ビットコインは直近で反発し、今回分析するチャートでは約8万1000ドルまで回復している。しかし、価格の上昇だけを見て、市場が本格的な回復局面に入ったと判断するのは早い。バイナンスのオンチェーンデータを見ると、取引所に保管されるビットコインは増加しており、上昇の持続性を慎重に見極める必要がある。
価格は売買の結果を映す。一方、オンチェーンデータは、その背後で資産がどこへ移動しているかを示す。今回注目したいのは、価格が戻るなかでも、売却に回り得るビットコインが取引所に積み上がっている点だ。
筆者がコインベースとバイナンスを重視する理由
筆者は世界の取引所の動向を分析する際、特にコインベースとバイナンスの情報を継続的に確認している。米国側の需要を考える手がかりとしてコインベースを、グローバル市場の資金移動を捉える手がかりとしてバイナンスを見ている。
バイナンスを重視する理由は、取引規模の大きさにある。CoinGeckoが主要中央集権型取引所10社を対象に集計したデータでは、2025年12月の現物取引高に占めるバイナンスのシェアは38.3%。取引高は約3618億ドルで、2位のBybitの約900億ドルに対して約4倍だった。これは世界の全取引を網羅した割合ではないが、主要取引所のなかで突出した規模であることがわかる。
これほど多くの取引が集まる場所への資産流入は、相場の需給を考えるうえで無視できない。筆者がバイナンスを観測するのは、そこで生じる供給の変化が、世界のビットコイン市場を理解する重要な手がかりになると考えるためだ。
なお、日本向けにはBinance Japanがサービスを提供しているため、「バイナンスは日本から利用できない」と一括りにするのは正確ではない。本稿で分析するのは、国内向けサービスの利用状況ではなく、CryptoQuantがバイナンスとして集計するオンチェーンデータである。
取引所準備金は約70.29万BTCへ増加
最初に確認したいのが、取引所に保管されているビットコインの数量を示す「取引所準備金」だ。

提示したCryptoQuantのチャートでは、バイナンスの準備金は4月後半に約61.6万BTCまで低下した後、増加基調へ転じている。特に8月以降の増加が目立ち、最新表示値は約70.29万BTCと、掲載期間である2026年初来の最高水準に達した。
取引所内にあるビットコインは、外部ウォレットに保管されているものに比べ、売却に移しやすい状態にある。そのため、準備金の増加は潜在的な売り供給の拡大として注意すべき材料となる。
ただし、準備金の増加が、そのまま売却の実行を意味するわけではない。保管先の変更や担保利用など、売却以外の目的も考えられる。また、単一取引所への資産集中と、市場全体の供給増加は区別する必要がある。
それでも、価格が反発する一方で取引所内の残高も増えている以上、上値で売りが出る可能性を軽視することはできない。
純流入も継続、反発局面で供給は減っていない
次に見るのが、取引所への流入量から流出量を差し引いた「ネットフロー」だ。プラスは純流入、マイナスは純流出を表す。

チャートでは8月後半以降、数千BTC規模の純流入が複数回確認できる。直近にも比較的大きな流入があり、最新表示値は約439BTCの純流入となっている。
準備金が取引所内に蓄積された残高を示すのに対し、ネットフローはその増減を捉える。両者は関連する指標であり、独立した二つの売りシグナルとして数えるべきではない。それでも、足元の準備金増加を、資金移動の面から確認することはできる。
現時点では、「価格が上がり、同時にビットコインが取引所から継続的に引き出されている」という構図にはなっていない。反発を持続させるには、取引所に入ってくる供給を吸収できる買い需要が必要になる。
クジラ比率は、大口の一斉売却を示しているわけではない
三つ目の「取引所クジラ比率」は、取引所への総流入量に対し、金額の大きい上位10件の流入が占める割合を示す。大口の送金が流入全体にどれほど影響しているかを見る指標だ。

今回のチャートでは、8月から9月にかけて比率が一時的に上昇する場面があるものの、最新表示値は約0.43となっている。掲載期間の過去のピークと比較して、突出した水準ではない。
したがって、この指標から「足元でクジラが一斉に売り逃げしている」と断定するのは適切ではない。そもそも、この比率は大口の送金割合を示すもので、実際の売却量や、大口投資家の保有比率を示すものではない。
今回の慎重姿勢の中心にあるのは、クジラ比率の異常な上昇ではなく、取引所準備金の増加と、直近にも続く純流入である。
価格の反発を、需給改善と取り違えない
価格が急反発すると、投資家は「下落局面は終わった」と考えやすい。しかし、今回の3指標だけでは、上昇が継続的な現物買いによるものなのか、先物の買い戻しなどによるものなのかは判別できない。
今後は、バイナンスへの純流入が落ち着くか、準備金の増加が止まるかに加え、コインベース側の需要や現物市場の買いが続くかを確認したい。流入が続いても、それを十分な需要が吸収すれば価格は上昇できる。重要なのは、供給と需要の両面を捉えることだ。
ビットコインの反発は前向きな変化である。しかし、オンチェーンデータを見る限り、全面的に楽観できる状態とは言い切れない。筆者は今の市場を、「反発は確認できたが、その持続性を裏付ける需給改善は、なお見極めが必要な局面」と考えている。
※オンチェーンの数値と価格は、本稿で使用したCryptoQuantのチャート表示値に基づく。
ショート動画
ビットコイン反発でも油断禁物!バイナンスに集まるBTC
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