・レボリュートは、ユーロを裏付け資産とするステーブルコイン「EURR」の段階的な提供を、デンマーク、ポーランド、ポルトガルの条件を満たす一部顧客向けに開始した。
・EURRはパブリックブロックチェーン上で稼働し、ユーザーはレボリュートのアプリを通じてユーロと暗号資産(仮想通貨)をオンチェーンで直接交換できる。
・今回の参入により、レボリュートはステーブルコインをデジタル決済インフラとして活用しようとする銀行や大手金融機関の一角に加わる。
レボリュート、イーサリアム基盤のユーロ建てトークンでステーブルコイン競争に参入
8月26日付のBloomberg(ブルームバーグ)の報道によると、英国の大手デジタル銀行レボリュートは、ユーロに連動するトークン「EURR」を投入し、ステーブルコイン市場に参入した。
同社はまず、デンマーク、ポーランド、ポルトガルの条件を満たす一部顧客にEURRを提供する。その後、年内に欧州経済領域(EEA)の他の市場にも展開する予定だ。
EURRはレボリュートの既存アプリに組み込まれ、顧客はユーロと暗号資産をオンチェーンで直接交換できるようになる。
「当社は独自のステーブルコインを展開する。ユーロを裏付け資産とするEURRの段階的な試験提供をイーサリアム上で開始し、今月からデンマーク、ポーランド、ポルトガルの条件を満たす一部顧客に提供する」─ レボリュート、8月8日
レボリュートは8月8日に公開した公式ブログで、今回の導入を、より包括的なステーブルコイン戦略の第一段階と位置付けた。ユーロ以外の通貨に連動するステーブルコインも開発している。
EURRを発行するのは、Stripe(ストライプ)傘下のステーブルコイン・インフラ企業Bridge(ブリッジ)だ。トークンを裏付ける準備資産の保有と管理もブリッジが担う。
EURRはユーロに連動する電子マネートークン(EMT)であり、ルクセンブルク金融監督委員会(CSSF)の監督下にある、欧州連合(EU)の暗号資産市場規制(MiCA)に準拠した暗号資産サービスプロバイダー(CASP)兼電子マネー機関(EMI)のBridge Building S.A.が発行する。提供元は、キプロス証券取引委員会(CySEC)の監督下にあるMiCA準拠のCASP、Revolut Digital Assets Europe Ltd(ライセンス番号:CASP001/25)である。
この仕組みにより、レボリュートは自ら発行主体になることなく、ステーブルコインの発行・管理インフラを利用できる。
ブルームバーグによると、レボリュートでステーブルコイン製品を担当するIman Olya(イマン・オリヤ)氏は、法定通貨と暗号資産を交換する際の摩擦を減らすことが同社の狙いだと述べた。
今回の動きの背景には、ステーブルコインの役割が、暗号資産の取引手段から決済・清算インフラへと移りつつあることがある。
レボリュートの取り組みは、従来の銀行預金とも異なる。EURRはユーロに連動するデジタルトークンだが、トークン化預金は既存の銀行預金をブロックチェーン上で表したものだ。
金融機関がパブリックブロックチェーン上の資金移動基盤をめぐって競争するなか、この違いは今後さらに重要になる可能性がある。
ユーロ建ての市場シェアはわずか0.22%──世界市場の成長が鈍化するなかで参入
EURRが市場に浸透するには、米ドル建てトークンが依然として圧倒的な地位を占める市場で、厳しい普及競争を勝ち抜かなければならない。
Tether(テザー)のUSDTとCircle(サークル)のUSDCは、3070億ドル規模の世界のステーブルコイン市場で、合計85%を超えるシェアを占めている。一方、ユーロ建てトークンの存在感は小さい。
CoinMarketCap(コインマーケットキャップ)によると、8月27日時点におけるユーロ建てステーブルコインの時価総額は7億ドル弱で、世界市場全体のわずか0.22%にとどまる。
このため、レボリュートのEURRはサークルのEURCと直接競合することになる。EURCの時価総額は約4億5900万ドルで、記事執筆時点で総額7億ドルに満たないユーロ建てステーブルコイン市場の60%以上を占めている。
さらに、レボリュートはステーブルコイン市場全体の成長に鈍化の兆しが見えるタイミングで参入する。
CEX.IOによると、世界のステーブルコイン供給量は2024年に59%以上増加した。2025年にはさらに49%拡大して1000億ドル以上が上積みされ、市場規模は3000億ドルの大台を突破した。

2026年初めの市場規模は約3150億ドルだった。4月には過去最高の3214億ドルに達したものの、その後は成長が止まり、8月27日までに約3070億ドルへ減少した。
米国でデジタル資産市場明確化法案(CLARITY法案)の審議が停滞していることも、暗号資産市場全体の規制をめぐる不透明感を残し、業界の投資や商品開発に関する意思決定を遅らせる可能性がある。

したがってレボリュートは、EURRが暗号資産取引や取引所への資金供給経路にとどまらず、より幅広い需要を生み出せることを示す必要がある。
ここ数カ月、暗号資産市場の外でも、ステーブルコイン市場の成長を促す可能性のある材料が現れている。
2026年7月、米英両政府は、ステーブルコインの越境利用やトークン化金融市場での活用を進める共同声明を発表した。これにより、暗号資産取引以外の分野でも、ステーブルコインの新たな用途が生まれる可能性がある。
また、7月1日にCASP向けの移行期間がEU全体で終了したMiCAは、ステーブルコイン発行者に正式な規制の枠組みを与え、ユーロ建てデジタルマネーを展開するための条件を明確にしている。
一方、8月26日付のThe Wall Street Journal(ウォール・ストリート・ジャーナル)の報道によると、Bank of America(バンク・オブ・アメリカ)やWells Fargo(ウェルズ・ファーゴ)を含む米国の大手銀行は、ステーブルコイン発行に向けた合弁事業の計画を進めている。
この動きは、米国銀行協会(ABA)が主導する連合が、従来型の銀行から預金や資本が流出するリスクを訴え、今年初めに議会への働きかけを行ったものの、成果を得られなかった後に起きたものだ。この方針転換は、最終的にステーブルコイン市場へ流入する資本を増やす可能性がある。


