暗号資産規制団体のトップは、なぜ今「軸足を移す」のか──JVCEA小田氏の真意に迫る【取材】

日本暗号資産等取引業協会(JVCEA)の代表理事を務める小田玄紀氏が4月13日、自身のnoteで「株式会社日本経済財政再生機構」というシンクタンクの設立と、徐々に活動の軸足を移していく方針を表明し、業界内で大きな注目を集めている。

暗号資産の規制を資金決済法から金融商品取引法(金商法)へ移行する法案はすでに国会に提出されており、成立を待つばかりとなっている。

今後、金商法下の自主規制団体としてJVCEAにはこれまで以上に多くの役割が求められるが、なぜこのタイミングで新組織の活動に「軸足を移していく」のか。そして、今後のJVCEAの舵取りはどうなるのか。

NADA NEWSは小田氏に、その真意を聞いた。

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──このタイミングで新たなシンクタンク構想を発表した経緯を教えてほしい。

小田氏: タイミングに関して言えば、企業は基本的に6月に株主総会や体制変更があります。その意味で、今後の人事体制などを表明する時期としては、むしろ今が適切なタイミングかなと思っています。

──構想自体は、いつ頃から描き始めたのか。

小田氏: 昨年の12月です。金融審議会が終わり、資金決済法から金商法に変わる可能性が見えてきたタイミングでした。

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私がこの暗号資産という業界に関わって約10年になりますが、「10年で変えることの目処が立った」と感じたんです。これから次の10年間、何をやっていこうかと考えたときに、やはり違う形で日本に貢献したいと思ったのが一番大きな理由ですね。

編集部注:小田氏はコラムの中で、2002年に「社会起業家」、2003年に「スタートアップ支援」、2011年に「事業再生」、2016年に「暗号資産」と、約10年単位で新しいスタンダードを創り出してきた経歴を振り返り、『10年間で社会は変えられる』という確信から今回の新組織設立に至ったと明かしている。

<小田氏のnoteから>

──株式会社日本経済財政再生機構は、具体的に何をする組織なのか。

小田氏: 一見すると、暗号資産業界の方からすれば、私が暗号資産のことしかやっていないように見えるかもしれません。

しかし実際のところ、私の活動全体において、暗号資産に関わっている時間は全体からすると15%程度です。これまでも半導体戦略をどうするかを考えてきましたし、自身で電力事業の立ち上げなども行ってきました。

今回のシンクタンクは、これまでやってきたことを「これからより本格的にやっていく」という位置づけです。

──今の政治的な運用や体制に、問題意識を持っているということか。

小田氏: 現状の法律改正プロセスを見ると、国や役人、国会議員の方たちが新しく法律を改正する際、実際のマーケットがどうなっているかをちゃんと踏まえないで作ってしまうケースが結構あると思うんです。

今回の暗号資産では、我々は「マーケットの実態はこうなっている、本質的な課題はこういう課題があるからこうして欲しい」というのを、政府や当局に対して言ってきました。

それと同じように、国の法律を変えるときに「この産業にはこういう課題があるからこうやっていこう」と、よりマーケットに合致した形で改善してもらう。そういう役割に自分がなっていければなというところです。

──株式会社という形態だが、政策提言を通じて誰に何を販売するビジネスモデルなのか。

小田氏: ビジネスモデルは、ないんですよ(笑)。単純に「これからの日本をどうしていこう」ということを検討する場なので、収益を上げるための組織ではありません。このシンクタンクで金儲けをしようとは全く考えていません。

これまでも様々な分野や様々な領域で一緒に社会を変える取組みをしてきた仲間がいるので、そのような人たちと連携して動いていきます。また、短期的には顧問やアドバイザーなどもいくつかの企業に対してはやっていこうと考えています。

編集部注:小田氏は成長産業として「コンテンツ産業、海洋資源開発、宇宙産業、核融合、小型原子炉、都市型観光産業、暗号資産市場、予測市場、蓄電池産業、半導体産業、生成AI産業、サイバーセキュリティ、オンチェーン市場、創薬産業」などを列挙し、適切なルール整備により国家の投資不要で産業開発が可能だと提言している。

──暗号資産に関連する活動は全体の15%程度とのことだが、これからのJVCEAの会長職としての関わり方はどうなるのか。

小田氏: JVCEAの会長職は無報酬の非常勤職になります。独立性の観点からも会員企業に属する者が関わることは限定的になるべきです。そのため、今でも平均すると大体15%ぐらいの時間を使ってやっている状況ですし、それはこれからも変わらず対応可能だと思っています。

また、今後のJVCEA会長については、6月に開かれる定時社員総会とその後の理事会で決まることです。私が対応した方が良いということであれば、そうなるかもしれませんが、あくまでも要請があれば対応させて頂くということになります。

──NADA NEWSのインタビューで「JVCEAの組織体制を今後2年間で倍以上にしていく」と語っていた。こちらの進捗はどうか。

小田氏: 3月末に会員向けに「こういう方針で行く」というものを共有させていただき、新年度の予算に関しても承認をもらいました。全体の予算が倍になるという点は会員企業の皆さんにも同意いただいたことなので、これからは淡々とそれを進めていくという状況です。

第三者による中立的な審査委員会を作っていくという方向性も、私が会長になるならないに関係なく既定路線としてやっていくと思います。

編集部注:小田氏は今年1月に掲載されたNADA NEWSのインタビューにおいて、金商法移行に伴う役割増大を受け、「現在の年間予算4億円、職員数32名という規模を、今後2年間で倍以上の体制とし、経営管理態勢を抜本的に強化する」と語った。

──金商法移行に伴う税制改正(分離課税化)について、現状のスケジュール感では2028年になる。新しいシンクタンクから、この時期を前倒しするような提言を行う可能性はあるか。

小田氏: JVCEAはあくまでも認定自主規制団体です。協会側から「税制改正の時期を前倒ししてくれ」と提案するのは、不適当かなと思っています。

それはやはり国が考えるべきことであり、自民党の中でそういった声が沸き起こって、自民党や政府が判断すべきことです。また、私が現在協会の会長を務めている以上、新しいシンクタンクの立場から言うのも今は少し違うと思っています。

ですから、もしそのようなことを進めたいと考えるのであれば、NADA NEWSのようなメディアが発信をして、「前倒しした方がいいのではないか」と自民党の議員先生などに思わせるような世論を作っていくのが、本来の筋だと思っています。

編集部注:金商法が2027年に施行される場合、税制改正のタイミングは原則としてその翌年の1月1日(2028年)となる。▶関連記事:【スクープ】暗号資産、分離課税施行は「2028年1月」か

──SBIグループの全役職から退任される。今後、SBIとの関わりは区切りをつけるのか。

小田氏: 当然のことながら、今後場合によって一緒にやっていくことも出てくるかもしれません。現段階で具体的に決まっていることは一切ありませんので、これから一回区切りをつけて、また検討していくことになります。

編集部注:SBIホールディングスは4月16日、小田氏が常務執行役員および関連子会社(SBI VCトレード等)の全役職を退任する人事を発表している。

<SBIホールディングスから>

──最後に、小田氏が掲げる「日本のGDP1000兆円」という国家目標において、暗号資産やWeb3業界はどれくらいのポテンシャルを占めると考えているか。

小田氏: 正直に言うと、日本のGDPという観点では、暗号資産の直接的な貢献割合はあまり多くありません。

実際問題として、暗号資産は金融商品、金融アセットクラスになりつつあります。日本のGDPと金融商品では位置づけのカテゴリーが異なるため、暗号資産そのものがGDPに大きく影響するわけではないのです。

しかし、GDP1000兆円という観点だけでなく、日本の強みは「日本国民の金融資産」が大きな役割を果たしている点にあります。

その意味で、暗号資産を通じて日本の金融資産が増えることは、結果的にそれが日本の経済成長に繋がっていくことになると考えています。

編集部注:日本のGDP世界シェアは1994年の17.8%(2位)から直近では4%まで減少。世界全体が約3.75倍成長する中、日本だけが取り残されている。小田氏は「名目GDP1000兆円」を実現させることで、実質130~145兆円の国家収入を確保し、日本経済と財政を再生できるとの見立てを示している。

<小田氏のnoteから>

|インタビュー・文:栃山直樹
|トップ写真:昨年11月のブロックチェーン議連で説明する小田氏(撮影:NADA NEWS編集部)

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