「全部トップにしていく」──SBI北尾氏が語った金融の構造競争【編集長コラム】

ゴールデンウィークの合間の5月1日、SBIホールディングスは重要な発表を立て続けに行った。

ビットバンクの子会社化、BTCなどが貯まるクレジットカードの発行、Visaの日本法人との協業検討に向けた基本合意書、さらに約3時間にわたった北尾吉孝会長兼社長の決算説明では、JPYCの買収を検討したことも明かされた。

1つずつでも十分に大きなニュースだが、一本の線で結ぶと見えてくるのは、より大きな構図──「新しい金融に必要なスタック(決済や融資などの機能を層ごとに分けて組み合わせる仕組み)を誰が握るのか」という競争軸だ。

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暗号資産取引業の再編が本格化

ビットバンクの子会社化は、日本の暗号資産業界の再編を象徴する動きだ。

金商法移行やETF解禁が迫るなか、暗号資産ビジネスは証券ビジネスと密接につながり、銀行や証券会社を持つ企業グループに収斂していく可能性が高い。

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北尾氏はビットバンクの子会社化によって、SBIグループの暗号資産の預かり残高は「1兆2000億円で業界トップとなる。あらゆる事業で全部トップにしていくことが僕の基本姿勢」と述べた。

JPYCは“別路線”ではなく射程圏内

JPYCをめぐる発言も示唆的だ。

SBIは、渡辺創太氏率いるStartale Groupと共同して日本初となる信託型の円建てステーブルコイン「JPYSC」の発行を目指している。すでに流通している海外発行型のUSDC、資金移動型のJPYCと違って、いわゆる「100万円制限」を受けず、企業間決済やクロスボーダー決済での活用が期待されている。

北尾氏は、JPYCについて「チャレンジしたことは立派だと思う」と述べつつも「我々が動き出したら潰れてしまうのではないか」と考え、買収を持ちかけた。だが価格が折り合わずやめたと述べた。

北尾氏のストレートな発言を聞くと、この先、JPYCとJPYSCがシェア争いを繰り広げる姿も目に浮かぶ。

だが一方で、JPYCとSBIは、ステーブルコイン大手Circle(サークル)を介して間接的なつながっている。JPYCはサークルの出資を受け、SBIはサークルと合弁会社を設立している。

JPYCとJPYSC(SBIは第1四半期での発行を目指している)は、一面ではシェア争いをしつつ、別の一面では役割分担をして、ともに日本円建てステーブルコインの普及を推し進めるだろう。名前もロゴも良く似た2つのステーブルコインが相乗効果を発揮して、拡がっていく様子を見てみたい。

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Visaと連携、将来的には激突か

そして今回、もうひとつ見逃せないのが、Visaとの基本合意だ。クレジットカード発行のニュースの影に隠れてしまったが、SBIホールディングスとビザ・ワールドワイド・ジャパンは1日、「デジタル金融および決済分野における協業の可能性を検討することを目的とした基本合意書」を締結した。

内容自体は、まだスタートラインと言えるものだが、意味は小さくない。

北尾氏はSBIグループの「三大戦略目標」のひとつとして、「オンチェーン化に向けた組織変革を断行し、世界に先駆けて次世代の金融サービスを提供」を掲げている。

そのために、ステーブルコイン「JPYSC」と独自のレイヤー1ブロックチェーン「Strium」を開発し、「デジタル金融領域では垂直統合戦略を取ることで競争優位性を発揮」すると述べた。

だが、それだけでは、オンチェーン領域で先行し・突出することはできても、一般に拡げるには不十分。既存の決済ネットワークとの接続は不可欠だ。

Visaは、世界中に加盟店ネットワークを持つ既存決済の基盤であり、まさにその役割を担う。オンチェーン金融を既存の経済圏に接続するうえで、重要な回路となる。

しかし一方で、Visaはステーブルコインという新たな決済インフラを自らに取り込もうとしている。

オンチェーン金融と既存金融大手は、現段階では勢力拡大を目指して手を結びつつも、いずれ正面からぶつかり合う時が来るのではないか。そんな予感がしている。しかも、そう遠くない未来ではないだろうか。

既存金融も動き始めた

こうした動きは、SBIだけのものではない。既存金融もまた、デジタル金融への対応を加速させている。

大和証券グループ本社は4月27日、オリックス銀行を買収すると発表した。リリースには「オンチェーン金融」への直接的な言及はない。

だが、オリックス銀行はステーブルコイン発行に向けた取り組みを発表しており、大和証券は国内セキュリティトークン(デジタル証券)市場のキープレイヤーだ。

証券会社が銀行機能を強化する動きは、SBIと同様に「金融スタックの内製化」を志向するものといえる。

「金融の新しいOS」を誰が握るのか

SBI北尾氏が狙っているのは、取引所のシェアでも、単一のステーブルコインのシェアでもない。金融スタックそのものの垂直統合だ。

取引所、ステーブルコイン、決済、資産運用、そしてAI。それらを接続し、「オンチェーン上で完結する金融」を構築する。

そして、SBIグループが持つ既存の金融エコシステム(SBI証券やSBI新生銀行など)と融合させ、さらにVisaとの連携によって、オンチェーン金融を既存の経済圏と強固に結びつけていく。

伝統的金融の領域では、既存大手に対する挑戦者ネット証券のパイオニアとして既存証券に挑み、また「第4のメガバンク構想」を掲げて3メガバンクに挑んできたSBIは、「オンチェーン金融」という新たな領域では、先行ポジションを築きつつある。

今回の一連の発言と発表は、日本のデジタル金融が「再編」の段階から、「構造競争」の段階へ移行したことを示している。

|文・撮影:増田隆幸

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