エックスウィン アメリカマーケットリサーチアナリストのデリア・ロホです。
今、私はメキシコにいます。
私はアメリカ人ですが、私たち家族のルーツはメキシコにあります。だからこそ、今回メキシコに来て改めて感じたことがあります。それは、暗号資産やステーブルコインの意味は、国によってまったく違うということです。
アメリカでは、ビットコインETF、CLARITY法案、機関投資家の参入など、暗号資産は主に「投資」や「金融市場」の文脈で語られます。
しかしメキシコでは、暗号資産はもっと生活に近い存在として見えてきます。特に重要なのは、米国からメキシコへの送金です。メキシコは世界有数の送金受取国であり、2024年には海外からの送金額が過去最高の約647億ドルに達しました。2025年には減少したものの、それでも約618億ドル規模を維持しています。
多くのメキシコ人にとって、米国で働く家族からの送金は、日々の生活を支える重要な収入です。家賃、食費、教育費、医療費。こうした生活費の一部が、国境を越えた送金によって支えられています。
このような国では、「お金を早く、安く、安全に送れること」そのものが非常に大きな価値を持ちます。
ここで注目されるのが、ステーブルコインです。
ビットコインは価格変動が大きいため、日常的な送金や生活費の受け取りには使いにくい面があります。一方、USDTやUSDCのようなステーブルコインは米ドルに連動しており、国境を越えた送金や価値保存の手段として使いやすい特徴があります。
もちろん、メキシコでは暗号資産が法定通貨として認められているわけではありません。暗号資産は合法ではあるものの、金融機関による利用には厳しい規制があり、中央銀行も慎重な姿勢を取っています。
それでも、実生活の中では「銀行よりも使いやすい」「送金が速い」「ドルに近い価値を持てる」という理由で、暗号資産やステーブルコインに関心を持つ人が増えています。
メキシコでは、まだ銀行口座を持たない人も少なくありません。近年、金融包摂は進んでいますが、現金中心の文化は根強く、2024年時点でも少額決済では現金を主に使う人が多いとされています。
このような環境では、スマートフォンだけで使えるデジタルウォレットやステーブルコインは、単なる投資ツールではなく、新しい金融アクセスの手段になり得ます。

私が今回メキシコで感じたのは、暗号資産は国によって役割が変わるということです。
アメリカでは、ビットコインは資産運用や国家戦略のテーマです。
日本では、まだ投資商品として見られることが多いです。
しかしメキシコのような国では、暗号資産は「生活を便利にする金融インフラ」になり得ます。
送金する。
受け取る。
保管する。
ドル価値にアクセスする。
銀行口座がなくても金融サービスに近づく。
こうした実用的な価値が、メキシコにおける暗号資産の本質だと感じました。
もちろん、課題もあります。詐欺、価格変動、規制の不透明さ、金融教育の不足など、解決すべき問題は多くあります。
だからこそ、私は金融教育がとても重要だと思います。
暗号資産は便利な道具になり得ますが、正しく理解しなければリスクにもなります。特にステーブルコイン、ウォレット、秘密鍵、送金手数料、取引所の安全性については、多くの人が学ぶ必要があります。
今回メキシコに来て、私は改めて感じました。
暗号資産の未来は、ウォール街やシリコンバレーだけで決まるものではありません。
それは、家族へお金を送る人、銀行口座を持たない人、インフレから生活を守ろうとする人たちの現場にもあります。
日本では暗号資産を「投資」として見ることが多いですが、世界にはそれを「生活インフラ」として必要としている人たちがいます。
メキシコは、そのことを非常に分かりやすく教えてくれる国だと思います。


