9月利上げ観測はビットコインにどう影響するか──ウォーシュ氏のタカ派発言が財務省の流動性支援期待を打ち消す【価格分析】

・ビットコイン(BTC)は月曜日、7万7500ドルで取引を開始した。ケビン・ウォーシュ氏によるジャクソンホールでのタカ派的な講演を受け、週間高値の8万1500ドルから5%下落した。
・トレーダーがそれまでのハト派的な見通しを巻き戻したことで、9月の利上げ確率はPolymarketで52%、CME FedWatchで57%まで上昇した。
・BTCはドンチャン・チャネルの中央値である7万1974ドルを上回っている。RSIは69.77と強いモメンタムを示す一方、短期的な調整リスクも高まりつつある。

ウォーシュ氏のタカ派発言で9月のFRB政策見通しが一変、BTCは下落

BTCは8月31日月曜日、7万7500ドルで取引を開始した。前週につけた高値8万1500ドルから5%の下落となる。週末にBTCが値を下げたのは、8月28日金曜日にFRB議長のケビン・ウォーシュ氏がジャクソンホールで行った講演の影響を、市場が織り込んだためだ。

CMEのFedWatchツールによると、米連邦準備制度理事会(FRB)が9月に利上げする確率は再び57%となった。ウォーシュ氏のジャクソンホール講演により、8月19日に発表された米財務省の国債買い戻し拡大が生んだハト派的なムードは打ち消された格好だ。

Bar chart showing target rate probabilities: 43% for 350–375 bps and 57% for 375–400 bps (Fed meeting).
<9月の利上げ確率は57% CME FedWatch|CMEGroup.com、2026年8月31日>

2026年7月の米消費者物価指数(CPI)上昇率は前年同月比3.4%となり、2カ月連続で鈍化した。それにもかかわらず、ウォーシュ氏の発言はタカ派寄りで、中央銀行が掲げる2%のインフレ目標を重視する内容だった。

ウォーシュ氏は、FRBが重視するPCE価格指数が前年同月比3.7%となり、CPIなど他の物価指標も高止まりしていると指摘し、次のように述べた

どの指標も完璧ではない。しかし、いずれも同じような状況を示している。インフレ率はわれわれの2%目標を上回っている。したがって、現在のFRBは物価を最優先すべきだ。

さらに、次のように付け加えた。

この夏のインフレ指標は予想より良好だったものの、基調的な動向が明確に改善したと判断できるほどではない。

これらの発言を受け、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)に対するトレーダーの見方は大きく変わった。市場は8月の大半を通じ、政策金利の据え置きを織り込んでいた。実際、市場の予想は8月を通じて激しく揺れ動いた。

ところが8月7日、米労働統計局が市場予想を下回る非農業部門雇用者数を発表すると、見通しは変化した。8月8日時点では、据え置きの確率が64%へ上昇する一方、25ベーシスポイントの利上げ確率は34%となった。

8月12日には、米CPIが市場予想と一致し、前年同月比の上昇率が2カ月連続で鈍化して3.4%となった。原油価格も一時的に下落したため、FRBが政策金利を据え置く確率はさらに高まった。

Dark Polymarket chart labeled 'Fed Decision in September?' with probability lines: No Change 76%, 25 bps increase 24%, 25 bps decrease 1.3%, 50+ bps increase 0.4%; date markers from Aug 9 to Aug 23; blue/orange lines on a dark background
<9月FOMCでの金利据え置き確率は8月14日に76%でピーク|Polymarket.com>

据え置きシナリオの確率は8月14日までに76%へ達した。その後も、米財務省が8月19日に長期国債の買い戻し拡大を発表したことで、長期国債市場の流動性改善や金融環境の緩和期待が強まり、据え置き優勢の状況が続いた。

Polymarket chart of Fed decision odds: 25 bps increase 52% vs no change 48% over Aug 25–31, with a spike on Aug 31 and a small orange line for other moves
<Polymarketでは9月の利上げ確率が52%、据え置き確率が48%|8月31日、Polymarket.com>

しかし、ウォーシュ氏のジャクソンホールでの発言によって流れは一変した。8月31日月曜日の中央欧州時間午前7時時点で、Polymarketの賭け金総額は6800万ドルを超えていた。トレーダーが織り込む9月の利上げ確率は52%、据え置き確率は48%となった。

CME FedWatchは、さらに積極的な利上げ見通しを示しており、利上げ確率は57%、据え置き確率は43%となった。

Coinbaseプレミアムとテイカー売買比率、買い手がまだ後退していないことを示す

米財務省による国債買い戻し拡大の発表は当初、投資家のリスク選好を支えた。これを追い風に、BTCは8月18日から26日にかけて25%上昇し、8万1500ドルに達した。しかし、インフレを重視するウォーシュ氏の発言によって金融引き締めの可能性が再浮上し、BTCがブレイクアウトを維持できるかどうか、トレーダーは再評価を迫られている。

ウォーシュ氏のタカ派的な発言は、レバレッジ取引を行っていた暗号資産トレーダーを直撃した。

Coinglassによると、8月28日金曜日に暗号資産市場で発生した清算額は、合計4億7300万ドルに達した。このうちロングポジションの清算額は3億6100万ドルで、24時間に発生した清算全体の76%を占めた。

さらに8月30日日曜日にも3億5620万ドルの清算が発生した。ここでもロングポジションが大部分を占め、その清算額は2億5760万ドルに達した。

Chart labeled Cryptocurrency Liquidation History showing daily short (red) and long (teal) liquidations from June to Aug 28, 2026, with a y-axis up to B and an overlay listing exchanges and amounts by side.
<8月28日、ウォーシュ氏の発言を受け、暗号資産市場で4億7300万ドルの清算が発生|Coinglass>

ウォーシュ氏のジャクソンホール講演後に先物市場で相次いだロング清算は、BTCの現物市場にも波及した。

米国の現物BTC ETFからは、8月28日金曜日に2億190万ドルが流出した。それまで約30億4000万ドルを呼び込んでいた9営業日連続の資金流入が途切れたことになる。この反転は、FRBを巡る発言の直後に機関投資家の需要が弱まった可能性を示している。

Bitcoin ETF flow table in US$ millions showing daily inflows/outflows for multiple ETFs and a total column.
<8月28日のBTC ETFは2億190万ドルの資金流出。8月14日以来初のマイナス|Farside Investors>

一方、別の市場指標からは、買い手が今回の上昇相場を完全に見限ったわけではないことが読み取れる。

米国とイランの軍事的・経済的緊張が高まるなか、CryptoQuantのCoinbase Premium Index(Coinbaseプレミアム指数)は、8月26日と27日に0.03を上回るプラス圏へ浮上した。同指数がこの水準に達したのは4月以来初めてだ。

市場がウォーシュ氏の発言を消化する過程で、同指数は8月28日に一時マイナスへ転じたものの、29日には再びプラスとなった。

8月31日の執筆時点では、およそ0.02となっている。

Coinbase Premium Indexは、CoinbaseのBTC/USDとBinanceのBTC/USDTの価格差率を示す指標だ。米国を拠点とする投資家の相対的な需要を判断するために広く使われており、プレミアムがプラスであれば、Coinbaseでの買い圧力が強いことを示す。

したがって、同指数の回復は、ETFからの資金流出とは対照的な重要材料となる。

ジャクソンホール講演後、ETFを通じた機関投資家の需要は弱まったものの、プレミアムは5月以降に記録した各月のピーク時の水準をなお上回っている。

今後、同指数が継続的に低下すれば、FRBをきっかけとするリスク回避の動きが現物市場にも広がっていることを意味する。一方、再び上昇すれば、買い手が下落局面を利用してBTCを買い増している可能性が示される。

デリバティブ市場でも、同様に安定化を探る動きが見られる。BTCのテイカー売買比率は、8月28日に0.93まで急落した後、1.06まで回復した。

Dual-axis line chart of Bitcoin: Price USD (white) and Coinbase Premium Index (green/red) over time (March–August); left axis shows percentages, right axis shows USD values.
<BTCのテイカー売買比率は8月29日に1.06へ反発|CryptoQuant>

テイカー売買比率は、無期限先物市場のテイカー買い出来高をテイカー売り出来高で割った指標だ。1を上回れば、成行の買い手が売り手より多くの流動性を消費していることを示す。1を下回れば、売り圧力のほうが強いことを意味する。

したがって、0.93から1.06への上昇は、大規模な清算の後、デリバティブ市場でテイカー買いが再び優勢になったことを示している。

直近ではロングポジションを中心とする清算が相次いだが、比率が1を回復したことから、一部のトレーダーはすでに買いへ戻り始めていると考えられる。

BTC価格分析:9月の利上げ観測が強まれば、7万2000ドルが重要なラインに

BTCのテクニカル構造は依然として強気だが、直近の調整によってモメンタムは重要な転換点に近づいている。日足チャートでは、前週のブレイクアウトで約8万1500ドルに達した後、BTCは7万8050ドル前後で取引されている。

20日間のドンチャン・チャネルでは現在、上限が8万1479.50ドル、中央値が7万1973.86ドル、下限が6万2468.21ドルとなっている。

ドンチャン・チャネルは、一定期間における最高値と最安値を追跡する指標だ。その中央値は、現在のトレンドを把握するうえで有用な基準となる。

BTCは依然として中央値の7万1974ドルを明確に上回っている。8万1500ドルの高値から反落したものの、強気の構造は維持されている。

ただし、モメンタムは鈍化し始めた。14日間RSIは現在69.77で、最初のブレイクアウト時につけた大幅に高い水準から低下している。

Crypto chart titled 'Bitcoin: Taker Buy Sell Ratio' showing price (white line) and taker buy/sell ratio (green line) over dates, with a vertical date axis and right-side price scale.
<BTCのドンチャン・チャネルとRSI|TradingView>

RSIは、価格変動の速さと大きさを測る指標だ。一般に70を上回ると買われ過ぎと判断されるが、現在の数値はその水準をわずかに下回っている。

RSIの移動平均線は75.86で、現在のRSIを上回っている。これは、直近の極端に強い状態からモメンタムが弱まったことを示す。

BTCは依然として買われ過ぎ圏に近いものの、価格が7万8000ドルを上回る一方でRSIは低下している。つまり、強気の構造が決定的に崩れることなく、市場の過熱感が和らいでいる状態だ。

目先のレジスタンスは、ドンチャン・チャネル上限の8万1480ドル付近にある。

日足終値がこの水準を上回れば、買い手がジャクソンホール講演によるショックを吸収したことが確認され、次の心理的な上値目標として8万3000~8万5000ドルが視野に入る可能性がある。

しかし、9月の利上げシナリオは依然として大きな障害だ。

PolymarketとCMEが示す利上げ確率が今後も上昇すれば、トレーダーがリスク資産へのエクスポージャーを縮小するため、BTCは再びデレバレッジの波に直面する可能性がある。

その場合、最初に試される重要なテクニカル水準は7万7000~7万8000ドルの領域となる。その次の節目は、ドンチャン・チャネルの中央値である約7万1974ドルだ。

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