Strategyの平均取得が市場構造に与える影響と、オンチェーンが示す現在地【エックスウィンリサーチ】

● 76,000ドルは価格の節目ではなく、Strategyの平均取得によって市場構造が試される参照点になっている。
● Realized Capが伸び悩み、SOPRが1を下回る局面が続く限り、反発は新規需要ではなく一時的な要因に留まりやすい。
● 現物出来高と資金フローが改善しない限り、相場は急落よりも弱気寄りのレンジ調整がベースとなる。

いまのビットコイン市場を読み解くうえで重要なのは、「価格が上がるか下がるか」を当てにいくことではない。市場の関心は、価格水準そのものから、どの規模の資金が、どの構造で、どこに集中しているのかという点に移っている。

CryptoQuantのアナリストであるMaartunn氏(@JA_Maartun)は「その象徴が、Strategyの平均取得価格である約76,000ドルだ。この水準は、誰かが意図して引いたラインではない」と指摘する。極めて大きな量のビットコインが同一水準付近で保有されている以上、結果として市場が無視できない「参照点」になっている。

価格がこの水準に近づく局面では、市場は感情的に反応するというより、「ここで構造的な負担が表に出てこないか」「この価格帯を無理なく維持できるのか」を、半ば機械的に検証しにいく。この動きは、強気・弱気といった物語の是非とは別次元の話だ。

もう一つ重要なのは、レバレッジは先物市場だけの話ではないという点である。Strategyは短期的な高倍率取引を行っているわけではないが、ビットコインの購入は、株式発行や転換社債といった資本市場からの資金調達によって支えられてきた。

つまり、市場が見ているのは「ビットコインが強いかどうか」ではなく、「資本市場の窓が開いた状態を維持できるかどうか」に移りつつある。ビットコイン価格の下落と株価の軟化が同時に進み、資金調達環境が悪化すれば、これまでのような継続的な買い増しは難しくなり、需給の下支えは弱まりやすくなる。

こうした構造を背景に、オンチェーンデータを見ると、ストレスを示唆するサインがより明確になっている。

まず注目すべきはRealized Capだ。Realized Capは、市場全体がどの価格帯でビットコインを取得してきたかを反映する指標であり、新しい資金が流入すると上昇しやすい。足元では価格が大きく変動している一方で、Realized Capは伸びにくい状態が続いている。

これは、市場に売買は存在するものの、市場全体の取得コストを押し上げるほどの新規資金が入っていないことを意味する。既存参加者同士のポジションの入れ替えは起きているが、新しい需要が相場を一段上に持ち上げる段階には至っていない。

このような環境では、価格が反発する局面があったとしても、それは新規資金主導というより、ショートカバーや流動性要因による一時的な動きになりやすい。構造的な裏付けを欠いた反発は、持続力を持ちにくい。

次にSOPR(Spent Output Profit Ratio)を見ると、短期保有者(STH)の行動がより鮮明に表れている。SOPRが1を下回る状態は、平均的に「損失確定での売却」が行われていることを示す。

足元では、SOPRが1を下回る局面が断続的に続いており、短期保有者が含み損を抱えたまま市場から退出している状況が確認できる。これは、恐怖や不安といった感情主導の売りが優勢であることを示す典型的なパターンだ。

この状態では、売りが一巡した後に価格が反発することはあっても、それがトレンド転換につながる可能性は高くない。SOPRが1を回復し、その水準で安定しない限り、上昇は断続的になりやすい。

エックスウィンとしての現時点の評価は明確だ。新規フローが戻らない限り、相場は急落よりも、反発と再下落を繰り返す広いレンジ調整になりやすい。Strategyの平均取得価格である76,000ドルは、底値を保証する水準ではなく、市場構造が試される検証ラインに過ぎない。

この見方が変わるのは、現物出来高とETFフローの改善が同時に確認され、オンチェーンではRealized Capの再加速、SOPRの1回復・定着が見られた場合だ。その兆候が出ない限り、現在の相場は「価格」ではなく「構造」を見極めるフェーズにあると言える。

オンチェーン指標の見方

Realized Cap:市場参加者が実際にBTCを取得した価格を積み上げた指標。これが伸びる局面は、新規資金が市場に流入しているサイン。横ばいは、売買はあっても新しい需要が価格を押し上げていない状態を示す。

SOPR(Spent Output Profit Ratio):売却されたBTCが平均的に利益か損失かを示す指標。1を下回ると、短期保有者が損失確定で売っている局面。1を回復し定着すると、需給が改善しトレンド転換の土台が整いやすい。

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