「チームが多くて分かりにくい」に答える──川崎政務官に聞く、自民党・新PT体制の陣形

現在、自民党内ではAIやWeb3に関連するプロジェクトチーム(PT)が新設・再編され、新たな推進体制が敷かれている一方で、業界からは「複雑で分かりにくい」との声も聞かれる。

果たして、国はどのような体制で新たな金融のロードマップを実装しようとしているのか。

NADA NEWSは川崎ひでとデジタル大臣政務官にインタビューを実施し、党内PTの役割分担から、日本の「AI×Web3」の勝ち筋、そして目前に迫る暗号資産の金商法移行の行方まで、その全貌に迫った。

[川崎政務官が自ら作成し、インタビュー時に書き込みながら説明した資料。3組織の役割分担に加え、「デジタルニッポン2026」から「骨太の方針」へとつながる政策決定のフローが示されている]

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──自民党内のWeb3推進体制について伺いたい。現在、関連チームが再編されているが、改めて現状の体制を整理していただきたい。

川崎氏: 前提として、そもそも何をもって「Web3」と言うのかが難しい状態だ。ブロックチェーンを指す人もいれば、中央集権のWeb2.0に対する分散型という世界観を指す人もいる。

そういう中でAIも台頭してきたため、我々としてはAIというところも主軸に置かなければいけない。AIとWeb3は親和性も高いが、一方で党の限られたリソースの問題もある。

これまでこの分野を突っ走ってきたのは明らかに平(将明)議員、私、塩崎(彰久)議員、神田(潤一)議員らなのだ。ただ、私が政府側へ入ってしまっていることもあり、党全体として少しスリム化しようという話が出た。そこで「AI×Web3」という形で委員会ができた流れだ。

【補足】「web3PT」とは
2022年発足の「web3PT(座長:平議員)」は、ルール整備や税制改正の議論を牽引したが、役割を終えすでに解消した。現在はAIとの融合や実装フェーズへの移行に伴い、「AI×Web3」という新体制に移行している。

──新設された「次世代AI・オンチェーン金融構想PT」と「決済・イノベーション推進PT」の2つの組織の棲み分けはどうなっているのか。

川崎氏: 前提として、今はAIエージェントが出てきて、このAIエージェントとステーブルコインを使った産業も生まれつつある。一方で、AIやWeb3も非常に幅広い。人間の考えられる時間には限りがあるので、その中で課題を切り出して作ったのがこの2つだ。

まず、木原(誠二)議員が座長を務める「構想PT」は、大きな中長期的ビジョンを描くところだ。日本が新たなテクノロジーを作っていった時に、金融の世界はどうなっていくのかという想像力を常に膨らませ、すぐに対応できるような方針やビジョンを作る。

また、生成AIの先にあるフィジカルAIや、サイバーセキュリティに関する政策やブロックチェーンを用いた金融以外の政策、例えばDAO(分散型自律組織)やDID(分散型ID)の活用事例や課題については、AI・Web3小委員会(平座長、塩崎事務局長)が担う。

一方で「推進PT」は、実装を担うところだ。キャッシュレスなども典型だが、今あるテクノロジーを社会にちゃんと実装するためには、素早い法改正などが必要となってくる。ここがまさに実装を担うという切り分けだ。

──「Web3は死んだ」という声もあるが、決してそういうわけではないということか。

川崎氏: 全然死んでいない。これまでの内閣では「Web3を活用して地方創生を」と発信してきたが、ブロックチェーンはあくまで1つのツールにすぎない。我々はWeb3という言葉にこだわっているわけではなく、社会課題を解決したい時にその手法がブロックチェーンに適しているなら、それを惜しみなく応援するというスタンスだ。

急速に変わっていく世の中で「NFTで地方創生を」といった言葉に縛られてやっていくのは、少し遅くないか、となってしまう。一時バズワード化していた時期もあったし、それを払拭し、広く見るために「イノベーション」という言葉に全て吸収させた。

AIだって、ブロックチェーンだってイノベーションであり、様々な内容が日本の勝ち筋になってくる。そういう意味合いが強い。

【補足】 4月のイベントにおいて、川崎氏は「政府の方針からWeb3が消え、力を入れなくなったという誤解を解きたい」と発言している。特定の単語に固執せず、AIなど様々なテクノロジーを活用して成長を目指す方針であり、政策の軸足が後退したわけではないと強調した。

──役割分担はよく分かった。各プロジェクトが目指す最終的なゴールはどういったものか。

川崎氏: AIのほう(AI・Web3小委員会)は、海外のAI勢の台頭やデータのあり方、データ主権、あるいはAIエージェントの登場による雇用のあり方など、様々なAIに関する課題について、日本がどう生きるのかというビジョンを描く。

一方の「構想PT」は、ステーブルコインのようなオンチェーン上でやる金融の世界がこれからもっと広がっていくために、どういう世界観を持っていけばいいのかを考える。

極論を言えば、「金融庁や財務省は今のままでいいのか」といった政府の対応のあり方など、中長期的に成長戦略として見込んでいくためのビジョンを描く。

「新しい資本主義のグランドデザイン」や「骨太の方針」に盛り込んでいくのが大きな役割になる。

【補足】骨太の方針とは
正式名称は「経済財政運営と改革の基本方針」。政府が毎年の経済・財政政策の方向性を示す基本方針であり、ここに政策が盛り込まれることが、各省庁の翌年度の予算編成や法改正の前提となる。

──構想PTが描くビジョンは、ことし6月策定の政府の「骨太の方針」に反映されるのか。

川崎氏: 入ってくる。ほぼ確定だ。現在、構想PTの上部組織にあたるデジタル社会推進本部で「デジタルニッポン2026」という提言書を作っている。これが5月19日に党の政調会議にかけられ、自民党の正式な提言として確立する。この中のエッセンスが骨太の方針に入ってくる形だ。そして、詳しくは「デジタル社会の実現に向けた重点計画」に書かれることになる。

もともと「デジタルニッポン」は、平井(卓也)議員がデジタル大臣の頃から党で作っているものだ。デジタル庁ができたばかりで何をやっていいか分からない時に、羅針盤が必要だということで作られ、毎年党から提言として上がってくる。世の中がどう動くから政府はこう準備しておけ、こういう法律を作っておけ、という提言が凝縮された非常に重いものだ。

かつてはデジタル庁や経産省くらいにしか届いていなかったが、今はAIやサイバーなど問題が複雑化し多岐にわたるため、色々なところに届くようになっている。

──提言書には「ステーブルコインの社会実装を進めるべき」といった具体的な文言が盛り込まれるのか。

川崎氏: そういうことだ。

【補足】 5月19日の自民党政調審議会において、構想PTがまとめた提言が了承・公表された。同提言では、ステーブルコインやトークン化預金などのオンチェーン金融を次世代の国家金融インフラと位置づけ、金融庁を中心とした5年間のロードマップ策定などを求めている。
関連記事:【独自】高市政権「骨太の方針」にステーブルコイン、トークン化預金の利用拡大──自民党「次世代AI・オンチェーン金融構想PT」が提言

──実装フェーズに移る中で、日本の「AI×Web3」分野での勝ち筋はどこにあると見ているか。

川崎氏: まずAIの文脈でいくと、「信頼できるAI」を作ることがとても重要だ。

今はとにかく海外勢がすごく強い状態だが、我々のデータのあり方も含めて、日本語や日本文化をちゃんと理解している軽量なAIは今後重要性が増してくる。

巨大なパラメータのクラウドAIだけでなく、今クラウドが主流だが、逆にそれぞれのPC等で独立して動くオンプレミスの超軽量AIは、データが安全に保たれるため、安全保障の考え方からも重要視されている。

加えて、ブロックチェーンはその透明性がとても有用だ。例えば薬などの原材料がどこから来たのかというトレーサビリティだ。ちゃんとしたルートで届いたことが分かれば安心感が増すだろう。こういう使い道は期待できる。

そして、ステーブルコインとAIの組み合わせだ。

今まで人の手を介して送金していたものを、AIエージェントにある程度任せることでスムーズに行う。ブロックチェーンを使っているから「いつ、どういう金額がどこに行ったか」が分かり、安全な経済市場ができる。

日本がそういう安心したマーケットをちゃんと作っているというところが、世界からすごく注目されるポイントだと思う。

「広島AIプロセス」という言葉が誕生し、生成AIのグローバルルールを作っていこうと発信したのは岸田政権だったが、実はもっと前から動いていた。

2016年、ChatGPTなども出ていない時期に、当時の高市(早苗)総務大臣が「そろそろAIに対して準備した方がいいのではないか」と提言している。

そこでG7の情報通信大臣会合で提言し、OECD(経済協力開発機構)にタスクアウトした。OECDで研究者たちが基本フレームについて考え始め、まさにそれが2023年の広島サミットの時に提示され、現在のルールメイキングと結びついたのだ。これはまさに日本発の動きだ。

──先生のVoicy(音声配信)でも暗号資産詐欺について触れられていたが、こうした被害を防ぐため、業界に求める自浄作用はどういったものか。

川崎氏: これは株などでも同じだが、そもそも「儲け話などない」というのが共通解だ。なぜ詐欺に遭ってしまうかというと、暗号資産というものがよく分かっていないから騙されてしまうわけだ。(高市氏の名前を無断使用した)サナエトークンのような例もあったが、発行している側ですらよく分かっていないというケースもあった。だからこそ、まずはリテラシーを高めていかなければならない。

暗号資産のみならずステーブルコインもそうだが、電子決済の手段だ。

JPYCの岡部さんも毎日発信されているが、スタートアップなど新たに取り組まれる方々には、利便性と同時に安心して使えるアプローチをしていただきたい。

メディアもちゃんと発信し、「これは安全に使えるものなのだ」という環境整備が必要だし、そこに政府もコミットするべきだ。

【補足】 川崎氏は自身の音声配信チャンネルで、日々の政治活動や政策について幅広く発信している。> 川崎ひでとのアップデート・ログ

──暗号資産を金商法の対象とする法案が提出されたが、今国会で可決・成立するという認識で間違いないか。

川崎氏: 今回の国会は7月17日までなので、それまでには必ず行く。

──金商法移行に伴う分離課税の実現について、大方の見立てでは2028年からとされているが、この施行が前倒しされる可能性はあるか。

川崎氏: そこは金融庁も頑張らないといけない部分だ。法律はバクッとしているので、詳細を記した「省令」の作成のためにパブリックコメントをかけたり、JVCEA(日本暗号資産等取引業協会)がちゃんとした運用ができるかなど、細かいルールメイクもやらなければならない。いろんな人たちの協力を得てやっていく話なので、みんなの協力体制が良ければ良いほど前倒しにはできると思う。

ただ、税制と合わせて考えた時の影響もある。これまで税制は大体年度で変わってきた。年度途中で税制を変えるとなると、世の中の仕組みとして他に波及する可能性もなきにしもあらずだ。そこはしっかり影響調査をやっていかなければならない。多くの方からは急げ急げと言われているが、やはりそこをちゃんとしないといけない、結構大きな法律なのだ。

これまでの暗号資産は物を買うための決済手段だったが、金商法に入るということは、法人であれば資金調達に、我々であれば資産形成に使える存在になるわけだ。

その時に、どこの馬の骨とも分からないトークンを買うのではなく、JVCEAが審査をして、「ここはちゃんとした会社だ、セキュリティも投資家保護もちゃんとしている」という安心した姿を協会や政府が見てあげることで、安心して市場が育っていく。これをやっていかなければならない。

【補足】暗号資産を申告分離課税(税率20%)の対象とする法案はすでに成立している。金商法移行に伴う税制変更の具体的な仕組みや損失の繰越控除などについては、専門税理士の泉氏によるNADA NEWSの解説記事をご参照いただきたい。

|インタビュー・文:栃山直樹
|写真:NADA NEWS編集部撮影

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