・テザー(Tether)は、不正活動に関連する3億4,400万ドル相当のUSDTを凍結し、暗号資産市場全体で規制当局の監視が強まった。
・ジャスティン・サン氏、コインベース(Coinbase)、Geminiをめぐる法的措置が、市場の弱気心理を強めた。
・戦争を背景とした不透明感と規制上の懸念が重なるなか、トレーダーがアルトコインから資金を引き揚げ、ビットコイン・ドミナンスは60%を上回った。
Tether、3億4,400万ドル相当のUSDTを凍結 トランプ氏関連WLFIと米大手2取引所も法的問題に直面
Tetherは4月23日、米法執行機関および米財務省外国資産管理局と連携し、不正活動に関連する2つのアドレスに保有されていた3億4,400万ドル相当のUSDTを凍結したと発表した。公式発表の中でTetherは、世界340以上の機関との協力を今後も継続する方針を強調し、これまでに凍結した資産は累計44億ドルを超えると説明した。
「USDTは不正活動の逃げ場ではない。制裁対象の組織や犯罪ネットワークとの信頼できる関連性が確認された場合、当社は直ちに、かつ断固として対応する」─Tetherのパオロ・アルドイーノCEO
この発表を受け、市場関係者の間では即座に反応が広がった。LunarCrushのデータによると、USDTに関するSNS上のエンゲージメントは同日比38%増の980万件規模に急増した。一方、USDTの時価総額は7%減少し、1,888億ドルとなった。

同じタイミングで、法的な緊張も一段と高まった。ジャスティン・サン氏は、ドナルド・トランプ氏とその家族に関連する暗号資産事業者ワールド・リバティ・ファイナンシャル(WLFI)を相手取り、訴訟を起こした。サン氏の保有トークンが2025年9月に取引可能となった後、WLFIがサン氏の保有する数千万ドル相当のトークンを不当に凍結し、移転を制限したと主張している。
規制圧力は、米国を拠点とする大手取引所2社にも及んだ。ニューヨーク州司法長官は4月21日、CoinbaseとGeminiを相手取り、両社の予測市場サービスをめぐって訴訟を起こした。当局は、これらの商品が現実の出来事に連動する無認可の賭博契約に類似していると主張している。
なお、これらの措置はカストディや現物取引といった取引所の中核業務には影響しない。ただし、業界を取り巻く規制環境が一段と厳しさを増していることを改めて示すものとなった。
ビットコイン・ドミナンス、半年ぶりに60%突破 トレーダーはアルトコインのリスクを圧縮
法的圧力と地政学リスクが高まるなか、トレーダーはビットコインへの資金シフトを強めている。市場データによると、執筆時点でビットコイン・ドミナンスは60.7%まで上昇した。これは2025年11月以来の高水準であり、3月30日に記録した58.4%から4週間にわたって上昇基調が続いている。

特に今回の上昇は、ビットコイン・ドミナンスの週間上昇幅としても特に大きいものだった。USDTの凍結、ジャスティン・サン氏とWLFIをめぐる訴訟、CoinbaseとGeminiに対する新たな規制措置という、米国発の一連の法務・規制関連ニュースが相次いだ影響を示している。

4月23日のBTCは、Tetherによる3億4,400万ドル相当USDTの凍結開示から12時間以内に3,100万ドル超のロングポジションが清算されたものの、日中の下落率を2%未満に抑え、7万7,000ドルを上回る水準を維持した。一方、暗号資産市場全体の時価総額は2.5%減の2兆4,000億ドルとなった。規制をめぐる緊張感が高まるなか、アクティブトレーダーがアルトコインへのエクスポージャーを減らしていることが示された。
今後の焦点:暗号資産関連100団体超が連合を結成 CLARITY法案の承認機運回復を狙う
今後を見据えると、長期的な規制の明確化を求める業界関係者にとって、Digital Asset Market Clarity Act、いわゆるクラリティ(CLARITY)法案の行方が引き続き中心的な焦点となる。4月23日には、100を超える暗号資産企業や業界団体で構成される連合が、米上院銀行委員会に対し、同法案を次の審議段階へ進めるよう求める書簡を送付した。業界内で危機感が強まっていることを示す動きだ。
この働きかけの背景には、米国の伝統的な銀行業界からの反対が強まっていることがある。1月には、地域銀行の幹部約100人が議員宛てに別の書簡を提出し、ステーブルコイン発行体による利息支払いを制限するよう上院議員に求めた。銀行側は、利息付きステーブルコインによって銀行システムから預金が流出し、融資能力が低下するリスクを指摘している。
交渉は現在も続いているものの、米中間選挙のサイクルが近づき、立法日程が窮屈になる前に同法案が成立するかどうかをめぐる懸念が高まっている。

CLARITY法案が2026年中に成立する可能性を追跡する予測市場のデータでは、今週に入り市場心理が悪化した。業界による最新のロビー活動が行われるなかでも、同法案が2026年に署名され成立する確率は、4月23日時点でポリマーケット(Polymarket)上で約43%まで低下した。賭け金の総額は55万ドルを超えている。
承認確率は4月18日時点の65%から低下した。背景には、党派間交渉の難航、米当局が関与する法的措置の強化、そしてトランプ氏の暗号資産への関与をめぐる監視の高まりがある。

こうした規制上の不透明感は、暗号資産市場内におけるビットコインの「安全資産」としての魅力を強めている。多くのアルトコインが分類上のリスクを抱える一方で、ビットコインの法的位置づけは比較的明確だ。Bitboのデータによると、2025年11月時点で確認された最新の提出資料ベースでは、少なくとも10カ国が合計51万8,526BTCを保有している。これは約404億7,000万ドル相当で、総供給量の2.47%にあたる。


