デジタルマネーをめぐる各国の戦略は、鮮明になりつつある。米国がステーブルコインの拡大を後押しする一方、欧州では“デジタルドル一強”への警戒感から、トークン化預金やCBDC(中央銀行デジタル通貨)の活用に軸足を置いている。
では、日本はどちらに舵を切るのか。
当社N.Avenueが、次世代の金融や通貨のあり方をテーマに2月24日に開催した「FUTURE OF DIGITAL MONEY ― デジタル通貨カンファレンス」で、ディーカレットDCP取締役副社長執行役員COOの平子惠生氏が「デジタルマネーの世界的な潮流」と題して講演した。
グローバルなデジタル通貨の動向を整理した上で、トークン化預金「DCJPY」を軸とする同社の戦略を語った。
コストの効率化を実現するデジタル通貨
同社は2018年、暗号資産(仮想通貨)交換業として創業。その後、デジタル通貨事業へと軸足を移し、現在は100以上の企業・団体が参加する「デジタル通貨フォーラム」の事務局を務めている。銀行や事業会社、ベンダー、地方団体などとともに、デジタル通貨の活用に向けた検討を進めている。
同社の事業は「通貨のデジタル化(トークン化預金)」「物流・商流のデジタル化(ビジネスデータのオンチェーン化)」「価値のデジタル化(さまざまな価値のトークン化)」の3本柱で構成される。これらを組み合わせることで、社会構造や商慣習の変革につなげることを基本戦略としている。
講演ではまず、平子氏がデジタルマネーという言葉の定義を整理した。
広い意味では、SuicaやPayPayといった電子マネーのほか、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)などの暗号資産も含まれる概念だが、平子氏は今回の講演の対象を「狭義のデジタル通貨」に絞った。
具体的には、CBDC(中央銀行デジタル通貨)、ステーブルコイン、トークン化預金の3つだ。これらはいずれもプログラマブルであり、暗号資産と比べて価値が安定している点が特徴だと平子氏は説明した。

続けて、国内の決済インフラにも言及。全銀ネットワークによる振込、口座振替、カード決済など、日本の決済システムは高い利便性を実現している一方で、その裏側には長年にわたり構築されてきたレガシーシステムが存在するとし、相応の運用コストがかかっていると指摘した。
そのうえで、「ブロックチェーンを活用したデジタル通貨であれば、レガシーシステムに比べてコストは相当程度安くなる」と説明。運用コストだけでなく、改修やバージョンアップを含めたトランザクションコストを大きく下げられる可能性があると語った。
どっちつかずの日本
次に平子氏は、各国のデジタル通貨戦略を比較した。世界の主要国の判断は、大きく二つの方向に分かれつつあるという。
米国では、ジーニアス法の成立を背景にステーブルコイン市場が拡大している。USDTやUSDCを中心としたドル建てステーブルコインの時価総額は急増しており、DeFi(分散型金融)や新興国でのドルベース取引が急速に広がっている。
一方、民間ベースでは、JPモルガンやシティがトークン化預金による大企業向け決済やキャッシュマネジメントのサービスを提供しており、両軸での展開が進む。デジタルドルの具体的なスケジュールは出ていないものの、フィンテック企業が中央銀行口座を開設するなど、実質的には「レディーの状態」だと平子氏は見る。
対して、欧州はトークン化預金に軸足を置く。欧州中央銀行はデジタルユーロを2029年をめどに展開する方針を示している。英国も同様にトークン化預金を推進しており、イングランド銀行はメガバンクと共同で銀行間決済の実証実験を始めた。「GBTD」と呼ばれるデジタルポンドのプロジェクトを2029年の商業化に向けて進めている。加えて、ステーブルコインの保有上限規制を導入し、ドルへのポンド流出を防ぐ姿勢も見せている。
中国はCBDCを先行して導入していたが、昨年新たに民間銀行にデジタル通貨の発行権を移管し、民間主導での普及に舵を切った。
各国による戦略の違いを示したうえで、平子氏は「ひるがえって日本は、ステーブルコインもやるし、トークン化預金もやるという状況」と指摘。「デジタル円」の導入に向け、日銀が主導するCBDCフォーラムで議論が続いているものの、明確なマスタースケジュールはまだ示されていないと説明。「どちらに舵を切るのか、まだ明確な姿勢は見えてこない状況だ」と語った。
AI時代のプログラマブルマネー
米国がトークナイゼーションに積極的な背景として、平子氏は3つの要因を挙げた。AIサービスの台頭、規制の後押し、そして技術革新である。
特に注目すべきはAIとの接点だ、と平子氏。ブロックチェーン上のデジタル通貨は「プログラマブル」であり、自動的に動かすことができる。「プログラム=AIと置き換えてもいい」と語った。
「AIが最適な資金配分を計算し、自動的に決済や送金、入金の指示を行う。これは金融市場のみならず、事業会社のオペレーションにも極めて有効だ」と続けた。

DCJPY、国際接続への戦略
平子氏は最後に、DCJPYの具体的な戦略を説明した。2025年には、トークン化預金やデジタル決済をめぐる取り組みが相次いでおり、国内外で広がる連携の動きについて紹介した。
具体的には、ゆうちょ銀行によるトークン化預金の取り扱いの検討のほか、SBI新生銀行とシンガポールの次世代決済プラットフォーム「Partior(パルティオ)」との提携による海外送金の検討が進む。また、不動産管理会社シノケングループとの口座引き落とし自動化の実証実験、セキュリティトークンのDVP決済のPoCなど、DCJPYの活用領域は急拡大しつつある。
なかでも注目されるのが、SBI新生銀行・Partiorとの連携だ。PartiorはJPモルガン、DBS、スタンダードチャータード銀行、ドイツ銀行などにトークン化預金の決済プラットフォームを提供している。DCJPYをこの国際ネットワークに接続することで、クロスボーダー決済の実現を目指すとしている。
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平子氏は「我々は未来の金融サービスとして、トークン化預金を進めている」と述べ、日本国内のみならずグローバル展開も見据えていると説明した。「今後も企業との業務提携やサービス開発に積極的に取り組んでいきたい」と語り、講演を締めくくった。DCJPYの国際接続の行方に、今後ますます注目が集まりそうだ。
|文:橋本史郎
|編集:NADA NEWS編集部
|撮影:多田圭佑
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