世界は借金まみれ、ビットコインは資産になるのか?【エックスウィンリサーチ】

● M2と世界債務の拡大は流動性環境を形成するが、BTC価格を直接決めるのは資金フローの向きである。
● ビットコインは「マクロ流動性」と「ステーブルコイン・ETF」という暗号資産ネイティブ流動性の二層構造で動く。
● 転換点は総量ではなく、ETF累積フローとステーブル供給トレンドの変化に先行して現れる。

米国M2(広義のマネー)は、家計・企業が保有する“すぐ動くお金”の総量を示す代表的な指標だ。FREDのM2SL(季節調整)で見ると、M2は2010年末の約8.8兆ドルから2025年末には約22.4兆ドルへ拡大した。特に2020年(前年比+約25%)と2021年(+約12%)の急増が際立つ。その後、利上げ局面の2022〜2023年には珍しく縮小し、2024〜2025年にかけて再び緩やかな増加へ戻っている。

重要なのは、M2が“金融政策だけ”で増えたわけではない点だ。コロナ期の伸びの主因は、国債発行を通じた財政移転(給付や支援)が家計・企業の預金として積み上がったこと、そして危機対応で市場安定策が動き、民間のバランスシート構成が変化したことにある。つまり、M2の拡大は「政府債務の増加」と強く結びついていた。

そして、いま世界全体で同じ“借金の波”が続いている。Institute of International Finance(IIF)の集計として報じられる数字では、2025年に世界債務は+29兆ドル増えて総額約348兆ドルへ。増加の中心は政府部門で、米国・中国・ユーロ圏が大きな割合を占める。さらに企業債務もAI投資を背景に膨らみ、新興国の債務GDP比も高水準にある。債務そのものが直ちに危機を意味するわけではないが、高金利が続くほど利払い負担が重くなり、金融環境を引き締める“逆流”が起きやすい。

では、流動性はどう資産価格へ伝わるのか。基本の回路はシンプルだ。①割引率(特に実質金利)の低下、②ポートフォリオのリバランス、③銀行信用と預金創造、④リスク選好の回復。ここで注意したいのは、「M2が増えた=ビットコインが必ず上がる」ではないこと。相場を動かすのは総量よりも、資金が“どこへ向かうか”=フローの質である。

ビットコインに限れば、より説明力が高いのは“暗号資産内の流動性レール”だ。具体的には、ステーブルコインの増減(購買力の増減)と、現物ETFの継続的な純流入(機関マネーの配管)。実際、2025年後半にはERC20系ステーブルコインの総供給量が約120Bから160B超へ急増し、オンチェーン上の購買力が明確に拡大した。その後2026年初にかけて一時的な供給縮小が見られ、足元では150B台半ばまで回復している。これは、暗号資産市場内の流動性が「拡張 → 収縮 → 再構築」という循環を経ていることを示唆する。

研究面でも、ETFフローはしばしば価格に追随する側面がある一方、継続的な純流入は需給を改善させる材料になり得る。つまり、BTCは「マクロ流動性+暗号資産ネイティブ流動性」の二層で動く。

今見るべきは、①ETFフローの連続性(単日ではなく数週間の累積)、②ステーブル供給のトレンド(90日変化など)、③実質金利と金融環境、④取引所フロー(売り圧と自己保管の動き)。M2と世界債務は“背景条件”として重要だが、転換のサインは常にフローに先に現れる。結局のところ、流動性は条件であり、相場を決めるのは移動である。

オンチェーン指標の見方

All Stablecoins(ERC20)Total Supplyは、イーサリアム上に存在するドル建て購買力の総量を示す“暗号資産内の流動性指標”。供給増加はオンチェーン資金流入=リスク資産への潜在的買い圧力、供給減少は償還やリスクオフを示唆する。重要なのは水準よりもトレンド変化で、加速・減速が相場転換の先行シグナルになりやすい。