デジタル通貨とは
デジタル通貨とは、電子的に発行され、それ自体が価値の単位として流通し、価値の移転や決済に用いられるデジタル資産の総称であり、近年では新たな金融レール(インフラ)として位置づけられている概念を指す。
なお、既存の銀行預金や現金を基盤とする決済サービス(例:PayPayやSuicaなど)が既存の通貨を移動させる手段であるのに対し、デジタル通貨は、デジタル形式で直接発行・流通する通貨そのものである点に特徴がある。
法令上の統一的な定義は存在しないが、その範囲には、フィンテック企業や銀行などの民間企業が発行するステーブルコイン、既存の銀行預金をトークン化するトークン化預金(デポジットトークン)、中央銀行が発行を検討・実証する中央銀行デジタル通貨(CBDC)などが含まれる。
これらはすべて「デジタル通貨」と呼ばれる一方で、その実態は大きく異なる。民間企業・銀行・中央銀行といった発行主体の違い、価値の安定性、そして基盤となるネットワークの違いによって、役割やリスクは大きく分かれる。
その意味でデジタル通貨とは、「通貨のデジタル版」ではなく、誰の信用を基盤とした価値が、どのネットワーク上で流通するのかをめぐる次世代の金融基盤の競争と捉えるべきだろう。
デジタル通貨の主な類型と代表例
■ステーブルコイン
ステーブルコインは、裏付けとする資産の種類や有無によって、いくつかの類型に分けられる。ただし、現状で「ステーブルコイン」と言えば、米ドル、日本円などの法定通貨や、短期国債などの安定的な資産を裏付けとし、法定通貨と1対1で交換できる「法定通貨連動型」ステーブルコインを指す。
この他に、「暗号資産連動型」「アルゴリズム型」と呼ばれるものもあるが、本特集では主に「法定通貨連動型」を取り扱う。
また、国内では「法定通貨連動型」ステーブルコインを「電子決済手段」として定義しており、認可を得たものが法的に発行・流通可能となる。
現在、国内で発行・流通が可能なステーブルコインは以下の通り(2026年4月時点)。
・USDC(米ドル連動型)
・JPYC(日本円連動型)
また、リップルが手がける「Ripple USD(RLUSD)」や、SBIグループが手がける「JPYSC」が発行・流通を目指している。
■トークン化預金
銀行預金をトークン化したもの。既存の仕組みをベースとしているため、企業間決済や証券決済などの大口決済、BtoBでの活用が想定される。ただし、同一銀行の口座間を超えたやり取りには、銀行間での連携や別の仕組みが必要となる。
・JPM Coin(JPMorgan Chase)
・DCJPY(GMOあおぞらネット銀行、ゆうちょ銀行)
・トチカ(北國銀行)
■CBDC(中央銀行デジタル通貨)
国の中央銀行が発行するデジタル通貨。日本銀行のウェブサイトでは、(1)デジタル化されていること、(2)円などの法定通貨建てであること、(3)中央銀行の債務として発行されることをその定義として説明している。
本特集の対象
本特集では、法定通貨連動型ステーブルコイン、トークン化預金、中央銀行デジタル通貨(CBDC)など、決済や資金移転の“レール”として機能するデジタル通貨に焦点を当てる。
一方で、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)など、価格変動を前提とする暗号資産(仮想通貨)については、決済での活用が期待される一面はあるものの、我が国においても、その根拠法が「資金決済法」から「金融商品取引法(金商法)」へ移行することが見込まれているように、現状では主に投資資産としての側面が強く、本特集の対象外とする。


