暗号資産の損失は株と相殺できない? 3年繰越の条件と“税金ゼロ”の注意点【泉税理士の「分離課税」解剖連載③】
Nada News thumbnail featuring a pixel-art character with a blue mask; Japanese text about a tax expert explaining crypto asset 'separate taxation' (分離課税) reality; includes a banner saying 新連載.

法案が成立した暗号資産の「分離課税」。投資家にとって朗報と言えるのが、長年要望されてきた「損失の3年繰越控除」が認められることだろう。

「これで今年の損を来年に持ち越せる」「株の利益と相殺して節税できる」と喜んでいる人も多いかもしれない。

しかし、新税制には厳格な「箱(グループ)」の概念が存在し、いくつか気をつけるべき留意点がある。

連載「泉税理士が読み解く!暗号資産『分離課税』のリアル」の第3回では、租税法に詳しい泉絢也税理士の解説をもとに、投資家が勘違いしやすい「損益通算の限界」と、見落としがちな「合計所得金額への影響」について解説する。

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本記事は、泉税理士のブログ記事「暗号資産の損失繰越と損益通算──上場株式との通算はできるのか」を元に、編集部で要約・再構成したものです。

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「損失の3年繰越」解禁。ただし条件あり

これまで、総合課税の雑所得として扱われてきた暗号資産は、どれだけ大きな損失を出しても翌年に繰り越すことができなかった。

しかし新税制では、特定暗号資産の譲渡による損失を翌年以後3年間繰り越して、将来の利益から差し引くことが可能になる。

しかも、この繰越控除は青色申告である必要はなく、白色申告の個人投資家でも利用可能だ。ただし、適用には絶対条件がある。泉税理士は次のように注意を促す。

【泉税理士の解説】

「1年でも確定申告を怠ると、繰越控除が適用できなくなるリスクがあります。取引がなかった年、損失がゼロの年でも、繰越を維持するためには確定申告が必要です。」

つまり、「今年は取引しなかったから申告しなくていいや」と放置してしまうと、せっかくの繰越する権利を失ってしまうのだ。

株の利益やステーキング報酬とは相殺できない

暗号資産が税率20%の分離課税になることで、多くの投資家が「同じ20%の分離課税である株(上場株式等)の利益と相殺できるのでは?」と期待している。しかし、これは明確に否定されている。

【泉税理士の解説】

「特定暗号資産の分離課税グループと上場株式等の分離課税グループは、別々の『箱』です。同じ20%の分離課税であっても、『箱』(グループ)が異なる以上、損益通算はできません。」

暗号資産の分離課税は、完全に独立した「箱」として扱われる。したがって、株やFXの利益と暗号資産の損失をぶつけることはできない。

さらに注意したいのが、ステーキング報酬やマイニング報酬の扱いだ。

【泉税理士の解説】

「特定暗号資産の分離課税の箱の中にあるのは、特定暗号資産の『譲渡』に係る事業所得・譲渡所得・雑所得の3類型だけです。ステーキングやマイニングの所得はこの箱の外にあります。」

ステーキング報酬などは原則として総合課税のまま(箱の外)となるため、暗号資産の売却損(箱の中)と相殺して税金を安くすることはできない。

要注意:「税金ゼロ」でも扶養を外れる可能性が?

今回の新税制において、泉税理士が「非常に重要なポイント」として注意を促しているのが、合計所得金額に関するルールだ。

例えば、前年から繰り越した大きな損失を使って、今年の暗号資産の利益を相殺し、結果として「今年の暗号資産にかかる税金(所得税・住民税)をゼロ」にしたとしよう。税金がかからないのだから安心だと思いがちだが、実はそうではない。

【泉税理士の解説】

「『税金がゼロになったから何も影響ない』は危険な誤解です。繰越控除で所得税・住民税の納税額がゼロになっても、合計所得金額は繰越控除前の金額のまま残ります。」

合計所得金額とは、扶養控除や配偶者控除を受けられるか、住宅ローン控除が適用されるか、さらには国民健康保険料の算定などを決める重要な基準だ。

つまり、繰越控除で税金自体はゼロになっても、税務上の「所得」は大きかったとみなされ、配偶者の扶養から外れてしまったり、健康保険料が跳ね上がったりする可能性があるのだ。

【泉税理士の解説】

「利益を確定させる前に、税額だけでなく『合計所得金額がいくらになるか』を必ず確認してください。家族に暗号資産投資をしている方がいる場合は、その方の合計所得金額が自分の扶養控除・配偶者控除の適用に影響することも忘れずに。」

まとめ:正しい知識が備えに

「分離課税で20%になる」「損失が3年繰り越せる」という字面のメリットだけで安心してしまうのは早計だ。

  • 繰越には毎年の確定申告が必須
  • 株やステーキング報酬との損益通算はできない
  • 繰越控除を使っても「合計所得金額」は減らない(各種控除に影響が出る可能性)

新税制が始まる前にこれらのルールを理解し、「利益を確定させるタイミング」を慎重に見極めることが、投資家にとって確実な備えとなるだろう。

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■ 監修者プロフィール・元記事のご案内

さらに詳しい「分離課税の3つのグループ(箱)の詳細」や「総合課税ルートを選んだ場合の損益通算」などについては、泉先生のブログ記事本編にて詳細に解説されています。ぜひ併せてご覧ください。

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暗号資産の損失繰越と損益通算―上場株式との通算はできるのか(泉絢也税理士事務所)

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監修者プロフィール

泉 絢也(いずみ じゅんや)

Pixel art superhero in a blue mask and purple outfit inside a purple circular badge, with the kanji 税 meaning tax beside.

税理士・東洋大学法学部教授、日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)税制部会顧問。元国税職員(国税調査官)。博士(会計学・中央大学)。専門は租税法。暗号資産・NFTの税務、AIと税務、税務調査を主な研究テーマとする。著書に『事例でわかる!NFT・暗号資産の税務〔第2版〕』(中央経済社・共著)、『パブリックコメントと租税法』(日本評論社・単著)など。

|編集:栃山直樹
|画像:NADA NEWS制作

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