・火曜日に発表される米消費者物価指数(CPI)は、今週の世界市場の地合いを大きく左右するとみられる。市場参加者は、インフレ指標が米連邦準備制度理事会(FRB)の高金利長期化姿勢を後押しする内容になるかを注視している。
・ポリマーケット(Polymarket)とKalshiの予測市場では、6月のFRBの政策判断に関連する賭け金が2500万ドルを超えた。暗号資産に親しむトレーダーの間で、マクロ指標への関心が高まっていることを示している。
・ビットコイン(BTC)は8万2000ドルの抵抗帯を下回る水準にとどまっている。ドル高観測や、原油価格に連動したインフレリスクの上昇が、主要マクロイベントを前にBTC価格の方向感を左右し続けている。
米CPI週を前に、FRB判断をめぐる予測市場の賭け金が2500万ドルを突破
今週最大のマクロ材料は、火曜日に発表される4月の米消費者物価指数(CPI)だ。6月のFRBの金利政策をめぐる市場の見方に、大きな影響を与えると予想されている。
市場では、継続する原油価格ショックに関連したエネルギー価格とサービス価格の上昇を主因に、インフレ圧力は高止まりするとみられている。市場予想では、総合CPIは前年同月比3.7〜3.8%の上昇となり、前回の3.3%から加速すると見込まれている。

食品とエネルギーの価格変動を除いたコアCPIは、前月比0.4%上昇が予想されている。これは、食品・エネルギー価格の変動を除いたインフレの粘着性を測る指標として、政策当局者が重視する数値だ。
CMEのFedWatch Toolの現在の数値では、FRBが次回会合で政策金利を据え置く確率は93.8%と示されている。一方、暗号資産関連の予測市場では、さらに強い見方として、再度の据え置き確率を97%と織り込んでいる。

5月11日月曜日時点で、6月のFRBの金利判断に連動する契約には、Polymarketで2250万ドル、Kalshiでさらに500万ドルの賭け金が集まっている。暗号資産に親しむトレーダーの間で、米マクロ指標への関心と感応度が高まっていることを反映している。
ドル高を促す動きが、BTCの上抜け期待を弱める
米国とイランの対立が続くなか、主要なマクロ材料に対するBTCの需要構造は大きく変化している。BTCは原油価格との相関を強める一方、米ドル指数(DXY)との関係は、5月初旬の0.40近辺の正の相関から、マイナス0.65付近の逆相関へと転じている。

このため、米ドル高につながる動きは、BTCにとって弱気材料となる可能性がある。
Yahoo Financeのデータによれば、米ドル指数(DXY)は月曜日に98で寄り付いた。今週のCPIが市場予想を上回れば、FRBの高金利長期化姿勢が強まり、ドル建て預金や米国債市場への資金流入を促す可能性がある。

先週金曜日の米雇用統計は、すでにこの関係性を示していた。非農業部門雇用者数の伸びは市場予想を約86%上回ったものの、製造業雇用は小幅に弱含んだ。これにより、原油高とサプライチェーンの混乱が工業活動を圧迫し始めているとの懸念が強まった。市場がインフレリスクを織り込み直すなか、BTCは発表直後に一時8万ドルを割り込んだ。
CPI以外にも、トレーダーは今週いくつかのマクロ材料を注視している。火曜日に発表されるオーストラリアの2026〜27年度連邦予算は、地域の財政見通しや資源国通貨に影響を与える可能性がある。
今後の利上げや円政策をめぐる手がかりとして、日銀の「主な意見」が注目される。金曜日には、米消費者心理指標の速報値も発表される。エネルギー価格の上昇が家計の景況感やインフレ期待にどのような影響を与えているかを測る材料となる。
先行きについては、根強いインフレ懸念がFRBの高金利維持姿勢を支え、ドル高を後押しし続けている。現在の相関関係に沿えば、ドルがさらに上昇した場合、BTCが8万5000ドルの抵抗帯を上抜け、それを維持するのに十分な新規資金を呼び込むことは難しくなる可能性がある。
FRBの政策判断への注目が高まっているため、インフレ指標の上振れや中央銀行関係者のタカ派的な発言があれば、BTC価格は日中に急激な変動を見せる可能性がある。先週金曜日の雇用統計発表後に一時8万ドルを割り込んだ動きと似た展開もあり得る。
今週のBTCテクニカル分析
BTCは、心理的節目である8万ドルを上回ったまま新たな取引週を迎えた。先週金曜日の米雇用統計を受けた変動のあと、8万2000ドルの抵抗帯付近では何度も上値を抑えられている。
BTCは週明けに8万700ドル超で取引を開始し、20週指数平滑移動平均線(EMA)の約7万8620ドルを大きく上回る水準で値固めしている。この20週EMAは、2026年第1四半期の多くの期間で抵抗線として機能していたが、現在は短期的な主要支持帯へと転換している。
MACDヒストグラムは複数週連続でプラスに転じており、年初から続いた弱気サイクルの後、強気の勢いが増していることを示している。MACDライン自体もシグナルラインを上回る方向に交差しており、一般的には買い手優勢の確認シグナルとみなされる。

ただし、現在の上昇はマクロ経済データに対して非常に敏感な状態にある。
火曜日のCPIが市場予想並み、または予想を下回る内容となれば、市場は原油高が続くなかでもインフレ圧力が安定しつつある証拠と受け止める可能性がある。
その場合、米ドルは弱含み、米国債利回りへの上昇圧力も和らぎ、株式市場や暗号資産市場全体でリスク選好が回復する可能性がある。
このシナリオでは、BTCは直近の主要抵抗帯である8万2700ドルを明確に奪回する可能性がある。この水準では、20週平均線が100週平均線を下回るデッドクロスを形成している。
反対に、CPIが市場予想を上回る、またはFRB高官からタカ派的な発言が出た場合、高金利が長期化するとの見方が強まる可能性がある。
その環境下で、7万8600ドル付近の20週EMAを維持できなければ、BTCは7万5000ドルを再び試す展開になり得る。この水準は、米国とイランの対立が激化して以降、市場の下値として機能してきた。



