分析サマリー
● CryptoQuantは最新レポートで、長期保有者(LTH)供給量が過去最高の1,580万BTCに達した一方、市場では新規買い手不足が進行していると指摘している。
● クジラ(1,000〜10,000BTC保有)とドルフィン(100〜1,000BTC保有)の蓄積ペースはともに大幅に鈍化しており、2024〜2025年の上昇相場を支えた需要エンジンに明確な減速が見られる。
● 現在の市場は「売り圧力が強い相場」ではなく、「買い手不足の相場」であり、本格的な上昇再開にはETF資金流入やオンチェーン需要の回復が重要な鍵となる。
ビットコイン市場では長年、「長期保有者が増える=強気」という見方が一般的だった。
実際、長期保有者(Long-Term Holder:LTH)は市場の中でも最も売却しにくい投資家層であり、彼らの保有量が増加することは将来的な供給圧力の低下につながると考えられてきた。
しかしCryptoQuantが発表した最新の週間レポートは、その常識に対して興味深い視点を提示している。
現在、ビットコインの長期保有者供給量(155日以上動いていないビットコインの総量)は約1,580万BTCとなり、過去最高を更新している。添付の「ビットコイン:保有期間別供給量」のチャートを見ると、ピンク色で示した長期保有者供給量(LTH供給量)は右肩上がりで増加を続けており、過去最高水準に達していることが分かる。
一方で、青色で示した短期保有者供給量(STH供給量)は2025年末の約640万BTCから現在は約420万BTCまで減少している。一般的には、このようなLTH供給量の増加は「投資家が売らずに保有している強気シグナル」と解釈されることが多い。

一見すると非常に強気なデータに見える。
ところがCryptoQuantは、この現象を必ずしもポジティブには捉えていない。
その理由はシンプルだ。
LTH供給量が増えるということは、裏を返せば市場でビットコインが十分に取引されていないことを意味する場合があるからだ。新規の買い手が次々と市場へ参入している局面では、長期保有者が利益確定のために売却したコインが新規投資家へと移転していく。しかし現在は、その流れが弱い。長期保有者が保有し続けているというよりも、「買い手不足によって市場全体の回転率が低下している」と解釈できる可能性がある。
実際にオンチェーンデータを詳しく見ると、今回のサイクルを支えてきた主要プレイヤーの行動に変化が見られる。
添付の「ビットコイン:クジラ保有量の前年比変化(保有量1,000~10,000BTCのアドレス)」のチャートによると、2024年から2025年前半にかけてはクジラによる蓄積が続いていたものの、2025年後半以降は増加ペースが急速に鈍化し、2026年には再びマイナス圏へ沈み始めていることが分かる。

まずクジラと呼ばれる1,000〜10,000BTC保有アドレスの残高増加率はマイナス圏にあり、前年比では2022年の弱気相場に近い水準まで低下している。
重要なのは、クジラが大量のBTCを保有しているかどうかではない。「クジラが以前ほど買わなくなっている」という点である。
さらに2026年2月以降、クジラの月次保有増加率はほぼゼロで推移している。つまり大口投資家は積極的な買い増しを止めているのである。
また、ETFや企業のビットコイン保有を多く含むドルフィン層(100〜1,000BTC保有)も同様だ。2025年10月には年間約97万BTCという非常に強い増加ペースを示していたが、その後は大きく減速し、現在は長期トレンドを下回る状態となっている。
この点は非常に重要である。
2024年以降のビットコイン市場を支えてきた最大のテーマは、米国現物BTC ETFと企業によるビットコイン購入だった。つまりドルフィン層の増加鈍化は、制度資金による需要拡大が一旦落ち着いていることを示唆している。
さらに注目したいのが短期保有者(STH)の減少だ。
短期保有者供給量は2025年12月の約640万BTCから現在は約420万BTCまで減少している。約210万BTCが短期保有者カテゴリーから消えた計算になる。
一般的にはこれも強気材料と解釈されがちだが、CryptoQuantは慎重な見方をしている。
その理由は、減少分のうち約90万BTCがCoinbase保有コインの経年変化によるものだからである。
保有期間が155日を超えると統計上LTHへ分類されるため、実際には新規需要が発生していなくてもLTH供給量だけが増加することになる。
つまり現在のLTH増加は、必ずしも市場参加者の増加を意味していない。
むしろ新規投資家の流入不足を示している可能性がある。
エックスウィンではここ数週間、
・現物BTC ETFフローの鈍化
・Coinbase Premiumのマイナス圏推移
・アクティブアドレスの減少
・オンチェーン需要の低下
・クジラの買い控え
を継続的に指摘してきた。
今回のCryptoQuantレポートは、それらのシグナルを一つのストーリーとして整理した内容と言えるだろう。
現在の市場で起きているのは、「売り手が増えている」という問題ではない。むしろ、「新しい買い手が不足している」という問題である。
だからこそ価格は大きく崩れていない一方で、力強く上昇することもできない。
今後の相場を判断する上で重要なのは、
・現物BTC ETFへの資金流入再開
・Coinbase Premiumのプラス転換
・クジラ残高の増加
・ドルフィン層の蓄積回復
・アクティブアドレスの反転
である。
これらが確認できるまでは、現在のビットコイン市場は強気相場への入り口というよりも、「需要回復を待つ検証フェーズ」と捉える方が適切だろう。
長期保有者が過去最高を更新しているにもかかわらず価格が伸び悩んでいる背景には、市場の表面からは見えにくい「買い手不足」という構造的な課題が存在しているのかもしれない。
■ショート動画
(最新警告)長期保有者は過去最高なのに、なぜBTCは上がらないのか?【エックスウィン ビットコインリサーチ】
https://youtube.com/shorts/J9IH3Y1D-_A


