資産運用会社のGrayscale(グレイスケール)は、2025年12月に最新レポート 「2026 Digital Asset Outlook: Dawn of the Institutional Era(2026年 デジタル資産展望:機関投資家時代の幕開け)」 を発表し、2026年に暗号資産市場が従来の「4年周期説」を脱却し、「機関投資家主導の成熟した市場」へと構造転換する歴史的な分岐点になると予測している。
グレイスケールの予測で最も象徴的なのは、2026年前半にビットコイン(BTC)が過去最高値を更新するという強気な見通しだ。これまで市場を支配してきた「半減期から1年〜1年半でピークを迎える」という4年周期の法則が、今回は通用しなくなると同社は指摘する。2025年の停滞期を経て、2026年には「投機的な個人主導のサイクル」から、安定した資本が流入する「機関投資家による構造的成長」へとシフトするからだ。
グレイスケールはなぜ、2026年が「機関投資家時代の幕開け」になると考えているのか。レポートでは以下の3点を挙げている。
1つ目はマクロ経済の不安定化から来る「代替資産」としての需要だ。アメリカ経済における政府債務の増大と、それに伴う米ドルの価値下落リスクが最大の要因となり、インフレヘッジとしての「デジタルゴールド」需要が高まって、BTCやイーサリアム(ETH)が伝統的なポートフォリオにおける必須資産として組み込まれると見ている。
2つ目はアメリカにおける規制の明確化だ。グレイスケールは2026年にアメリカで超党派の暗号資産市場構造法案が成立すると予測している。これにより、銀行や資産運用会社が確信を持って資本を投入できる環境が整い、ステーブルコインの決済利用やオンチェーン証券の取引が本格化するという。
3つ目は現実資産(RWA)トークン化の爆発的成長だ。現在、世界の株式・債券市場に占めるトークン化資産の割合はわずか0.01%に過ぎない。しかし、インフラの整備により2030年までに1000倍の成長を遂げるとグレイスケールは予測している。2026年はこの「移行」の転換点となり、実利を生む分散型金融(DeFi)やインフラに資金が集中するという。
グレイスケールは、暗号資産がもはや「ニッチな投機対象」ではなく、伝統金融と深く結びついた「主要な資産クラス」へと脱皮することを強く示唆している。投資家は、日々の価格変動よりも、この構造的な変化を注視する必要があるだろう。
|文・編集:井上俊彦
|画像:Shutterstock