● 地政学的緊張の高まりを背景に、ビットコイン(BTC)と原油価格の相関が今週強まっている。
● 戦火による避難資金の移動や中央集権型取引所(CEX)のリスク回避(デリスキング)を受け、BTC取引所残高は約1万BTC減少。
● 6万9000ドル近辺に過剰レバレッジのショートポジションが集中し、流動性低下の中で踏み上げリスクが拡大。
戦争プレミアム拡大で原油との相関が強まる
月曜日のビットコイン(BTC)価格は、6万7700ドル〜6万8800ドルの狭いレンジで推移した。米・イランの緊張が激化する中でも、重要なサポートラインである6万5000ドルを堅守した。
世界的に株式市場が軟調となる中、BTCはイランへの空爆報道を受けて、一時は7%急落し6万3000ドルまで下落。しかし数時間以内にV字回復を見せ、6万9000ドル手前で上値を抑えられた。
一方で、ホルムズ海峡の封鎖懸念から原油価格は13%以上急騰し、1バレル80ドルに接近。安全資産とされる金(ゴールド)も5400ドルを超える新高値を記録している。

コモディティ市場のラリーに伴い、ビットコイン市場にも安全資産としての需要が流れ込んでいる。TradingViewのデータによれば、WTI原油(スポット)とビットコインの相関係数は、先週末の-0.37からプラス0.28へと急反転した。
トランプ米大統領は対イラン作戦が「約4週間」続くと発言。この期間、BTCが6万5000〜6万8000ドルを維持できれば、米FRBのハト派転換や日銀のリフレ政策期待を背景とした強気シナリオが勢いを増す可能性がある。
取引所残高減少、イラン国内の資金避難とCEXのリスク回避
イラン情勢はBTCの短期需給にも影響を及ぼしている。過剰なレバレッジをかけたショート勢を重大な清算リスクにさらしている。
オンチェーン分析企業CryptoQuantのデータによれば、BTCの取引所残高は2月27日の276万BTCから、足元では約275万BTCへ減少。約1万BTC(現在価格で約6.8億ドル相当)の流出となった。
Chainalysisの直近レポートは、通貨不安への備えとしてイラン国内で個人ウォレットへのBTC引き出しが増加していると指摘。
同時に、地政学的ストレス下では、投資家は中央集権型取引所(CEX)への預け入れを「カウンターパーティ・リスク(取引先リスク)」と見なすようになっている。FATF(金融活動作業部会)による監視対象地域の拡大など、規制環境が厳格化していることも、投資家のセルフカストディ(自己管理)移行を加速させている。
パニック的な引き出しは恐怖の表れではあるが、コールドストレージへの移動は「売り圧力の減少」という副次的な効果を生んでおり、これが6万5000ドルのサポート維持の一因となっている。
取引所残高の減少がベアトラップを示唆、6万9000ドル付近に3億6700万ドルのショートポジションが集中
デリバティブ市場では、戦争報道を受けた6万3000ドルへの急落局面でショートポジションが急増。アクティブなショート建玉は15億ドル規模に膨らみ、6万ドル割れを見込むポジションが積み上がった。
しかしその後の反発と取引所残高減少により、6万9100ドルを超えれば約3億6700万ドル相当のショートが清算されるリスクが浮上している。
データ提供元のCoinglassによる清算ヒートマップでは、6万9045ドル付近にショート清算が集中している。このゾーンを安定的に突破すれば「ショートスクイーズ(踏み上げ)」が発生し、売り勢力の買い戻しがさらなる上昇圧力を生む可能性がある。
一方、ロングポジションも約14億ドル規模に拡大しており、弱気優勢は徐々に縮小しつつある。

原油高が続き、マクロ的なヘッジ資金の流入が継続すれば、ビットコインは米株式市場から離れ、コモディティとしての性質を強めていくだろう。
ただし、地政学的緊張が緩和し原油が急反落した場合、ビットコインもマクロ的な買いを失うリスクがある。その際、注視すべきサポートレベルは6万6000ドル付近だ。ここには現在、±20%価格帯内で最大規模の7億6500万ドル規模のロングポジション(買い)が集中している。
