トークン化は金融改革の中核:BlackRockのフィンクCEO

BlackRock(ブラックロック)のLarry Fink(ラリー・フィンク)CEOは年次書簡の中で、トークン化とデジタル資産が金融システムの刷新につながるとの見解を示した。従来の資本市場が一部の資産保有者に利益を集中させてきたと指摘し、その解決策として投資アクセスの拡大を強調している。

「資本主義は機能しているが、十分ではない」

フィンク氏は書簡で、現在の金融システムについて「資本主義は機能しているが、十分な人々のために機能していない」と述べた。市場の成長による利益が既存の資産保有者に偏り、多くの労働者が取り残されていると分析している。

この問題は、所得格差の拡大や政府債務の増加、資本市場への参加の低さといった構造的課題と結びついていると指摘した。

フィンク氏は、その解決策としてトークン化を提示する。株式や債券、不動産などの資産をブロックチェーン上のデジタルトークンとして表現することで、発行、取引、保有がより簡単かつ効率的になると説明した。

トークン化により、資産の移転はより迅速かつ低コストで行えるようになり、従来の金融インフラの非効率性を改善できる可能性がある。

フィンク氏は、世界人口の半数がスマートフォン上でデジタルウォレットを利用している点に注目する。そのウォレットが単なる決済手段にとどまらず、投資の入り口として機能する未来を描いた。

「送金するのと同じくらい簡単に、長期的な投資ができるようになる」とし、トークン化が投資の民主化を加速させる可能性を示唆した。

インターネット初期になぞらえた変革

フィンク氏はトークン化の現状を1990年代後半のインターネットに例えた。短期間で既存システムを置き換えるものではないが、徐々に従来の金融とデジタル基盤を結びつける形で普及していくと見ている。

その過程では、投資家保護や取引の安全性確保が重要になるとし、明確な規制やリスク管理の枠組みの整備を求めた。

ブラックロックはすでにデジタル資産分野で存在感を強めている。フィンク氏によれば、同社は約1500億ドル(約23兆円、1ドル=155円換算)規模のデジタル関連資産に関与している。

同社のトークン化ファンド「BUIDL」は最大規模のトークン化ファンドとされるほか、約650億ドルのステーブルコイン準備資産や約800億ドルのデジタル資産ETF(上場投資信託)を運用している。

市場全体で進むトークン化の動き

トークン化を巡る動きはブラックロックに限らない。Nasdaq(ナスダック)はトークン化株式の取引に向けたパイロットプログラムを進めており、デジタル資産企業Talos(タロス)との提携を通じて機関投資家向けの活用を模索している。

また、規制当局もトークン化証券に関するルール整備を進めており、新たな金融商品の実験を可能にする枠組みの検討が進んでいる。

金融システム全体の課題と再設計

フィンク氏は、銀行や政府だけでは今後の経済変化に対応しきれない可能性にも言及した。製造業の再構築やエネルギー供給の拡大、AI競争といった課題に対応するには、より効率的な資本配分が必要になるという。

また、社会保障制度についても、長期的な市場リターンを取り入れるなどの構造改革が必要になる可能性を示唆した。

フィンク氏にとって、トークン化は単なる技術革新ではなく、より多くの人々を投資に参加させるための手段である。従来の金融システムの外にいた層を市場に取り込むことで、経済全体の成長を支える基盤を広げる可能性を秘めている。

|文・編集:Shoko Galaviz
|画像:Shutterstock

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