アメリカ商務省は5月21日、CHIPS・科学法に基づき、量子コンピューティング関連の9社に対し総額20億1300万ドル(約3220億8000万円、1ドル=160円換算)の助成を行うと発表した。
暗号資産(仮想通貨)や金融システムを支える技術を将来的に脅かしかねない量子コンピューターへの備えとして、アメリカの技術主導権確保を狙う。
最大の投資先はIBMで、10億ドル(約1600億円)を拠出し、ニューヨーク州オールバニーに新設する量子ウェハー製造拠点「Anderon」で、300mm超伝導量子ウェハーの量産を目指す。
GlobalFoundriesには3億7500万ドル(約600億円)を投じ、超伝導・トラップイオン・光・トポロジカル・シリコンスピンといった複数方式に対応するファウンドリーを国内に整備する。このほか、Atom Computing、D-Wave、Infleqtion、PsiQuantum、Quantinuum、Rigettiにそれぞれ1億ドル(約160億円)、シリコン量子コンピューター開発のDiraqに最大3800万ドル(約60億8000万円)が割り当てられる見通しだ。
アメリカ政府は出資の見返りとして、各社の少数・非支配株式を取得する。その背景には「Qデー」への警戒がある。量子セキュリティ企業のProject Elevenは、ビットコイン(Bitcoin)やイーサリアム(Ethereum)が用いる楕円曲線暗号を破る量子コンピューターが早ければ2030年に登場する可能性を指摘している。
Google(グーグル)の研究者も、解読に必要な量子ビット数が従来想定より少なくて済むとの見解を示している。
Citi(シティ)のアナリストは今週、ガバナンス構造上アップグレードが遅れがちなビットコインがイーサリアム以上に長期的なリスクを抱えていると分析し、公開鍵が露出した状態のウォレットに最大約700万BTC(総供給量の約3分の1)が存在すると試算した。耐量子化を巡る攻防は、暗号資産業界全体の喫緊の課題となっている。
|文・編集:井上俊彦
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