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老舗通販企業の日本直販は6月3日、同社総合プロデューサーの秋元康氏が手がける「AYET(Akimoto Yasushi Entertainment Token)プロジェクト」の一環として、「ショートドラマ企画コンテスト」の実施を発表した。
10日に開催される国際短編映画祭「SSFF & ASIA 2026」と連携し、製作資金1000万円を拠出するという。
一見すると華やかなエンターテインメントの話題だが、NADA NEWSの独自取材により、その裏で着々と進行する「実需型トークン」の構築と、法改正を見据えた上場戦略の輪郭が明らかになった。
「AYET」とは
前回の単独インタビュー(2025年12月)から半年が経過しているため、改めてプロジェクトの概要を整理しておきたい。
AYETは、2025年11月に秋元康氏が日本直販及びUCLA(米カリフォルニア大学ロサンゼルス校)ブロックチェーン開発チームからのオファーを受諾する形で発表された。
著名人を起用したエンタメ企画に映るが、その実態は創業49年を誇る日本直販の巨大なリブランディング戦略である。
同社は約1200万人の顧客基盤を抱える。この基盤に対し、ECサイトでの決済やイベント優待に使えるユーティリティトークンを浸透させる狙いだ。単なる投機目的やファン向けアイテムに留まらず、独自の経済圏構築を目標としている。
なお、AYETは、日本直販の子会社を通じて発行される予定である。
プロ向けトークン販売も
今回、そのビジネスの骨格となるホワイトペーパー(WP)が既に策定を完了していることが判明した。現在は、今後の対外的な開示方法や更新内容について関係各所と確認を進めている段階だという。
暗号資産プロジェクトにおいて最大のハードルとなる資金調達についても、具体的なタイムラインが設定されている。
取材への回答によると、AYETの販売計画には「適格機関投資家向け販売(プロ向けトークン販売)」、取引所を通じて新規トークンを発行・販売する「国内IEO(Initial Exchange Offering)」、または既存トークンの「国内取引所上場」、「グローバル上場」という複数段階のスキームを検討と記載されている。
国内外での上場については、「2027〜2028年を目処」に検討を進めているという。
金商法改正のタイミング
この「2027〜2028年に上場」という計画は、日本のWeb3規制のタイムラインと照らし合わせると非常に興味深い。
2026年4月、金融庁は暗号資産取引を資金決済法から金融商品取引法(金商法)へ移管する法案を国会へ提出した。この法案において、IEOなど発行者がいる暗号資産は「特定暗号資産」として位置付けられる。
これまでプロジェクトの理念や計画を示す側面が強かったホワイトペーパーは、法的な情報開示文書となる。
虚偽記載等があった場合、発行者には最大で10年以下の拘禁刑や、投資者に対する過失責任など、株式上場並みの極めて重い罰則と損害賠償責任が科される見通しだ。
また、監査法人等による財務監査が行われていない場合、投資者の投資上限が設定(最大50万円等)されるなど、資金調達のハードルは劇的に上がる。
金融庁の法案説明資料によると、これら「暗号資産に係る規制の見直し」の施行期日は、公布後1年を超える一定の準備期間を経た後になることが示されている。
つまり、順調に法案が成立すれば、新体制への移行は「2027年中〜後半」となる公算が大きい。
この2027〜2028年というタイムラインが実現すれば、新体制下における「国内上場の第1弾」となる可能性もゼロではない。法環境の過渡期と新ルールの施行時期を踏まえた、現実的なシナリオと言えそうだ。
ただ、同社は「現時点では調達フェーズの詳細や実施状況について、個別具体的な進捗を公表できる段階ではなく、国内IEOについてもあくまで選択肢の一つであって決定したものではない」と念を押している。
「今後、法令・規制対応、関係各社との協議、販売スキームの確定状況に応じて、開示可能な情報から順次発表していく」としており、現段階での公式な言及は避けている。
Polygon採用とガスレス決済
WPに記載されている技術仕様も判明した。
現在、独自トークン「AYET」は、Polygonネットワーク上のERC-20トークンとして設計されている。スケーラビリティや安価な手数料、既存DAppsとの親和性を評価しての採用となった(※今後の検証等により変更の可能性あり)。
一般ユーザーが暗号資産特有のガス代(ネットワーク手数料)を意識せずに利用できるよう、企業側が手数料を負担するなどの「ガスレス化」の仕組みも視野に入れている。
コンテスト詳細は6/10アワードで
今回発表された「ショートドラマ企画コンテスト」は、将来的なトークン経済圏の構築に向けた布石として位置づけられている。
拠出される1000万円について、現段階で特定のWeb3調達資金を充当するとは断定していない。目下のところ、決済システム等との直接的な連動も予定していないという。
これは、秋元康総合プロデューサーの提言を反映したクリエイター発掘・IP創出の「先行事例づくりの試み」であるためとしている。ここで得られた知見を、将来的なプラットフォーム構築へフィードバックしていく構えだ。
なお、リリースで言及されたSSFF & ASIAのプラットフォーム「LIFE LOG BOX」との連携についても、システム的な直結ではなく、クリエイター育成という「コンセプトにおける協調・連携」としている。
今回の取り組みの詳細が発表される「SSFF & ASIA 2026 アワードセレモニー」は、6月10日にLINE CUBE SHIBUYAにて開催される。
これまで国内のIEO案件は上場後の価格低迷が相次ぎ、市場からの信頼を獲得できているとは言い難い状況にあった。
暗号資産が金商法下へと移行し、発行体への責任や監査が株式上場並みに厳格化される中、日本直販の描く「実需を伴う決済エコシステム」は、新たな規制環境においてひとつの試金石となる。
明言こそ避けているものの、この次世代ルールの下で彼らがどのような選択を下すのかー。その行方を追っていく。
|文:栃山直樹
|画像:Shutterstock



