暗号資産(仮想通貨)の規制を金融商品取引法(金商法)の対象とする改正法案が7月15日、参議院本会議で可決され、成立した。
業界や投資家にとって、暗号資産が正式に「金融商品」として認められる本法案の成立は、約8年越しの悲願が達成された形となる。
日本において金商法適用の議論が本格化したのは、2018年のことだ。
同年1月に発生した約580億円相当の暗号資産が流出したコインチェック事件を一つの契機としつつ、当時急拡大していたICO(Initial Coin Offering:新規暗号資産公開)や証拠金取引といった投機的な動きへ対応するため、金融庁が「仮想通貨交換業等に関する研究会」を開催し、まずはデリバティブ取引等への部分的な金商法適用が進められた。
その後、米国での暗号資産ETF(上場投資信託)承認や機関投資家の参入など、暗号資産が世界的な投資対象へと変貌を遂げるなか、日本でもそれに即した市場の透明性確保と投資家保護ルールの整備が求められてきた。
本法案成立に至るまでの具体的な経緯については、記事末尾の表「暗号資産、金商法移行への道のり」にまとめているので参照してほしい。
なお、金融商品として扱われる暗号資産の具体的な範囲や、新しいトークン規格への対応などは、今後の内閣府令によって詳細が定められることとなる。
ただし、厳しい開示義務等のルールが実際に発動するのは、主に国内の取引所が一般投資家向けに暗号資産を取り扱うケースとなる。
改正法は近日中の公布を経て、公布日から1年以内に施行される。
金商法移行で、何が変わるのか
暗号資産が有価証券とは異なる新たな金融商品として位置づけられることに伴い、主に以下の3点が大きく変わる。
- 情報公表の義務化と投資上限の設定
- 特定暗号資産(IEOトークンなど)の発行者や、暗号資産取引業者に対し、あらかじめ性質や供給量等の基本情報の公表が義務付けられる。
- 監査法人の財務監査がない特定暗号資産の募集には、収入等に基づく投資上限(例:上限200万円など)が設定される。
- 「暗号資産取引業者」への業規制の強化
- 名称が変更され、第一種金融商品取引業と同等水準の規制が適用される。
- 不正流出に備えた顧客への補償原資として「責任準備金」の積み立てが義務化される。無登録業者への罰則も大幅に引き上げられる(拘禁刑10年以下など)。
- インサイダー取引規制の創設
- 現行法では直接の規制がなかった暗号資産特有のインサイダー取引が禁止される。
- 発行者の解散、取扱開始・中止、大量売買などの「重要事実」を知る関係者が、情報公表前に売買を行うことが禁じられ、違反者には5年以下の拘禁刑や課徴金が科される。
分離課税適用が確定
今回の法案成立により、関連団体や投資家から長年要望されてきた暗号資産の税制改革について、その適用が正式に確定した。
すでに今年3月末に成立済みの「改正所得税法」により、暗号資産を対象とした税率20%の申告分離課税への移行と、損失の3年間繰越控除の導入自体は決定していた。
しかし、この新税制が実際に適用されるための前提条件が、「金商法における暗号資産の金融商品化」とされていた。本日の金商法改正案の成立により、この条件がクリアされたことになる。
申告分離課税の実際の適用開始は、「金商法改正の施行日の属する年の翌年1月1日」と規定されている。
仮に改正金商法が2027年内に施行された場合、2028年1月1日以降の取引から、これまでの総合課税(最大約55%)から申告分離課税へと移行する。
◆暗号資産、金商法移行への道のり
| 2018年4月 | 金融庁の研究会が開催され、暗号資産デリバティブやICOへの金商法適用に関する議論が本格化する。 |
| 2019年5月 | 資金決済法等の一部改正法が成立。暗号資産デリバティブ取引と投資型ICOが金商法の対象となる。 |
| 2020年5月 | 改正法施行。「仮想通貨」から「暗号資産」へ呼称が変更され、金商法の一部適用が開始。 |
| 2022年12月 | 令和5年度税制改正大綱にて、自社発行・保有暗号資産の期末時価評価課税の見直しが決定。 |
| 2023年4月 | 自民党Web3PTが「Web3ホワイトペーパー」を公開。投資対象としての法制整備や分離課税導入を提言。 |
| 2024年1月 | 米国での暗号資産ETF承認を機に、金融商品としてのルール整備要望が本格化する。 |
| 2025年12月 | 金融審議会の報告書にて、暗号資産規制の金商法移管方針が提言される。 |
| 2026年3月末 | 所得税法等の一部改正法が成立。金商法移管を前提とした申告分離課税の枠組みが整備される。 |
| 2026年4月10日 | 金融庁が暗号資産の金商法移管を含む改正法案を閣議決定・国会提出。 |
| 2026年6月11日 | 同改正法案が衆議院本会議で可決。 |
| 2026年7月15日 | 同改正法案が参議院本会議で可決・成立。金商法への移管が正式決定。 |
|文:栃山直樹
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