暗号資産(仮想通貨)およびブロックチェーン分野に特化するグローバル資産運用会社HashKey Capital(ハッシュキー・キャピタル)は、同社の第4号ファンドとなる「HashKey Fintech Multi-Strategy Fund IV(ハッシュキー・フィンテック・マルチストラテジー・ファンドIV:Fund IV)」のファーストクローズを完了したと発表した。
今回のクローズでは2億5000万ドル(約390億円、1ドル=156円換算)のコミットメントを集め、当初の想定を上回る結果となった。最終的な運用資産総額(AUM)は、5億ドルを目標としている。
Fund IVのゼネラルパートナーは、HashKey Capital Investment(ハッシュキー・キャピタルおよびその関連会社を含むハッシュキー・グループの一部)が務める。投資家層は、機関投資家、著名なファミリーオフィス、高純資産層個人といった高度に洗練された顔ぶれで構成されており、暗号資産市場に対する長期的な期待の根強さを示す形となった。
特筆すべき点として、ハッシュキー・キャピタルの第1号ファンドはDPI(実現分配倍率)で10倍超を達成しており、グローバル市場環境が変化する中でも「高確信度のブロックチェーン投資」に対する機関投資家の需要が継続していることを裏付けている。
インフラからマスアダプションまで狙うマルチ戦略
Fund IVは、マルチストラテジー型の投資アプローチを採用し、世界各地の優れたデジタル資産プロジェクトを支援する。投資対象は、ブロックチェーン・インフラ、スケーラブルなプロトコル、そしてマスアダプションを見据えたユースケースに重点を置く。
特徴的なのは、パブリックマーケット戦略とクロスオーバー投資を組み合わせ、デジタル資産市場に内在する構造的な非効率性を捉えにいく点だ。加えて、アルファ創出を狙った選択的なプライベート投資も行い、ポートフォリオ全体の収益機会を高める設計となっている。
新興国と実需に焦点
ハッシュキー・キャピタルのCEOであるDeng Chao(ダン・チャオ)氏は、今回のファンドについて次のように語る。
「2億5000万ドルの新たな資本により、私たちは新興国で起きている大きな成長を捉える独自のポジションを確立した。これらの地域は、ブロックチェーンのリアルワールドアプリケーションにとって真の実験場である。Fund IVは、そのイノベーションをグローバルに拡大するための不可欠な燃料となる」。
新興国市場は、決済、金融包摂、デジタルインフラといった分野でブロックチェーン技術の実装が急速に進んでおり、ハッシュキーはこれを、長期的成長の源泉と見ている。
機関投資家向け「暗号資産フルカバレッジ」
Fund IVは投資家に対し、インフラ、ツール、アプリケーションまでを網羅する機関投資家グレードの暗号資産エクスポージャーを提供することを目的としている。
単なるトークン投資にとどまらず、実需とスケールを見据えたプロジェクト群に資本を配分する点が特徴だ。
2018年の設立以来、ハッシュキー・キャピタルはグローバルなブロックチェーン・エコシステムの中核的存在として活動してきた。現在、同社は10億ドル超のAUMを運用し、世界で400以上のプロジェクトに投資している。
シンガポールを拠点に、香港と日本にも拠点を持つハッシュキー・キャピタルは、規制下での暗号資産投資の先駆者としても知られる。
さらに、香港初のビットコイン(BTC)およびイーサリアム(ETH)現物ETF(上場投資信託)の立ち上げや、Hong Kong Web3 Festivalの主催などを通じて、同社は東西の暗号資産コミュニティを結ぶ橋渡し役としての地位を確立している。
|文・編集:山口晶子
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