米商品先物取引委員会(CFTC)は、予測市場に関する従来の規制方針を大きく転換した。Michael Selig(マイケル・セリグ委員長)は、2024年に提案されたイベント契約に関する規則案を正式に撤回し、あわせて2025年に発出されたスポーツイベント契約に関するスタッフ向けアドバイザリーも取り下げると発表した。
これにより、政治イベントを含む予測市場に対する規制は、事実上「白紙に戻された」形となる。
バイデン政権下で進められた禁止案
撤回された2024年の規則案は、政治イベントの結果に基づく契約を、戦争やテロ、暗殺といった違法契約と同列に位置付け、「公益に反する」として全面的に禁止する内容だった。この案は、2024年の大統領選挙を前に、Kalshi(カルシ)やPolymarket(ポリマーケット)といった予測市場プラットフォームの活動を強く制限する可能性があるとして、業界内外で注目を集めていた。
しかし、この規則案は最終決定には至らなかった。背景には、カルシが政治イベント契約を巡って起こした訴訟でCFTCが敗訴し、その後、政治イベントを対象とする予測市場が実際に立ち上がった経緯がある。そして、ドナルド・トランプ大統領の再登板と新たなCFTC指導部の誕生により、規制の方向性は大きく見直されることになった。
CFTCは2024年のイベント契約規則案を撤回し、商品取引所法(CEA)を合理的かつ一貫して解釈する新たなルールメイキングを進めると、セリグ氏は表明している。
「我々は、議会の意図に沿いながら、デリバティブ市場における責任あるイノベーションを促進する規則を策定する」とセリグ氏は述べ、全面禁止ではなく、法的枠組みに基づいた整理を重視する姿勢を示した。
スタッフ向けアドバイザリーも撤回
あわせて撤回されたのが、2025年9月に発出されたスポーツイベント契約に関するスタッフアドバイザリーだ。これは、特定の契約市場に対して訴訟リスクへの注意を促す目的で出されたものだったが、結果的に市場参加者に混乱と不確実性をもたらしたと、CFTC自身が認めている。
セリグ氏は、「意図は訴訟上の考慮点を示すことだったが、かえって市場の不透明感を高めてしまった」と説明し、今後はより明確で一貫したルール作りに注力する考えを示した。
予測市場への追い風
今回の方針転換は、トランプ政権が予測市場を比較的前向きに捉えている流れとも一致する。これにより、予測市場分野への新規参入や事業拡大を検討する企業が増える可能性がある。実際、暗号資産(仮想通貨)取引所大手のCoinbase(コインベース)や、取引所運営企業Cboeなどが、関連サービスへの関心を示していると報じられている。
予測市場は、政治・経済・スポーツといった現実世界の出来事に対する「市場の集合知」を可視化する仕組みとして、近年注目を集めてきた。今回の規制リセットにより、米国市場における事業展開のハードルは一時的に下がった形だ。
デジタル資産規制の中核へ
CFTCは今後、デジタル資産規制において中心的な役割を担うと見られている。現在、米議会では暗号資産の市場構造法案が協議されており、その中には、証券に該当しない暗号資産のスポット市場をCFTCが監督するという構想も含まれている。
予測市場は、デリバティブ、暗号資産、イベント契約といった複数の領域にまたがる存在であり、CFTCの今後の姿勢は、より広範なデジタル資産規制にも影響を与える可能性がある。セリグ氏は、すでにスタッフに対し、新たなイベント契約ルールの起草を指示したことを明らかにしており、今後の具体的な規制案が注目される。
|文・編集:Shoko Galaviz
|画像:Shutterstock
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