「ソニーの人たちは、まだブロックチェーン技術に馴染みがない。だからこそ、キラーユースケースを示す必要がある」
4月6日、ソニーグループ(以下、ソニー)が手がけるイーサリアムレイヤー2「Soneium(ソニューム)」関連のイベントが都内で開催され、同社でオンチェーン領域を統括する波多野和人氏は、そう語った。講演は英語で行われた。
一見するとネガティブにも聞こえる発言だが、実際には、ソニーのブロックチェーン事業が“実験段階”から“事業化段階”へ移りつつあることを反映している。

波多野氏は、この領域を担当していた「先端インフラ事業探索部門」が、「オンチェーン事業戦略部門」に名称変更したことも明らかにした。ブロックチェーンを先端技術の一部として扱う段階から、事業戦略の中核へ位置付け直したとも受け取れる。
Soneiumを軸にエンタメ・エコシステムを構築

続けて波多野氏は、ソニーの中長期戦略とオンチェーン事業について説明した。
「ソニーはエンターテインメント企業として、クリエイター、コミュニティ、そしてIP(知的財産)を支援している。この3つが重要な要素であり、我々はブロックチェーンを活用して、それらのコミュニティを支援しようとしている」
この取り組みを支える基盤となるのが、イーサリアムレイヤー2の「Soneium」だ。
さらに、Soneium上で展開される各種のDapp(分散型アプリ)とアプリ開発者向けインキュベーションプログラム「SPARK」、そして法定通貨と暗号資産をつなぐゲートウェイとしての暗号資産取引所「S.BLOX」が、事業全体を支える重要な構成要素だと説明した。
そのうえで、重要なのは「チェーン上でキラーユースケースを示すことだ」と強調した。
2000件超の応募、23件に投資──外部資金も活用へ
波多野氏によると、Dapp関連では、これまでに2000件以上の応募があり、その中から23プロジェクトを選定して投資してきたという。対象分野はゲーム、コンシューマー領域、DeFiなど多岐にわたる。
さらに、GP/LP型ファンドの設立準備も進めていると明かした。外部資金を取り込みながら、Soneium上のアプリやエンターテインメント領域への投資を加速させる方針だ。
単なるチェーン運営にとどまらず、投資機能まで備えたエコシステム形成を目指していることになる。
IPのオンチェーン化
今回の発言で最も注目されるのは、IP領域への踏み込みだ。
「今年は、ブロックチェーンを使ってIP領域をアンロックすることも模索している」
波多野氏はそう述べ、「鍵となるのは、エンターテインメント業界におけるIPを、どのようにオンチェーン化するかだ」と続けた。
ソニーにとってIPは中核資産だ。音楽、アニメ、ゲーム、映画、キャラクター、スポーツ関連権利など、多様な資産を抱えている。そのため現在は、各分野ごとに法的枠組みや規制面を整理しながら、Soneium上でオンチェーンIPインフラを構築するための制度設計を進めているという。
NFTやトークンを活用したIP戦略は以前から語られてきた。だが、大手企業が制度面まで含めて本格的に検討を進める例はまだ多くない。
波多野氏は、今後の技術環境についても言及した。具体的には、AGI(汎用人工知能)、フィジカルAI、量子コンピューティングを挙げ、ソニーとしても、こうした新技術の変化を踏まえながら対応していく必要があるとの認識を示した。
“世界のソニー”がまたも新領域を切り拓くか
日本企業のブロックチェーン活用は、これまでPoC(概念実証)や限定的な実験にとどまる例も少なくなかった。だが、今回のソニーの動きは異なる。
・組織改編
・レイヤー2運営
・投資ファンド準備
・暗号資産取引所運営
・IP制度設計
ここまで複数の要素が揃った事例は、グローバルでも多くはない。“世界のソニー”は、エレクトロニクスやゲームなどに続き、オンチェーン領域でも新たな市場を切り拓くのだろうか。

|文・撮影:増田隆幸
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