・イーロン・マスク氏の証言によりOpenAIへの監視が強まり、同社の評価額をめぐる不透明感が高まっている。
・企業需要の拡大とOpenAIをめぐる騒動の波及を背景に、Anthropic(アンソロピック)の存在感が増している。
・予測市場では、2026年末までにAnthropicの企業評価額がビットコイン(BTC)の時価総額を上回る確率が約44%と示されている。
1800億ドル規模のOpenAI訴訟が始動、マスク氏が証言
先週、Forbesの富豪ランキングで世界首位とされるイーロン・マスク氏は3日間にわたって証言台に立ち、世界最大のAI研究機関であるOpenAIの設立経緯をめぐる注目の法廷闘争が幕を開けた。マスク氏は、Microsoft(マイクロソフト)による130億ドルの投資やその他の大規模な資金提携を背景に、OpenAIが営利化へとかじを切ったことは、同社が当初掲げていた非営利の設立理念に反すると主張している。
OpenAIの直近の開示によると、同社の評価額は3月31日時点で約8520億ドルに達しており、世界で最も価値の高い未上場企業の一つに位置づけられる。しかし、今回の訴訟により、コーポレートガバナンス、投資家保護、長期的な収益化戦略をめぐる大きな懸念が浮上している。
Wall Street Journalによると、Tesla(テスラ)のCEOでもあるマスク氏は、OpenAIの営利化転換の一部巻き戻しを含め、最大1800億ドルの損害賠償を求めていると報じられている。これが認められれば、同社の企業構造を大きく変える可能性がある。
OpenAIをめぐる騒動でAnthropicが恩恵を受ける位置に
テスラ株は過去5日間で約4%上昇しており、市場がマスク氏の訴訟上の主張に好意的に反応している可能性を示す初期シグナルといえる。OpenAIにとって不利な結果となれば、同社が想定する新規株式公開(IPO)への道筋が遅れ、積極的な拡大を制限するガバナンス上の制約が生じる可能性がある。

「OpenAIとアルトマン氏に大きな打撃が及んだとしても、それは同社や同氏のCEOとしての立場に深刻な影響を及ぼすものではなく、擦り傷や打撲程度にとどまると引き続き見ている」
ーWedbushアナリスト、ダン・アイブス氏
Wedbushのアナリストであるダン・アイブス氏は、この訴訟がOpenAIに直接的かつ大きな経済的影響を及ぼす可能性を低く見ている。ただし、訴訟が長期化すれば、意思決定の遅れや投資家の信頼低下につながるリスクがある。そうなれば、より明確なガバナンス構造を持ち、ネガティブな見出しを招きにくい競合企業にとって追い風となる。
OpenAIへの監視が強まるなか、安全性を重視するエンタープライズ向けAI企業としてのAnthropicの位置づけは、資金流入と採用拡大を引き寄せている。今年初めには、ガバナンスへの懸念や軍事関連契約をめぐる不安を背景に、一部の開発者や企業ユーザーがOpenAI以外の選択肢に目を向けるようになり、Anthropicは一気に脚光を浴びた。

AnthropicのClaude関連で人気を集めるサードパーティーエージェントのOpenClawも、暗号資産とAIエージェント経済の領域で採用を伸ばしている。
Anthropicは、この機会を取り込む態勢を整えている。同社は複数の大型資金調達を実施しており、直近の評価額は8500億〜9000億ドル規模に向かっている。企業での採用指標も堅調で、大規模言語モデルへの企業支出シェアではAnthropicが首位に立っているとの推計もある。
売上成長も急加速しており、年換算売上高は300億ドルを超えたと報じられている。この勢いは、自動化、コーディング、企業ワークフロー向けに最適化されたAIインフラツールへの需要が高まっていることを反映している。
予測市場の初期シグナル、Anthropic評価額が2026年にBTC時価総額を上回る可能性
予測市場では、Anthropicが2026年末までに企業評価額がビットコインの時価総額に並び、場合によっては上回るシナリオが織り込まれ始めている。
Polymarketでは、9000億ドル評価での資金調達を協議しているAnthropicが、2026年12月31日までにビットコインの1兆6000億ドルの時価総額を上回る確率が約44%まで上昇した。注目すべきは、4月下旬にイーロン・マスク氏がOpenAIに対する証言を始めた時点では、この確率が約20%だったことである。

同契約には9万ドル超の取引高が集まっており、まだ初期段階ながら、投機資金が一定の関心を示していることがうかがえる。
BTCは依然として世界的なインフレに対するヘッジ資産とみなされている。一方で、AnthropicのようなAI企業は、今後数年でさらなる資金流入を取り込む可能性がある高成長インフラ投資対象として見られつつある。
特にMarathon Digital、Core Scientific、IREN、Hut 8、TeraWulf、Riot Platformsなどの主要ビットコインマイナーは、過去1年でAIインフラへの多角化を強め、マイニング設備をAIデータセンターへ転用する動きを進めている。
Anthropicが評価額でBTCを上回るかどうかは、イーロン・マスク氏によるOpenAI訴訟の法的な行方に加え、テック企業の評価額と暗号資産の流動性サイクルの双方に影響を及ぼすマクロ環境にも左右される。



