受け入れるか、取り残されるか──ステーブルコインが変える金融の構造:a16z

米ベンチャーキャピタルのAndreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ、a16z)は4月28日、「The new stack for global finance: Stablecoins edition」と題する論考をXで公開した。

同社は、金融システムが「新しいインフラの上で再構築されつつある」とし、その変化は多くの人が認識するよりも速く進んでいると指摘する。 

ステーブルコインはもはや暗号資産取引の補助的ツールではない。新たな金融インフラそのものになりつつある──これが今回の論考の出発点だ。

ステーブルコインは「通貨」ではなく「インフラ」へ

a16zは、ステーブルコインの進化を次のように整理する。

● 取引ツール(crypto取引の橋渡し)
● 価値保存(デジタルドル)
● 金融インフラ(現在)

ステーブルコインは、日本ではまだ普及が始まったばかりだが、グローバルでは決済や送金にとどまらず、企業の資金管理やクロスボーダーでの資金移動の基盤として使われ始めている。

a16zは、こうした変化を単なるユースケースの拡大ではなく、金融システムの構造変化として捉えている。

金融は「スタック」で構築される

〈a16zが提示した市場構造図。ブロックチェーンからアプリケーションまで、金融機能がレイヤーごとに分解されている〉

今回提示された「market map(市場構造図)」の核心は、金融を機能ごとのレイヤーに分解した点にある。

主なレイヤーは以下の通りだ。

● ブロックチェーン(基盤)
● ステーブルコイン発行
● 流動性・FX
● アプリケーション(ネオバンク、ウォレット)

さらにa16zは、銀行とオンチェーンを接続する「bank connectivity」というレイヤーの重要性も指摘している。こうした構造は、従来の金融モデルとは根本的に異なるものだ。

従来の金融は「銀行」が中心的な位置を占めていた。しかし今後は、機能ごとに分解されたスタック(決済や融資などの機能を層ごとに分けて組み合わせる仕組み)の組み合わせで金融が構築されるようになりつつある。

a16zはこれを、新しい形のBaaS(Banking as a Service)と位置付ける。従来のBaaSが銀行ライセンスのもと(あるいは、銀行ライセンスを取得し)、新たなサービス・UIを既存システムに接続するものだったことに対し、今後は、

● オンチェーン基盤
● セルフカストディ
● API的な金融機能の統合

によって構築される点が決定的に異なる。

結果として、かつては各国の銀行ライセンスやパートナーが必要だった金融サービスが、技術スタックの組み合わせによって提供可能になりつつある。

次の戦場は「信用(Credit)」

論考が最も強く示唆しているのはここだ。ステーブルコインが拡大すると、必然的に次の問いが生まれる。

「その資金をどう運用するのか」

企業は運用利回りを求め、プロトコルは流動性を必要とし、ユーザーは借入を求める。

その結果として、オンチェーンの信用市場(credit market)が形成されるという。これは、初期のDeFi(分散型金融)のような投機的な貸し借りではなく、

● 実体経済に紐づく融資
● 売掛債権やRWA担保
● 運転資金

といった、より伝統的金融に近い構造になると述べている。

既存プレイヤーも「スタック争い」に参入

こうした構造変化に対し、既存企業も動きを活発化している。例えば、決済大手のStripe(ストライプ)は、ステーブルコイン基盤のBridge、ウォレットを手がけるPrivyを買収。Mastercard(マスターカード)もステーブルコイン基盤のBVNKを買収した。

いずれも共通するのは、スタックの重要なレイヤーを押さえにいっている点だ。

これは、競争の軸が、ステーブルコインそのものやアプリではなく、「インフラのどこを支配するか」に移っていることを示す。金融の競争軸は、通貨でもアプリでもなく、インフラのどのレイヤーを握るかへと移りつつある。

そして、a16zは、オンチェーン金融への移行についてこう結論づける。

この変化は、もはや後戻りできる段階を過ぎている。受け入れるか、取り残されるか──選択肢は、そのどちらかしか残されていない。

|文:増田隆幸
|画像:a16zのX投稿より

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