・市場予想を下回る米雇用統計を受け、米連邦準備制度理事会(FRB)による追加利上げ観測が後退し、イーサリアム(ETH)は1,942ドルまで上昇して10日ぶりの高値を付けた。
・8月第1週、イーサリアム上のステーブルコイン残高は約7億ドル増加した。価格上昇と並行した増加で、エコシステムに新たな資金が流入していることを示唆している。
・オンチェーン活動が活発化する一方、クジラ(大口投資家)の動きは依然として低調だ。業界内では、イーサリアムのステーキング報酬体系を見直す提案を巡り議論が続いている。
米雇用統計の下振れでイーサリアムが8月高値、追加利上げ観測が後退
イーサリアム(ETH)は8月7日(金)、市場予想を下回る米非農業部門雇用者数(NFP)の発表を好感し、Coinbaseで一時1,942ドルまで上昇した。
米労働統計局(BLS)によると、7月の米非農業部門雇用者数は前月比2万3000人減少した。市場では8万〜9万5000人程度の増加が予想されていたが、結果はこれを大きく下回った。

同レポートでは、失業率が6月の4.2%から4.1%に低下したことも示された。平均時給は37.62ドルと前月から2セント増にとどまり、ほぼ横ばいだった。前年同月比では3.2%増となり、前年比の伸び率は約5年ぶりの低水準まで鈍化した。一方、労働参加率は61.5%から61.4%へ小幅に低下した。
米労働統計局は毎月、米国全体の雇用動向を把握するため非農業部門雇用者数を公表している。これはFRBが労働市場の状況を判断するうえで特に重視する指標の一つだ。
今週前半、EightcapのリスクマネージャーであるAlexander Chieffalo(アレクサンダー・チエッファロ)氏は、金曜日の発表を前に3つの市場シナリオを示していた。
同氏は、非農業部門雇用者数の伸びが5万5000人を下回れば、労働市場の減速を示す材料が一段と強まり、FRBによる追加金融引き締めの可能性が低下すると指摘していた。こうした結果は通常、米ドルの下落要因となる一方、暗号資産(仮想通貨)をはじめとするリスク資産には追い風となる。
実際、市場はほぼそのシナリオ通りに反応した。金曜日の雇用統計発表後、CME FedWatch Toolでは、FRBが政策金利を据え置く確率が55.9%となり、利上げ確率の44.1%を上回った。

NFP発表前には、追加利上げの確率が54.9%と織り込まれていた。地政学的緊張の緩和に伴い、週初めに一時73%まで上昇していた水準からすでに低下していた。
NFP発表後のETH上昇は、伝統的な金融市場の上昇とも歩調を合わせた。Yahoo Financeのデータによると、S&P500は0.5%上昇し、7,750付近で過去最高値を更新した。
またCoinMarketCapによると、金曜日は時価総額上位10銘柄の暗号資産のうち9銘柄が上昇した。主要銘柄で唯一下落したのはHyperliquid(HYPE)で、約3%値下がりした。

Coinglassのデータにも、暗号資産市場の反応が表れている。金曜日、ビットコイン(BTC)とETHで発生した日中の清算額のうち、約75%をショートポジションが占めた。
BTCでは約4000万ドルの清算が発生し、そのうち3000万ドルがショートだった。ETHでも計3160万ドルが清算され、このうち2340万ドルをショートが占めた。市場予想を下回る雇用統計を受けた価格上昇により、ショートの清算が集中したことが分かる。
イーサリアム、8月第1週にステーブルコイン残高が約7億ドル増加──2カ月連続の減少から反転
ETHが1,900ドルを上回った局面では、オンチェーンのファンダメンタルズにも改善が見られた。
BTCが6万5000ドルを下回るなか、ETHは相対的に強い値動きを示し、ETH/BTC比率は金曜日に一時0.02975まで上昇した。これは水曜日に付けた週間高値と同水準だ。
特に注目されるのが、ステーブルコイン残高の増加だ。Artemisのデータによると、イーサリアム上のステーブルコイン残高は2カ月連続で減少した後、今週に入り大きく増加した。

ステーブルコイン残高は6月に約1700億ドルから1620億ドルまで減少し、7月末にはさらに1560億ドルまで落ち込んだ。
しかし8月第1週には約1567億ドルまで回復し、1週間で約7億ドル増加した。
この7億ドル規模のステーブルコイン供給増加が注目されるのは、同じ期間にETH価格も約2%上昇しているためだ。
ステーブルコイン残高と暗号資産価格が同時に上昇する場合、投資家がETHからステーブルコインへ資金を移しているというよりも、新たな資金や流動性がエコシステムに流入している可能性を示すと解釈されることがある。
この見方を裏付けるように、新規スマートコントラクトのデプロイ数も過去1週間で18.5%増加した。CryptoQuantが金曜日に公表したレポートによると、3カ月平均を50%上回る水準となっている。
ステーキング報酬上限案への批判が続くなか、イーサリアムのクジラは動かず
CryptoQuantのレポートでは、クジラの動向を測る指標として一般的に用いられる、取引所への流入・流出の上位10件の取引量が、90日平均を約41%下回っていることも指摘された。
ETFの資金フローからも同様の傾向が見て取れる。7月にはイーサリアムETFに約3億4740万ドルが純流入し、ビットコインETFの約1億7280万ドルに対して約2.01倍となったが、8月第1週はイーサリアムETFが大きく出遅れている。

8月6日(木)までの8月第1週では、ビットコインETFに約7億6360万ドル、イーサリアムETFに約1億9410万ドルが純流入した。
ETH ETFは月曜日に1190万ドルの流出を記録した後、火曜日に5310万ドル、水曜日に6080万ドル、木曜日に9210万ドルの流入となった。金曜日分のETFフローデータは記事執筆時点でまだ公表されていなかった。
投資家の慎重姿勢は、イーサリアムで提案されているステーキング報酬体系の見直し案とも重なっている。
この提案に対しては、現在イーサリアムのステーキング市場で約21%のシェアを占めるLidoの有力関係者を含め、複数の著名な業界関係者から批判が寄せられている。
イーサリアム週末予想:1,860ドルが最初の試金石、1,820ドルもオプション市場の注目水準
ETHは1,900ドルを回復し、強いモメンタムを維持したまま週末を迎える。一方、オプション市場のポジションを見ると、月曜日の満期を前にトレーダーが依然として慎重な姿勢を維持していることがうかがえる。
伝統的な金融市場が48時間休場となる週末には、週末に生じる価格ギャップを正確にヘッジしたり、それを見込んだ取引を行ったりするうえで、月曜日に満期を迎えるオプションが重要となる。
世界最大のBTC・ETHオプション取引所Deribitでは、8月10日(月)に満期を迎えるETHオプションのうち、アウト・オブ・ザ・マネー(OTM)のプットが7,521枚、OTMのコールが3,472枚となっている。
プットの想定元本は約1475万ドルで、コールの約707万ドルの2倍を超えており、プット側のポジションが相対的に厚いことを示している。

まず注目されるのが1,860ドル付近だ。この水準ではプットのポジションが目立っている。
週末にETHがこの水準まで下落した場合、オプションのヘッジフローが価格変動に影響する可能性がある。
さらに、1,820ドルもオプション市場で注目される水準だ。この権利行使価格ではコールが88枚、プットが71枚となっている。ただし、こうした建玉だけから機関投資家の買い集め水準と判断することはできない。
上値では、1,920〜1,925ドルが目先のレジスタンスとなる。
このゾーンを明確に上回って終値を付ければ、短期的な弱気のオプションポジションの多くが崩れ、ショートカバーが再び加速して1,975ドルを試す展開につながる可能性がある。
通常、週末は取引量が減少するため、最も可能性が高いのは1,860〜1,920ドルのレンジでもみ合う展開だ。月曜日の満期を前に、短期オプションのプレミアムが時間の経過とともに減少することになる。
予想外のマクロ経済関連ニュースが出ない限り、オンチェーン活動の改善やステーブルコイン残高の増加は、中期的にETHを支える材料となり得る。
一方、週末に下方向へのボラティリティが高まった場合、1,820ドルはオプション建玉の状況から注目される価格帯の一つとなる。


