● Spot Taker CVDは、成行買いと成行売りの累積差分から需給の主導権を測る指標。
● プラス圏で推移する場合、価格に関わらず実需ベースの買い圧力が優勢であることを示す。
● 短期ノイズよりも、「誰が主導しているか」を把握するための構造指標として有効。
現在のビットコイン市場は、急騰や急落を伴うトレンド局面ではなく、レンジを意識した調整と再構築のフェーズに位置している。その中で、方向性としては条件付きで強気が優勢だが、短期的な過熱や断続的な調整圧力も同時に内包している状況だ。
足元の構造変化として最も注目すべき点は、参加者の「質」が明確に変わり始めていることである。CryptoQuantのデータを見ると、現物市場・先物市場ともにリテールの取引頻度は中立水準にとどまり、過度な個人参加は確認されていない。一方で、平均注文サイズは現物・先物ともに「Big Whale Orders」のシグナルが点灯しており、大口主体の取引が市場を動かしていることが示唆される。
特に重要なのは、90日ベースのSpot Taker CVDが再び「Taker Buy Dominant」に転じている点である。価格が大きく上昇していない局面にもかかわらず、成行買いが継続して優勢であることは、売り圧力が限定的である一方、下値では着実な吸収が行われている構造を示す。これは短期的な投機熱ではなく、需給の質的改善を伴う動きと解釈できる。
同時に、先物市場では出来高の増加とともにテイカー買いが優勢となり、短期的な過熱も観測されている。高レバレッジポジションの積み上がりに伴い、局所的な清算が発生している点は無視できないリスク要因だ。ただし、現物側ではクジラによる蓄積が継続しており、デリバティブ主導の調整と現物の需給改善が同時進行している点が、過去の急落局面とは異なる特徴である。
この「静かな局面での主役交代」は、エックスウィンリサーチがこれまで指摘してきた「価格ではなくフローと参加者構造を見るべき局面」という見解とも整合的だ。実際、短期の値動きが乏しい中でも、オンチェーン・フロー指標は徐々に改善を示している。
一方で、反対シナリオとして注意すべき点も明確だ。もし今後、Spot Taker CVDが再び売り優勢に転じ、かつ先物のオープンインタレスト増加が価格下落を伴う形で進行する場合、需給構造は再び不安定化する可能性がある。その場合は、現物主導の蓄積フェーズが一時的に中断されたと判断する必要があるだろう。
まとめると、現時点では「リテールが離脱する中で、クジラが現物を吸収する構造」がベースシナリオである。ただし、先物市場の過度なレバレッジ拡大と、それに伴う需給悪化が確認される場合、この見方は見直す必要がある。
オンチェーン指標の見方
Spot Taker CVD:成行買いと成行売りの累積差分を通じて、市場における需給の主導権を把握するためのオンチェーン指標である。価格変動とは独立して、実際にどちらの方向へ流動性が消費されているかを可視化できる点が特徴だ。プラス圏での推移は、短期的な値動きに関わらず、買い手が構造的に優勢であることを示唆する。

