暗号資産(仮想通貨)取引所Coinbase(コインベース)が「2026 Crypto Market Outlook」を発表し、2026年の暗号資産市場についての見通しを示した。同社は2025年後半の相場調整を経て、2026年は暗号資産が「期待」から「実用」へと移行し、金融システムの中核へ深く統合される「変革の年」になると予測している。
レポートではまず、市場全体に対して 慎重ながらも建設的な見通しを示している。アメリカ経済の堅調さや労働生産性の向上が暗号資産市場に追い風となり、2026年前半の市場環境は1990年代のテクノロジー成長期のような構造的強さを伴うものになり得ると分析する一方、不確実性が依然として大きい点も指摘した。
コインベースが特に強調するのは、2026年に「3つの主要なセクター」が市場を牽引するという構造的変化 だ。その中心となるのは、永久先物(Perpetual Futures)、分散型予測市場、ステーブルコインおよび決済インフラだ。これらは単なる金融商品ではなく、24時間取引、資本効率、および実際の支払い・送金ニーズと結びつく市場として、暗号エコシステム全体の厚みを増す要素になるとする。
特にステーブルコインについては、レポートでも継続的な成長を予測しており、2028年までに市場規模が約1兆2000億ドルに達する可能性があるとしている。これはクロスボーダー決済、送金、給与支払いといった実際のユースケースが拡大することを示唆している。
また、単なる価格中心の投機ではなく、インフラ整備と技術革新も2026年を象徴するテーマになるという。プライバシー保護技術(ゼロ知識証明、ホモモルフィック暗号など)の進展、AI(人工知能)と暗号の統合、専門的なブロックチェーン(アプリケーション特化チェーン)の増加、そして現実資産(RWA)のトークン化の加速など、多方面での実装が見込まれる点も強調された。
投資家が注目すべきポイントとして、市場サイクルからの脱却、主要セクターへのシフト、規制の明確化による機関投資家の参入促進、実需を伴う技術・プロダクトの成熟という4点が挙げられる。特に規制の進展は、暗号資産が金融システムのコアに組み込まれる過程で重要な局面となる。すでにアメリカでは現物ETFやデジタル資産トレジャリー(DAT)企業が登場しており、これは制度的な信頼性を高める動きとして評価される。
コインベースは、暗号資産市場が「価格の動き」以上の価値創造へ向かう転換点にある ことを示唆している。単なる投機的資産としてではなく、支払い、決済、金融インフラの一部として機能する未来に向けたロードマップを描いているのだ。投資家にとっては、この構造変化の中心となる分野への理解と、規制・技術トレンドの継続的なモニタリングが不可欠となろう。
|文・編集:井上俊彦
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