SECマーク・ウエダ委員、規制は「事前の線引き」が必要──日米当局が対話【FIN/SUM 2026】

開催中の「FIN/SUM 2026」で3日、金融庁と米証券取引委員会(SEC)による暗号資産(仮想通貨)とトークン化をテーマにしたパネルセッションが行われた。

登壇したのはSECのマーク・ウエダ委員と、金融庁企画市場局長の井上俊剛氏。ウエダ氏はアジア系アメリカ人として初のSEC委員として、投資家保護と資本形成のバランスを重視する実務派として知られている。

ウエダ氏は過去数年のSECの姿勢について、暗号資産に懐疑的で規制が不明瞭だった側面があると振り返った。そのうえで、規制当局の役割は事後的に法廷で主張することではなく、事前に「どこが線引きなのか」を示すことにあると強調した。

暗号資産の分類については、米国では証券に該当するか否かが決定的に重要だと説明。証券と判断されれば、開示義務やブローカーディーラー規制、不正行為の取締り権限などがSECの管轄下に入る。

その上で、「NFTやミームコイン、マイニング、ステーキング」といった活動についてはこれまで、一般的には証券の定義には含まれないとの立場が示されていたとし、今後も解釈の提示やルール策定を通じて法的な明確性を高めていく考えを示した。

ウエダ氏はさらに、「市場が価値を生み出すのであって、規制当局が価格の高低を判断するものではない」と語り、価値の有無を当局が決めつける姿勢を否定。法令順守を確保しつつ、イノベーションの余地を残すことが重要であるとの考えを示した。

トークン化とステーブルコイン

続けて、トークン化された証券は、清算や決済インフラを根本から効率化し得ると指摘。現在の米国株式市場では、約定から1営業日後に決済が行われるT+1を採用しているが、決済期間をさらに短縮できれば、担保として拘束されている資本を解放し、より生産的な用途に振り向ける余地が生まれるとの見方を示した。

また、ブロックチェーンの活用により、記録の正確性向上や透明性の改善が期待できる点にも言及。一方で、新たな技術には新たなリスクが伴うとも述べ、規制当局は先入観を持たず、実証実験やパイロットプロジェクトを通じて検証を進めることが重要だとの考えを示した。

ステーブルコインについてはジーニアス法を引き合いに、一定の法的枠組みが整備されたとの見解を示した。そのうえで、トークン化市場が機能するには「証券側」と「キャッシュ側」の双方が同時に機能することが不可欠であると整理。ステーブルコインは、リアルタイム決済を実現するうえでキャッシュ側のインフラとして機能し得るとの認識を示した。

不可欠な国際協調

ウエダ氏は終盤、暗号資産市場に国境はなく、不正行為も越境的に行われると指摘。悪質な行為者は国境にとらわれないとの認識を示し、日米間を含む監督・執行面での協力の重要性も強調した。

〈金融庁の井上俊剛氏(左)と意見を交わしたSECのマーク・ウエダ委員〉

そのうえで、短期だけでなく中長期を見据え、制度の土台を着実に築く必要があると述べた。ウエダ氏は、暗号資産やトークン化市場の分野に大きな可能性を感じているとしたうえで、国際的な連携と共通のルール整備なしには、投資家保護や市場の信頼性確保が難しくなると指摘。今後10〜15年を視野に、各国の規制当局が協力し、法令順守とイノベーションの両立を支える枠組み作りが不可欠であると語った。

|文・写真:橋本祐樹

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