ディーカレットDCPが進める海外接続戦略は、トークン化預金ネットワーク同士の接続によるクロスボーダー決済の実現を見据えつつ、立ち上げフェーズでは柔軟な形での接続から開始する方向で具体化が進んでいる。
同社営業戦略本部 マーケティンググループ グループヘッドの金籠舞氏は、Partiorとの協議について「将来的にはDCJPYと海外のトークン化預金との接続によるユースケースを視野に入れている」としたうえで、「初期段階では、実務的なニーズに応じた形でスモールスタートする」と説明する。
背景には、JPモルガン傘下のデジタル資産プラットフォーム「Kinexys(キネクシス)」によるPartior接続や、Ondo Financeなど海外RWAプレーヤーとの連携拡大がある。トークン化預金の競争軸は、発行そのものから、どのネットワークとどうつながるかへ移りつつある。ディーカレットDCPの海外接続戦略を金籠氏に聞いた。
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Partior接続、USドル送金からスタート
──昨年、Partior、新生銀行とトークン化預金を活用した外貨取引の本格検討を開始すると発表。その後、どんな状況か。
金籠氏:技術面、ビジネス面ともに具体的な協議が進んでいる。弊社は、システム面に限らず、日本の金融機関がPartiorを利用する際に、各行のニーズに合わせた提案や、言語、商習慣などの壁を超えるサポートなどを行う。
初期フェーズでは、USドル送金でPartiorと接続するために必要な部分をディーカレットDCPが担い、まずはUSドルでの送金を始めるなど、よりシンプルな形での接続から開始する案が具体化している。
当初想定していた、DCJPYとPartiorのネットワークを接続し、例えばJPモルガンのUSドルとつながるような形での連携についても、技術的な接続方法など、具体的な検討を進めている。
Kinexys接続で広がるトークン化預金ネットワーク
──トークン化預金そのものにこだわらないということか。
金籠氏:そうではない。むしろ今後は、トークン化預金がどのネットワークと接続し、どのようなユースケースを実現できるかが重要になると考えている。
最近、JPモルガン傘下のデジタル資産プラットフォームKinexys(キネクシス)がPartiorのネットワークと接続した。これまで、Partiorとの接続は、JPモルガンでは法定通貨だけだったが、Kinexysが接続したことで、Partiorを介してDCJPYとJPモルガンのトークン化預金がオンチェーンで接続されるスキームが現実味を帯びてきた。
将来的には、DCJPYとJPモルガンのトークン化預金を含む複数のネットワークが相互接続されることで、End to Endでトークン化預金を活用した、新たなクロスボーダー決済や資金管理のユースケースが生まれることが期待される。
最近、イギリスやアメリカでも、複数の銀行がコンソーシアム形式でトークン化預金に取り組むPoCがスタートしている。Partiorがそうしたドメスティックなネットワークを接続する「国際的なハブ」となっていく可能性もあり得るだろう。
──そうした動きの中で、ディーカレットDCPの役割も変化してきているのか。
金籠氏:昨年8月にPartiorとの接点が生まれてから、急速に海外企業との連携の話が進んでいる。例えば今日、業務提携に関する覚書(MOU)を締結したOndo Financeもそのひとつ。まだ明らかにできないが、他にも複数の話が進んでいる。
RWAプレーヤーが求める日本の決済インフラ

──海外のどういったプレーヤーがDCJPYに関心を持っているのか。
金籠氏:ひとつは、RWA(現実資産)のトークン化に取り組んでいる企業だ。日本進出を視野に入れ、決済手段を整える観点から、日本での24時間365日の決済の可能性に関心を持っている。
例えば、Ondo Financeのトークン化MMF(マネーマーケットファンド)「OUSG」は、決済手段としてアメリカでは、USDC、PayPalのPYUSDなどのステーブルコインが主な決済手段になっているが、Kinexysとの連携のPoCも進んでいる。
これまでは暗号資産寄りの投資家が中心だったが、今後、よりTradFi(伝統的金融)側に広がっていく際には、トークン化預金による決済のニーズも高まると見ている。
アメリカ市場同様、日本市場においても、機関投資家がドル建てステーブルコインを大量に保有し、決済するのはかなりハードルが高いだろう。その意味で、機関投資家には、自国通貨建てのトークン化マネー、中でも預金同様に取り扱えるトークン化預金を高額取引に使いたいというニーズが大きいとみている。
──現状、ハードルはどういうとこにあるのか。
金籠氏:レギュレーションについては、現時点で大きな障壁が顕在化しているわけではないが、普及に向けてのユースケースや対象顧客などの具体化は喫緊の課題。技術面については、例えばDCJPYはHyperledger Besu、PartiorはQuorumと、基盤となる技術が異なるため、その接続にどういったソリューションを使うのかが大きな論点の一つ。現在、クロスチェーンソリューションを持つ複数の企業と協議を進めている。
さらに、OndoのOUSGのネットワークとの接続など、今後、パブリックチェーン、プライベートチェーン含めて、さまざまなチェーンとの接続は必須になる。今後のさまざまな可能性を考えたときに、どういった形で他のチェーンと接続していくべきか、複数の選択肢を比較検討している段階だ。
CMS競争で問われる日本の金融機関の対応
──今後、パブリック、プライベートを超えた接続が重要になる。
金籠氏:JPモルガンは、Coinbaseが手がけるイーサリアムレイヤー2のBaseやCanton Networkなどのパブリックチェーン上でトークン化預金の取り組みを進めているが、当然ながらそこではKYCが求められる。KYCが必須なのであれば、パブリックかプライベートかによる違いがあまりなくなってくるのではないかと考えている。
それよりも今後、デジタルアセットが、どのチェーンに乗ってくるのかが重要ではないか。異なるチェーン間でも接続は可能だが、コストや効率を考えたときには、同じチェーンの方が優位となる。そうした対応も考える必要があると社内では議論している。
──ユースケースとしては、どのようなものを想定しているのか。
金籠氏:ひとつは、グローバルCMS(キャッシュマネジメントシステム)だ。国際展開をする日系企業の多くが利用しているが、日本の金融機関は、これまでシステム面やオペレーション面等で海外の金融機関に苦戦を強いられてきている。日本の金融機関が従来のインフラを刷新し、顧客視点でトークン化預金の特性を活用したサービスを具備することで、海外大手金融機関に対する競争力強化につながりうると考えている。
JPモルガン、Citi、HSBCなど、海外大手銀行のトークン化預金に関する動きは非常に早く、日本企業がそうした銀行のCMSを検討する動きもでてくることが想定される。日本の金融機関は、そのような動きに遅れることがないようにしていく必要があるのではないかと考えている。
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|インタビュー・文:増田隆幸
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