● トランプ大統領の「ホルムズ海峡は開放される」というSNS投稿を受け、BTC・ETHは一時反発した。
● しかしETH市場では依然として、「買いが入っているのに価格が上がらない」という弱い構造が続いている。
● 現在の焦点は、「本当に新しい資金が戻っているのか」、それとも単なるショートカバー反発なのかである。
週末の暗号資産市場は、トランプ大統領のSNS投稿をきっかけに一時的な反発を見せた。トランプ大統領はSNS上で、「ホルムズ海峡は開放されることになる」と投稿。さらに、中東主要国首脳と電話会談を行い、イラン問題や和平合意について協議したこと、すでに大部分は交渉済みであり、現在はアメリカ・イラン・関係国による最終調整段階にあることを明かした。
この発言を受け、市場では「中東リスクがやや後退するかもしれない」という期待感が広がり、BitcoinとEthereumには買い戻しが入る展開となった。特にここ最近は、中東情勢悪化、原油高、インフレ懸念、高金利長期化観測によってリスク資産全体が不安定化していたため、今回の発言は“最悪シナリオ回避”として受け止められた可能性が高い。

ただし、今回の反発だけで市場が完全に安心モードへ戻ったわけではない。特にETH市場では、価格以上に“内部構造の弱さ”が警戒されている。現在のETH市場で最も特徴的なのは、「買いが入っているように見えるのに、価格が上がらない」という現象である。
実際、オンチェーンやデリバティブ指標を見ると、Spot Taker CVDは買い優勢で、Fundingも依然プラス圏を維持している。しかし、その強さは以前ほどではなく、市場全体を押し上げるほどの勢いは確認されていない。
さらにExchange Netflowもマイナス方向、つまりETHが取引所から流出している状況が確認されている。本来、取引所流出は強気材料になりやすいが、今回はそれでも価格下落を止められていない。それにも関わらずETH価格は5月11日の約2,375ドルから、5月23日には約2,031ドルまで下落した。これは単純な「買い不足」ではなく、“買い以上の売り圧力”が市場に存在している可能性を示している。

重要なのは、価格は単純に「買いの量」だけで決まるわけではないという点だ。市場では、成行買いが増えていても、その上にさらに巨大な売り注文が並んでいれば、価格は上昇できない。
現在のETH市場では、この「買いを上で吸収される構造」が発生している可能性が高い。特にマーケットメイカーや大口投資家は、公開板に表示されないアイスバーグ注文や隠れた流動性を使うことが多く、表面的な注文状況だけでは実際の売り圧力を把握し切れない。
つまり、多くの投資家が「買いが増えているのに、なぜ価格が下がるのか?」と感じている一方で、実際にはその買いがより大きな売り供給に吸収され続けている可能性があるのである。これは、表で示した「Visible sell walls / hidden liquidity」が市場へ弱気に作用している状態とも整合している。

さらに現在のETH市場では、マクロ環境そのものも逆風になっている。5月中旬には、米上院銀行委員会で「Clarity Act」が前進したことで、暗号資産市場には一時的な期待感が広がった。しかし市場はすぐに、「インフレ再燃」と「高金利長期化」の方へ意識を切り替え始めた。
ReutersやBarron’sなど海外メディアも、ETH下落を“高金利環境継続”と関連付けて報じている。ETHのような高ベータ資産は、金融緩和期待が後退すると一気に売られやすくなる。つまり今回は、「暗号資産業界の好材料」よりも、「マクロ金利環境悪化」の方が市場への影響力が強かったということだ。
そして、もう一つ重要なのがデリバティブ市場の変化である。本当に強い上昇相場なら、Open Interest(OI)が増え、Fundingが安定し、ロング優勢が拡大する流れが同時に発生しやすい。
しかし現在のETH市場では、そうした“強気の連鎖”がまだ確認できていない。むしろ最近は、清算を伴う巻き戻しや短期ショートカバーが中心となっている可能性が高い。
市場全体では約6.61億ドル規模の清算も発生しており、ETH市場もその影響を大きく受けた。現時点では、価格下落と同時にOI低下が見られる場面も多く、まだデレバレッジ主体の相場である可能性が高い。ただし、今後OI増加を伴う下落へ移行する場合は、新規ショート主導相場へ変化する可能性があるため注意が必要だ。
テクニカル面でも、ETHはまだ重要局面を脱していない。
市場では現在、1,984ドル、さらに1,937ドル付近が重要な防衛ラインとして意識され始めている。特に重要なのは、「価格下落時にOIがどう動くか」である。
もし価格下落と同時にOIが減少するなら、それはデレバレッジ、つまり既存ポジション整理が進んでいる状態である。しかし、価格下落と同時にOIが増え始める場合、それは新規ショートが積み上がっている可能性を示す。
後者の場合、下落トレンドはさらに不安定化しやすい。つまり今後のETH市場は、単なる調整局面ではなく、“市場構造そのものが変化する局面”へ入る可能性もあるということだ。
今回のトランプ発言によって、市場心理は確かに少し改善した。しかしETH市場の内部では、まだ「本格的な強気相場」と呼べる状態には戻っていない。現在の反発は、“安心感による買い戻し”の色合いが強く、本当に重要なのは、このあと現物資金が継続的に戻ってくるかどうかである。
特に今後は、ETFフロー、Coinbase Premium、OIの質、Fundingの安定性など、「実需型の買い」が回復するかが重要になる。一方で、現在のETH市場は、悲観が先行し過ぎている可能性もある。もし今後、マクロ環境安定化と現物需要回復が同時に起きれば、現在の価格帯は逆に“アンダーバリュー局面”として振り返られる可能性もあるだろう。
■ショート動画
(異変)イーサリアム市場の異変 “買われているのに下がっています”【エックスウィン オンチェーン分析】
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