Securitize(セキュリタイズ)とCantor Fitzgerald(キャンター・フィッツジェラルド)は7月15日、上場企業がブロックチェーン基盤を用いて証券をトークン化し、新規株式公開(IPO)や追加株式発行(フォローオン)を実施できるようにするための提携契約を結んだと発表した。
トークン化の適用範囲を二次流通市場での取引から資本形成のプロセスへと広げ、伝統的な公募の確立された枠組みの中で、企業がオンチェーンで資金を調達し証券を発行できるようにする。
それによって、透明性の向上、業務効率の改善、所有記録の近代化、グローバルなオンチェーン投資家層へのアクセスといった利点を見込む。
契約では、Cantorが株式資本市場および株式取引の機能を担い、Securitizeがデジタル証券の発行・流通・管理に使うトークン化インフラを提供する。同社グループのSEC登録ブローカーディーラーであるSecuritize Markets(セキュリタイズ・マーケッツ)が、募集および決済のプロセスに参加する。
Securitize共同創業者兼CEOのCarlos Domingo(カルロス・ドミンゴ)氏は「上場企業が、伝統的な資本市場へのアクセスと、証券の発行・流通・所有・管理を改善するブロックチェーン技術の利点との間で、どちらかを選ばねばならない理由はない」と述べた。
Cantor共同CEO兼グローバル株式責任者のPascal Bandelier(パスカル・バンドリエ)氏は「トークン化は主流の資本市場の一部になりつつある」とし、2025年の米IPOで首位に立った実績をオンチェーンに持ち込むと語った。
提携は両社の既存の関係を土台とする。Securitizeは7月2日、Cantor系の特別買収目的会社(SPAC)「Cantor Equity Partners II」との合併を経てニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場した。運用資産(AUM)は50億ドル(8000億円、1ドル=160円換算)超である。
その上場初日、同社は自社の普通株SECZをAvalanche(アバランチ)とSolana(ソラナ)上でトークン化し、適格な米国投資家に自社の規制対象プラットフォームを通じて提供を開始した。
ドミンゴ氏は「SECZは合成トークンでもオフショアのラッパーでもない。NYSEで取引されているのと同一の普通株を、規制されたインフラを通じて発行体主導でトークン化したものだ」と説明している。
同社は、新規上場企業が上場初日に自社株をオンチェーン化した初の事例であり、トークン化されたSECZは世界最大のトークン化株式になる見込みだとしている。今回の枠組みは、この自社での実践を他の上場企業に開くものと位置づけられる。
この動きの背景にはトークン化証券の広がりがある。これまでプライベートクレジットや米国債が中心だったが、対象は上場株式へと移りつつある。RWA.xyzのデータによれば、オンチェーンのトークン化株式の価値は直近30日で16%増の約19億ドルに達した。
また、米証券清算・決済大手のDTCC(The Depository Trust & Clearing Corporation)は、JPMorgan(JPモルガン)やGoldman Sachs(ゴールドマン・サックス)など約40社と株式・米国債のトークン化実証を計画している。
焦点は「既存株式の流通」から「資本調達そのもの」へと移り始めたと言えるだろう。
日本でもST(セキュリティトークン)市場は拡大しており、BOOSTRY(ブーストリー)によると2025年度の公募発行額は単年1650億円、累計3333億円に達した。
ただし、その約85%は不動産を裏付けとする信託型で、上場株式のIPOをオンチェーン化する制度は整っていない。同社は今後の展望として上場株式や国債のトークン化を挙げており、アメリカで枠組みが機能すれば、国内の議論を後押ししそうだ。
|文・編集:井上 俊彦
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