「地方創生×ブロックチェーン」は、一過性のブームから持続可能なリアル経済圏づくりへと進化している。来春にはデジタル社債の延長線上に、「デジタル地方債」の道も開く。さまざまな動きの中で、地方銀行は新規事業として何を仕掛けるのか。そしてWeb3ゲームは、地方の風景にどのような変化をもたらし、人とお金の動きをどう変えるのか。
法人向けWeb3ビジネスコミュニティ「N.Avenue club」は6月25日、3期最終回となる第11回ラウンドテーブルを開催した。テーマは「地方創生」。登壇したのは、地域金融機関の現場でWeb3新規事業を推進するしずおかフィナンシャルグループ事業開発室長の𠮷田拓矢氏、デジタル社債からデジタル地方債までWeb3関連の法務を多数手がけるTMI総合法律事務所パートナー弁護士の成本治男氏、そして写真バトルアプリ「SNPIT」(スナップイット)の株式会社GALLUSYS 取締役CTO、吉田健一氏。地域金融・法律・Web3ゲームというまったく異なる立ち位置から、「地域」と「ブロックチェーン」の接点が立体的に浮かび上がる回となった。
しずおかFG 𠮷田氏:「地域の未来は、地域を支える金融機関の在り方によって決まる」

最初に登壇したのは、しずおかフィナンシャルグループ事業開発室長の𠮷田拓矢氏。テーマは「地域をオンチェーン化すると何が変わるのか」。
吉田氏によれば、静岡は産業基盤が強く住みやすい一方で、人口流出数は全国ワーストレベルにある。相続を機に資金が一気に域外へ流出するなど、地方銀行を取り巻く環境は大きく変化しているという。こうした背景から、地域の発展と銀行のサステナビリティを両立させるため、Web3を含む新規事業を中期経営計画の「挑戦」領域に位置付けているという。
シリコンバレー駐在時代について、吉田氏は「Web3については正直よく分からず、どちらかというと否定的だった」と振り返る。しかし現在は、「静岡という場所が他地域より先にこの分野にフレンドリーになることが、人を呼び込み、地域の発展につながる近道だ。誰よりも早く、地域で最もこの分野に強い事業者になりたい」と語った。
TMI総合法律事務所 成本氏:デジタル地方債は可能性がある。無理にブロックチェーンでなくていい

続いて、TMI総合法律事務所パートナー弁護士の成本治男氏が「デジタル地方債の可能性」をテーマにプレゼンした。
成本氏はまず、参考事例として、社債セキュリティ・トークンの事例を紹介した。そのうえで、デジタル地方債については、6月に公布されたばかりの改正法に触れ、債券発行の際に券面を発行しなくてよくなるなどと説明した。これまで、機関投資家に支払っていた地方債の利息は域外流出していたが、地域住民が買えば、その利息は域内で循環するお金になると評価した。
ただし「Why blockchain?」には率直な姿勢を示し、「最初はブロックチェーンじゃない地方債でもいい。Web2的に窓口で受け取り、弁済時に現金かステーブルコインかを選べる形からでいい。技術として使う意味があるね、という入り方をしないと広がらない」と指摘した。
GALLUSYS 吉田氏:ゲームから始まる「地域のオンチェーン化」

3人目に登壇したのは、写真バトルアプリ「SNPIT(スナップイット)」のディレクターを務める株式会社GALLUSYS取締役CTOの吉田健一氏。「地域のオンチェーン化」を、実際のサービスを通じて紹介した。
SNPITは、タイムスタンプと位置情報を備えた「未加工写真のデータベース(World Repository)」の構築を目指すアプリ。NFTに触れなくてもポイ活アプリとして楽しめる設計で、累計ダウンロード数は約150万。HISとの連携や人気IPとのコラボも展開している。
吉田氏は、群馬県・榛名湖での事例を紹介。「うちの町には何もないと言われるのが悔しくて写真を撮り続けた」という地元ユーザーがランキング戦で1位になると、「榛名湖に行ってみたい」と十数人のユーザーが実際に現地を訪れ、地域での消費につながったという。「入口は『稼げる』でも、続けるうちに写真の楽しさやコミュニティ、World Repositoryを作るという意義を感じてもらえている」と語り、ゲームを起点に地域との新たな接点が生まれている現状を紹介した。
後半ディスカッション:地域型ステーブルコイン、トークン化された観光資源、そしてDAOの本当の価値
後半は参加者がテーブルごとに分かれ、「『地域のオンチェーン化』によって何が変わるのか」「ステーブルコインやトークンコミュニティは本当に地域経済に接続できるのか」をテーマにディスカッションを行った。
全体共有では、京都府の担当者が地域経済の好循環を生み出す仕組みとしてステーブルコインの活用を検討したいと発言。また、参加者からは「地域に不足しているのは資金ではなく多様性」「DAOの価値は資金調達より知識調達にある」といった意見も紹介された。
最後に登壇者が総括。成本氏は、地域のオンチェーン化には政府・自治体や地銀が先行投資する重要性を指摘。GALLUSYSの吉田健一氏は「NFTは『資産』ではなく『コミュニティへのパス』になりつつあり、その運営ノウハウは地域にも活かせる」と述べた。しずおかFGの𠮷田拓矢氏も「ユースケースも基盤も必ず来る。その流れを地域から後押ししたい」と締めくくった。
N.Avenue clubは4期も継続。次回・4期第1回ラウンドテーブルは、7月23日に「エージェンティックコマースとブロックチェーン」のテーマで行われる。事務局は、Web3ビジネスに携わっている、または関心のある企業関係者、ビジネスパーソンへの参加を呼び掛けている。
|文:瑞澤 圭
|編集:NADA NEWS編集部
|写真:多田圭佑


