5月のビットコイン(BTC)円は、月初にかけて地政学リスクの後退期待を背景に買い戻しが先行し、3月に付けた戻り高値1212万8924円(第1図内青点線)を上抜ける場面があった。ただ、その後は長期トレンドの分岐点として意識される200日移動平均線近辺で上値を抑えられ、足元では底堅さを維持しつつも上値の重い展開となっている。
月初は、米国とイランの間で停戦合意が近いとの報道や、イラン側から新たな提案が示されたことなどが好感され、リスク資産全般に買い戻しが入った。ビットコイン円もこれに連れて上昇し、ドル建てでは8万ドル台を回復した。
しかし、中旬に入ると相場の流れは変化した。米国の4月消費者物価指数(CPI)と卸売物価指数(PPI)が市場予想を上回り、インフレ圧力の根強さが改めて意識されたためだ。背景には、ホルムズ海峡封鎖によるエネルギー供給不安を受けた原油価格の高騰がある。物流や発電コストの上昇を通じてインフレ再加速への警戒感が強まり、米長期金利は上昇。FF金利先物市場では年内利下げ観測がほぼ消滅し、一部では年末にかけて追加利上げの可能性すら織り込み始めている。
こうした金利環境の変化は、金利を生まない資産であるビットコインにとって逆風となった。加えて、テクニカル面でも200日移動平均線が強いレジスタンスとして機能し、短期筋の利益確定売りを誘発したことで、中旬以降のBTC円は上値を切り下げる展開となった。
尤も、下値では押し目買い意欲も根強く、心理的節目となる1200万円周辺では買い戻しが入っており、短期的な調整も一巡の様相を呈している。
【第1図:ビットコイン対円と200日移動平均線(日足)】

今後の焦点は、やはり中東情勢と米金融政策見通しの変化、そして200日移動平均線を巡る攻防にある。
5月22日時点で、米・イラン和平交渉は1カ月前と比較して実質的な進展に乏しい。ただし、トランプ米大統領は交渉が最終段階にあると発言しているほか、双方の高官からも協議が前進していることを示唆する発言が出ている。市場では、水面下では一定の調整が進んでおり、近いうちに何らかの進展が示されるとの期待感も燻っている。
仮にホルムズ海峡の正常化に向けた動きが具体化すれば、原油価格の高騰は巻き戻される可能性が高い。そうなれば、足元で高まっているインフレ懸念も後退し、FRBによる追加引き締め観測も和らぐ公算が大きい。米長期金利の低下とドル高圧力の一服は、ビットコインにとって再び追い風となろう。
テクニカル面では、200日移動平均線を明確に上抜けできるかが最大の焦点となる。2018年や2022年の弱気相場では、200日線が戻り高値を抑える象徴的な水準として機能していた経緯があるだけに、市場参加者の意識も集中しやすい。
一方で、裏を返せば、この水準を上抜けた際には売り方の買い戻しを巻き込んだショートスクイーズが発生する可能性もある。特に、ここ数週間は上値の重さを意識した戻り売りポジションも積み上がっているとみられ、200日線突破をきっかけに相場が一段高へ走る展開には留意したい。
その場合、ドル建てで9万ドル(≒1430万円)回復が視野に入る。
尤も、和平交渉が再び停滞し、原油価格上昇とインフレ懸念が長期化する場合には、FRBの金融引き締め再開が改めて重石となる可能性もある。ビットコイン円は底堅さを維持しているとは言え、現時点では強気一辺倒にはなりにくく、目先では200日線を意識した神経質な値動きが続くとみている。
|文:長谷川友哉/bitbankマーケット・アナリスト
|編集:NADA NEWS編集部
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