エックスウィン アメリカマーケットリサーチアナリストのデリア・ロホです。サンフランシスコから、現在の米国暗号資産市場の最重要テーマであるCLARITY法の進行状況をお伝えします。
現在、マーケットの焦点はすでに「成立するかどうか」ではなく、「いつ、どの形で成立するのか」に移っています。特に重要なのは、今後数週間で予定されている2つのプロセスです。1つ目がマークアップです。これは上院委員会で行われる審議プロセスで、法案の内容を議論・修正するための実質的な最終調整の場となります。ここでの修正が、最終的な法案の方向性を決定づけます。
2つ目が上院本会議(Senate Floor)です。この段階では上院全体で法案が議論され、可決に向けた最終判断が下されます。つまり、マークアップを通過できるかどうかが、成立に向けた最大の分岐点となります。
現在のスケジュール感としては、5月にマークアップ、6月から7月に上院本会議、そして順調に進めば夏に大統領署名という流れが想定されています。最短シナリオでは、数ヶ月以内に制度が確定する可能性があります。一方で、政治的な対立が深まれば、このスケジュールは容易に後ろ倒しとなる点には注意が必要です。
市場の期待は依然として強く、予測市場では可決確率が60%を超える水準まで上昇しています。これは、暗号資産市場においてすでに「成立を前提とした織り込み」が始まりつつあることを意味します。
ただし、最大の論点は依然としてステーブルコインの利回り規制です。米国の銀行セクターは、保有するだけで利回りが得られるモデルを強く問題視しています。これは預金ビジネスと直接競合するためであり、規制強化を求める圧力は非常に強い状況です。
一方で、完全な規制強化には至らない見通しです。取引やステーキングなど、アクティビティに基づく報酬については維持される方向で調整が進んでいます。これは、伝統金融と暗号資産市場のバランスを取るための現実的な落としどころといえます。
今回の議論は単なる法案審議ではありません。銀行対暗号資産業界、民主党対共和党、規制対イノベーションという複数の対立構造が同時に動いています。特に上院銀行委員会は銀行寄りの影響が強く、市場が想定するよりも規制が厳格化するリスクは常に意識する必要があります。
Coinbaseの政策責任者も、今回の結果を「完全ではないが前進」と評価しています。銀行側の影響で規制は強化されたものの、利用ベースの報酬など重要なポイントは守られました。つまり、暗号資産業界としては現実的な妥協の中で一定の成果を得た形です。
この法案の本質は、規制緩和ではなく「ルールの確定」にあります。市場は不確実性を最も嫌うため、ルールが明確になった瞬間に資金の動きは大きく変わります。
ビットコイン市場にとって、この変化は構造的な転換を意味します。これまでの価格形成は流動性や先物ポジションに強く依存していましたが、今後は制度と実需に支えられたフェーズへと移行する可能性があります。
サンフランシスコの現地感覚としても、この法案は単なる政策ではなく、市場構造そのものを変えるトリガーとして認識されています。短期的には政治リスクを伴いながらも、中長期では資本流入の起点となる──まさに今、ビットコイン市場はその転換点の入口に立っています。



