SEC(米証券取引委員会)は4月13日、DeFiに関連するフロントエンドやウォレットなどのユーザーインターフェース(UI)に関する見解を公表した。
見解は法的拘束力を持つものではなく、SECスタッフによる解釈を示したものだが、一定の条件を満たす場合、DeFiのUI提供者がブローカーディーラー登録の対象とならない可能性に言及した点が注目されている。
▶関連記事:米SEC、暗号資産向けUIに関する見解を公表──条件付きでブローカー登録不要の可能性
つまり、これまで曖昧だった「DeFiは規制対象なのか」という論点に対し、“設計次第で規制対象となるかどうかが変わる”可能性を示している。そして、この考え方は、日本国内のDeFi規制の方向性に大きな影響を与える可能性がある。NADA NEWSは、ブロックチェーン推進協会(BCCC)DeFi部会長で、エックスウィングループ代表の荒澤文寛氏に、SEC見解のポイントや今後の日本における規制のあり方について聞いた。
「規制の有無」から「設計」へ──DeFiにとっての転換点
──今回のSECの見解は、DeFi業界にとってどのような意味を持つのか。
荒澤氏:非常に大きな転換点だと捉えている。この声明は法的拘束力を持つ規則ではなく、SECスタッフの見解にとどまるが、それでも大きな出来事だ。これまでDeFiは、「規制されるのか、されないのか」という点が議論の中心だった。しかし今回、それが変わった。ポイントは、規制の有無ではなく、“どのように設計するかによって、規制対象となるかどうかが変わり得る”という考え方が示されたことだ。
──具体的には、どのような条件が示されたのか。
荒澤氏:大きく整理すると5つある。「カストディをしない」「投資助言をしない」「注文のルーティングや執行をしない」「手数料を中立にする」、そして「裁量を持たない」だ。ただし、これらは“最低条件”であり、形式的に満たせばよいというものではない。
もう少し分かりやすく言うと、「ユーザーの代わりに何かを決めたり、動かしたりしないこと」、これが共通する考え方だ。
例えば、「カストディをしない」は、ユーザーの資産や秘密鍵を事業者が預からないということ。ここに関与すると、その瞬間に「資産を管理している主体=金融機関に近い存在」とみなされる可能性がある。
2つ目の「投資助言をしない」も同様で、単にアドバイスをしないというだけではなく、
・おすすめ銘柄の表示
・ランキング表示
・「今買うべき」といった表現
など、ユーザーの判断を誘導する設計や行為そのものが問題視される可能性がある。
3つ目の「注文のルーティングや執行をしない」は、例えば、裏側で別の取引所を選んでユーザーの代わりに注文を通して手数料を稼ぐといった行為は「取引を仲介している」と見なされる可能性がある。ただし、どの範囲までが許容されるかについては明確に線引きされておらず、設計や関与の度合いによって評価が分かれる可能性がある。
4つ目の「手数料を中立にする」は、どの取引を選んでも手数料が同じであること、取引所からのリベートなどを受け取らないことが重要だ。報酬の構造によって「特定の取引に誘導している」と判断されるリスクがあるからだ。
最後の「裁量を持たない」は、アルゴリズムを含め、事業者側が意思決定をしてはいけない、ということだ。例えば、
・特定のルートを自動的に選択する
・特定のトークンを優先的に表示する
といった設計も、実質的な判断とみなされる可能性がある。また、繰り返しになるが、この5つは、あくまで出発点であり、実際には、
・表示の方法
・アルゴリズムの設計
・情報の開示方法
といった細部まで含めて、「中立性」が問われることになる。SECの声明では、条件の列挙に加え、以下のような追加要件も示されている。
・ルート表示の客観性(恣意的な並び替えの禁止)
・営業的表現(best price等)の禁止
・アフィリエイト関係の開示
・接続先の審査・監査
・詳細なユーザー開示
つまり、「中立に見える」だけでは不十分、“構造として中立であること”が求められる。
分岐点は「誰が意思決定しているのか」
──“構造として中立”とはどういうことか。
荒澤氏:簡単に言うと、「誰が意思決定しているのか」ということだ。ユーザーが自ら選択しているのか、それともプロトコルやUIが実質的に判断しているのか。ここが分岐点になる。整理すると、
・ユーザーが意思決定している場合 → 技術
・UIや仕組みが意思決定している場合 → 金融
という整理になる。
──今回の見解によって、DeFiの設計にどのような影響が出るか。
荒澤氏:最も大きいのは、コンプライアンスの位置づけが変わる点だ。これまで、コンプライアンスはいわば「後から対応する」ものだったが、今後はプロダクト設計そのものに組み込まれるものとなった。UI設計、アルゴリズム、UX上の表現なども含め、規制との関係で評価される対象となる。
これは、エンジニアリングとリーガルの領域が融合する時代に入ったことを意味する。
日本はどう向き合うべきか──制度設計への示唆
──日本のDeFi規制は、今後どのように考えるべきか。
荒澤氏:ここが最も重要な論点だ。結論としては、日本も米国と同じ方向に揃えるべきだと考えている。つまり、DeFiを一律に金融として扱うのではなく、機能単位で分解して考えるべきだろう。例えば、
・投資助言なのか
・媒介なのか
・執行なのか
といった機能単位で分解し、“金融的な行為のみを規制する”という考え方だ。
──UIについてはどう扱うべきか。
荒澤氏:UIは極めて重要だ。フロントエンドやウォレットといったUIについては、意思決定を持たない限り、中立的な技術として扱う余地を明確にするべきだ。これは今回のSECの考え方と完全に一致している。
──日本がこの方向に進まない場合、どのようなリスクがあるか。
荒澤氏:答えはシンプルだ。日本だけが過剰規制となり、イノベーションが海外に流出するだろう。国内プレイヤーの競争力が低下する。結果的に日本発のDeFiが育ちにくくなるリスクがある。
DeFiを一律に金融として規制するのではなく、金融的な行為のみを規制する。そして技術は規制せず、行為に着目して規制する──これが今回のSEC見解から導かれる本質だと考えている。
|文:増田隆幸
|画像:Shutterstock
PR
ボーナスで始めるのにおすすめな国内暗号資産取引所3選




