【取材】偶然のビットコイン長期保有が示した投資のヒント——経済アナリスト・馬渕磨理子氏に聞く暗号資産の現在地

2026年度が始まった。4月10日時点で日経平均株価は5万6000円台を維持し、高値圏での推移が続いている。米・イランによる中東情勢の緊張など不透明な外部環境は残るものの、株高の長期化と新NISAの浸透を背景に、個人投資家の関心は次なる成長領域へと向かいつつある。

一方で、暗号資産(仮想通貨)は、資金決済法から金融商品取引法(金商法)へと規制の枠組みが移行する流れにある。早ければ2028年にも申告分離課税の適用や暗号資産ETF(上場投資信託)の解禁が視野に入り、市場を取り巻く環境は大きな転換点に差しかかっている。

暗号資産が金商法下に組み込まれることは、株式や投資信託などの有価証券と同じ土俵で評価されることを意味する。この動きが既定路線となるなか、株式市場を主戦場とするアナリストは暗号資産をどのように捉えているのか。

NADA NEWSは年初、この疑問を解くため、経済アナリストの馬渕磨理子氏に独占取材を行った。馬渕氏は株式市場に精通するアナリストとして知られ、過去にはトレーダーとして法人のファンド運用を担った経験も持つ。現在は、一般社団法人日本金融経済研究所の代表理事や大阪公立大学客員准教授も務めており、テレビや雑誌のコメンテーターなどでもお馴染みだ。

取材で明らかになったのは、馬渕氏が10年以上にわたるビットコイン(BTC)の長期保有者でもあるという点だった。1BTCが数万円だった2014年に投資を始めたという同氏の話から、米国の政策動向や日本の制度変化を踏まえ、新年度の投資戦略を読み解く。

半信半疑で買った

馬渕氏とビットコインの出会いは、2014年ごろのフィスコ在籍時に遡る。同社は1995年に設立した独立系の金融情報配信企業で、株式や為替などの金融・経済情報を調査・分析し、企業や個人投資家に提供している。

馬渕氏は当時、同社のアナリストとして個別銘柄や市況の分析を行っていた。暗号資産に関する情報発信が強化される中、業務上の必要性もあり、周囲に促される形で「よくわからないが、ちょっとだけ買ってみた」のが最初だったという。

10年以上前は、現在以上に暗号資産への懐疑的な見方が強かった時期だ。周囲の関心を横目に見ながらも、当初は半信半疑だったと振り返った。

〈Shutterstockより〉

その後、自身で積極的に買い増しを行ったのが、2018年に取引所コインチェックから巨額の不正流出が起きる数カ月前。当時、1BTCは100万円を超えていたという。

しかし、購入直後に市場は急落。「なんだ、これは」と感じるほどの強いボラティリティ(値動き)に衝撃を受けたが、中央集権に依存しないブロックチェーンの可能性には一定の期待を抱き続けていたと話した。

偶然が生んだ長期保有

その後も価格の乱高下を経験したが、馬渕氏がビットコインを売却することはなかった。結果的に長期保有を続けることになった背景には、意外な事情があった。

当時利用していた海外取引所から国内へ資産を戻す方法が分からず、結果として「放置せざるを得なかった」。日本の取引所に送金し、そこで売却して円転するという一連の手続きが、当時は分かりにくかったようだ。

結果的に資産を寝かせることとなり、長期投資の有効性を実感することになった。昨年後半からの市況が悪いとはいえ、記事執筆時点で1BTCは1100万円台に達している。同氏の保有期間を踏まえれば、資産価値は大きく拡大した。

さらに、コインチェック事件後には資産価値が半値になる局面も経験しており、価格変動に対する耐性も自然と身についたと説明。偶然から始まった“ガチホ”は、長期投資の有効性とボラティリティへの耐性という、2つの教訓をもたらした。

ETF承認がもたらした「市民権」

馬渕氏はビットコインの位置づけについて、「デジタル・ゴールド」という見方が結果的に定着しつつあると語る。

発行上限による希少性に加え、近年はドルの価値低下や米国債への信認の揺らぎといったマクロ環境の変化も背景にある。資産の逃避先として金(ゴールド)と並び、ビットコインが選択肢の一つとして組み込まれるようになってきたという認識だ。

〈Shutterstockより〉

この流れを決定づけた転機として馬渕氏は、2024年の米国でのビットコインETFの承認を挙げた。

ETFという枠組みに組み込まれたことで、「危ないものではない」という認識が広がり、機関投資家だけでなく個人投資家にとっても心理的ハードルが下がったと指摘。「資産が一般化するうえでETFの持つ意味は大きい」とし、ビットコインが金融商品としての「市民権」を獲得した象徴的な出来事だったと評価した。

加えて、株式とは異なる値動きをする点にも注目しているという。分散投資の観点からも、暗号資産はポートフォリオの一部として一定の役割を担い始めていると説明した。

一方で、こうした認識の変化が進む中でも、馬渕氏は自身のYouTubeで暗号資産投資について慎重なスタンスを取ってきた。

自身もビットコインの長期保有者でありながら、過去には動画内で暗号資産投資を積極的に勧めない時期もあった。「あえて投資する必要はない」とし、まずはNISAなどを通じた資産形成を優先すべきとの考えを示していた。

その背景にあったのは、市場環境ではなく「投資家層」への配慮だったという。

数年前は新NISAの開始により投資初心者が急増し、自身の視聴者にも経験の浅い層が多く含まれていたとし、「メッセージの出し方には細心の注意を払っていた」と振り返った。加えて、インフルエンサーの発信がそのまま投資行動につながりやすい状況にあったことから、自身の発言が過度なリスクテイクを誘発しかねないと判断していたという。

一方で、足元では暗号資産を取り巻く環境の変化を踏まえ、発信内容にも変化が見られる。動画内でビットコインを「デジタル・ゴールド」と位置づけ、ポートフォリオの一部として組み入れる意義に言及する場面も増えている。

もっとも、前提となる考え方は一貫しており、まずはNISAなどで投資の土台を整えたうえで、余剰資金の範囲で暗号資産やゴールドといった分散先を検討すべきだというスタンスだ。

影響力のある立場として、投資家の行動に与える影響を強く意識した姿勢がうかがえた。

制度改革がもたらす「光と影」

国内で2028年にも見込まれる制度改革については、ポジティブに評価しつつ、短期的なリスクも指摘した。

前提として、暗号資産が金商法の枠組みに組み込まれることは、「株式と同様に一般の投資対象と見なされること」と指摘。税制が株式と同様の分離課税へ移行すれば、市場の一般化は一段と進むと予想し、市場の裾野拡大につながるとの見方を示した。

〈国内の暗号資産税制の見直しやETF解禁の可能性についても答えた馬渕氏〉

一方で、短期的な影響にも触れた。これまで税制を理由に利確を控えていた富裕層が一斉に売却に動けば、「一時的な下落圧力になる可能性もある」と説明。ただし、その後は新たな資金流入によって再び買い支えられるとの見方を示した。

また、同時期に実現が期待される暗号資産ETFの解禁にも注目している。米国と同様に、市場での市民権の確立を後押しする可能性があると期待を寄せた。施行時期については、米国に比べて遅れを取る日本の状況に理解を示しつつも、「その間に価格が上昇し、ETF解禁時には割高感が出る可能性もある」と指摘。本来は米国と近いタイミングで制度整備が進むことが望ましいとしながらも、慎重に議論が進められている現状に一定の意義を認めた。

こうした制度面の遅れは、日本特有の投資行動も生んでいる。

現状では暗号資産の売却益が総合課税(最大55%)となる一方、株式は約20%の分離課税が適用される。この税制差を背景に、暗号資産を直接保有するのではなく、企業を通じて間接的にエクスポージャーを取る動きが一部で広がっている。

企業財務にビットコインなどを組み込む、いわゆるDAT(デジタルアセットトレジャリー)企業の存在だ。メタプラネットなどの銘柄は、株式として保有することで分離課税やNISA枠の対象となるため、疑似的に暗号資産へ投資する手段として注目を集めている側面もある。

この点について馬渕氏は、本来であれば暗号資産に投資したい場合は直接保有するのが自然だと指摘。一方で現行制度下では、税制の違いが投資経路の選択に影響を与えているとし、こうした“ねじれ”の解消という意味でも、ETF解禁や税制改正の行方に市場の関心が集まっていると説明した。

草コインの教訓と投資の原則

馬渕氏は過去、ビットコイン以外のアルトコインや「草コイン」と呼ばれる低価格トークンへの投資も経験している。「次なるビットコインを探す」市場の熱狂の中で、分散的に資金を投じたこともあったという。

しかし結果として、長期的に価値を維持したのはビットコインとイーサリアムなどごく一部に限られ、多くの草コインは「何物にもならなかった」と振り返った。

〈Shutterstockより〉

ただ、「当時は、どれが残るかは分からなかった」。だからこそ、新しいトレンドを頭ごなしに否定するのではなく、無理のない範囲で触れてみることが重要だと指摘。こうした経験は、現在の投資判断にも生きていると説明した。

馬渕氏はこれまで、大幅な下落基調も経験してきたが、価格変動に耐えられるかどうか、耐えられる範囲の資産配分を行っているかが重要だとする。

株式と暗号資産という異なる市場を横断して見えてきたのは、「分散」と「長期」という普遍的な原則だった。図らずも自身が体現することになったビットコインの長期保有は、その有効性を裏付ける結果となった。

市場の不確実性が高まる中、資産をどこに置くのか。答えは一つではない。ただ、10年以上にわたる実体験に裏打ちされた視点は、新年度の投資戦略を考えるうえで大きな示唆を与えている。

|文・インタビュー:橋本祐樹
|トップ画像:NADA NEWSのオンライン取材に答えた馬渕磨理子氏(2026年1月)

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