡大といった「需要回復の証拠」が必要になるだろう。
現時点でオンチェーンデータが示しているのは、強気相場の確信ではなく、「回復できるかどうかを市場が試している段階」である。5月はその試験期間だったと言えるだろう。
■ショート動画
(5月振り返り)なぜビットコインは5月に下落したのか──オンチェーンデータで読み解く【エックスウィン ビットコインリサーチ】
https://youtube.com/shorts/WFRHv7OVaXQ


