米イラン緊張激化でビットコイン採掘コスト13%急騰──さらなる売り圧力も?【価格分析】

● 地政学的緊張とエネルギーショックにより、ビットコイン(BTC)の採掘コストが1週間で12.8%上昇し、 8万8100ドルに急騰した。

● BTC価格が6%下落する一方でコストが上昇。マイナーの利益率圧迫リスクが拡大。

● 過去のマイナーポジション指数(MPI)の急上昇事例は、強制売却が加速すれば6万ドルへの下落も示唆している。

採掘コスト上昇で売り圧力拡大か、ビットコインは6万5000ドル下で推移

2月24日時点で、ビットコイン価格は6万5,000ドルを下回って推移。月曜日には週間ベースでの最安値終値を記録した。投資家は、ワシントン時間午後9時に予定されているトランプ大統領の一般教書演説を控え、ポジションを大きく動かさず様子見姿勢を取っている。

金や銀などの貴金属は、米国とイランの緊張再燃、ロシア・ウクライナ情勢の長期化を巡る報道が強まる中で大きく調整した。

一方、オンチェーンおよびマクロ連動型ブロックチェーンデータは、エネルギーや原油供給網の混乱がビットコインに二次的ショックを与える可能性を示唆している。

〈ビットコインの採掘コスト推移:MacroMicro〉

英ケンブリッジ大学と提携するブロックチェーン分析プラットフォームのMacroMicroのデータによると、ビットコイン1枚あたりの平均採掘コストは、2月17日の約7万8400ドルから2月24日には8万8100ドルへ上昇した。

わずか7日間で12.8%もの急騰を記録した背景には、地政学的緊張に伴うエネルギー価格の変動に加え、拡大するAIデータセンターからの旺盛な電力需要がある。電力確保の競争激化は、安定した電力価格モデルに依存する大規模なビットコインマイニング事業に直接的な圧力をかけている。

同期間に、BTC価格は6万8800ドルから6万4700ドルへと約6%下落した。

採掘コストが上昇する中で市場価格が下落すると、マイナーの利益率は圧迫され、運営費や負債の支払いを賄うための「強制売却」を促す要因となる。

マイナーポジション指数が示す下振れリスク

オンチェーン分析企業CryptoQuantが提供する「マイナーポジション指数(MPI)」は、マイナーの流出量を1年移動平均と比較した指標だ。簡単に言えば、マイナーが通常より大幅に多くビットコインを売却しているかどうかを示す。

数値が「2」を上回ると、マイナーによる異例の売り圧力を示し、マイナスの場合は売却が抑制されていることを意味する。

〈ビットコインマイナーポジション指数:CryptoQuant〉

直近の歴史的データでは、MPIが-1.55から2.9に急上昇した際、BTC価格は8万9100ドルから6万2000ドルへと急落した。これは、マイナーの積極的な流出が市場の弱気ムードを増幅させた好例だ。

記事執筆時点のMPIは-1.03付近で推移しており、現時点ではネットワークバリデーター間の売り圧力は落ち着いている。

しかし2月21日には、世界第9位のマイニング企業であるBitdeerが、保有ビットコインをゼロに削減したと発表。売却は運営資金および事業拡張資金確保のためと説明した。

マイニングコストが9万ドルに迫る一方で価格が6万ドルに近づけば、資金繰りの厳しい中小マイナーや高レバレッジの大手企業も追随する可能性がある。

一方で、ポジティブな動きもある。フランスのエネルギー大手Engie(時価総額750億ドル)がブラジルでのビットコインマイニング検討を報じられた。送電のボトルネックによる収益損失を回避する手段として期待されている。火曜日、デジタル資産リサーチ責任者のマシュー・シーゲル(Matthew Sigel)氏は、送電網のボトルネックが原因で同社が数十億ドルもの収益損失を被っているという報告を引用し、X上でこのニュースを拡散した

予測市場では、2月末にBTCが6万ドルで終えるシナリオにも一定の確率が織り込まれている。マイナーの売却が加速すれば、その可能性はさらに高まるだろう。

テクニカル分析:デッドクロスのリスクと6万ドルのサポート

週足チャートでは、ビットコインは重要なテクニカル水準に接近している。

現在、13週単純移動平均線(SMA)が約7万7352ドル、69週SMAが約6万9549ドル付近にあるが、価格は両方の水準を下回って推移しており、中期的構造は弱含んでいる。

〈ビットコイン価格予測|テクニカル分析〉

モメンタム指標も悪化を示している。週足RSIは35付近で、売り手が優位にあることを示しているが、極端な売られすぎ(オーバーソールド)の状態には至っていない。MACDヒストグラムもマイナス圏で拡大を続けており、下落の勢いが強まっている。

現在の焦点は、65000ドルを下回る水準で短期移動平均線が長期線を下抜ける「デッドクロス」形成のリスクだ。主要なサポートは週足チャートで赤色の水平線で示される6万ドル。この閾値を割り込めば、過去のコンソリデーション(持ち合い)レンジである5万1000ドルまでの下落が視野に入る。

逆に、6万9500ドルを回復すれば、直近のデッドクロスリスクは後退し、7万7000ドルのレジスタンス再挑戦への道が開ける。そのためには、マイナーの売り圧力沈静化とエネルギーコストの安定が必要だ。

現状では、採掘コスト上昇と価格下落の組み合わせが非対称的な下振れリスクを生んでいる。

地政学的緊張がエネルギー価格を押し上げ続けるなら、マイニング経済は引き続き圧迫される可能性が高い。3月に向け、ビットコインが6万ドルを守れるかが重要な分水嶺となる。