ステーブルコイン決済は”日常”になるか──ネットスターズ×ソラナが示した使われる条件【取材】

「Web3を実社会に根づかせたい」

ネットスターズ代表取締役社長CEOの李剛氏がこう語ったのは4月8日、Web3とAIに特化した国際テクノロジーカンファレンス「TEAMZ SUMMIT」でのことだった。

2009年設立の同社は、PayPayをはじめとするQRコード決済やクレジットカード、電子マネーなど国内外の多様な決済手段を一元管理できる環境を提供している。この日は、主力事業のマルチ決済プラットフォーム 「StarPay(スターペイ)」にステーブルコインやブロックチェーンを接続する新構想「StarPay-X」を発表。1月から2月にかけて実施した羽田空港の土産店でのUSDC決済の実証を踏まえ、複数のブロックチェーンやウォレットと連携する方針を打ち出した。 

▶関連記事:ネットスターズ、店舗でのステーブルコイン決済拡張へ──対応チェーン・ウォレット拡大の新構想「StarPay-X」発表

国内初となるUSDCの実店舗決済を実現した同実証では、対応チェーンはソラナ、ウォレットはメタマスクに限定されていた。今回の構想は、これを「マルチチェーン」「マルチウォレット」へと拡張するもので、ブロックチェーンではAptos(アプトス)やCanton(カントン)、ウォレットではセルフカストディ型のBitget Walletの参画が発表された。

NADA NEWSは記者会見後、李氏と、実証の基盤チェーンとなったソラナの国内エコシステムの形成を支援するSuperteam(スーパーチーム)日本共同代表の佐藤茂氏に取材。 Web3決済の社会実装に向けた課題と展望を聞いた。 

ネットスターズはその後、各事業者やエコシステムとの協議を進めており、5月8日にはアプトスとの基本合意書(MOU)締結を発表。構想の具体化も進み始めている。

▶関連記事:ネットスターズ、AptosとWeb3決済普及でMOU締結──「StarPay-X」のマルチチェーン化へ

裏側を意識させない仕組みを

同社は現在、羽田空港に続き、姫路市のカードショップでもUSDC決済の実証実験を進めている。李氏は、一連の取り組みから得られた手応えと課題を語った。

同空港での第1弾の実証については「想定以上の結果だった」と振り返り、約1カ月間の期間中、海外からのインバウンド客を中心に日常的にUSDC決済が利用されたと述べた。

〈李氏は、羽田空港でのUSDC決済の実証を振り返った〉

一方で、課題として浮き彫りになったのが操作の複雑さだったという。「Web3に慣れているユーザーであれば問題なく使えるが、一般のユーザーにとってはハードルが高い」 とし、ウォレットや利用フローの煩雑さがステーブルコイン決済が普及するボトルネックになっていると説明した。

こうした点を踏まえ、「ユーザーが(裏側の仕組みを)意識せずに、今まで通り使える体験」の重要性を強調。QRコード決済と同じ感覚で利用でき、「裏側でブロックチェーンやステーブルコインが動く形が理想だ」と語った。この考え方が「StarPay-X」のマルチチェーン・マルチウォレット構想につながっている。 

なぜ「ソラナ」だったのか

実証の基盤にソラナが選ばれた背景について佐藤氏は、技術特性との適合性を挙げた。「ソラナはTPS(1秒あたりのトランザクション処理数)が非常に高く、手数料も低く安定している」とし、決済用途との相性の良さを強調した。 

〈実証の基盤チェーンに選ばれたソラナのSuperteam日本共同代表を務める佐藤茂氏〉

実際、グローバルでも米ドル建てステーブルコインの流通基盤としてソラナの活用が進んでおり、日本でも同様のユースケースが広がる可能性があると捉えているという。 

そのうえで、「StarPay-X」がマルチチェーン化を打ち出したことについては、「それぞれのチェーンの特性を生かして使い分けていくことが重要になる」と指摘。パブリックチェーンは誰もが利用できるオープンな基盤だとしたうえで、各チェーンが技術特性に応じた役割を担っていくとの見方を示した。

「決済」と「資産運用」の2軸

佐藤氏は、「ブロックチェーンの歴史を考えると、最大のキラーユースケースはステーブルコイン」としたうえで、「決済」と「資産運用」の2軸での普及が鍵になると指摘。米ドル建てステーブルコインはすでに数百億ドル規模の市場を形成しており、グローバルでは実用段階に入っているとの認識を示した。

そのうえで、国内で一般に使われるためには「保有する動機」が必要になるとし、日常的に使える決済手段としての利便性と、資産として保有・運用する需要の両方が揃うことで、ステーブルコインの普及が加速すると述べた。

李氏も、昨年に発行が始まったJPYCに加え、今後登場予定のJPYSCやトークン化預金など、日本円建てのデジタルマネーの広がりに言及。利用可能な選択肢が増えることで、決済を中心としたユースケースもさらに拡大していくとの見方を示した。

Web2.5という立ち位置

最後に李氏に、Web3領域に本格参入する意義を聞いた。

ネットスターズは2015年、中国の「WeChat Pay」を代理店として日本で初めて導入するなど、キャッシュレス領域で事業を拡大してきた。2023年には東証グロース市場に上場している。 

李氏は、「これまでWeb2の企業として決済インフラを築いてきたが、これからはWeb3と融合する段階に入る」とし、その接続点として「Web2.5」 という会社の立ち位置を示した。QRコード決済という既存の仕組みと、ステーブルコインという新たな技術を橋渡しし、段階的に融合へと導く考えだという。

「決済はインフラ。その上にどんなサービスや価値を乗せるかが重要になる」とし、ブロックチェーンを取り込むことで、新たなビジネス機会の創出を狙っている。

「StarPay-X」を起点にパートナーとの連携を広げながら、現実の決済体験をどう進化させていくのか。Web2とWeb3の間に立つ同社の取り組みは、国内のステーブルコイン決済の普及に一石を投じている。

|取材・文:橋本祐樹
|写真:NADA NEWS編集部
|トップ画像:ネットスターズ代表取締役社長CEOの李剛氏(左)とソラナのSuperteam日本共同代表を務める佐藤茂氏

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