米フロリダ州で、州のバランスシートにビットコイン(BTC)を組み入れる構想が再び動き出している。2026年の立法会期(1月13日開始予定)を見据え、州議会では暗号資産(仮想通貨)を準備資産として保有することを可能にする法案が上下両院で提出された。
新たに提出された上院法案(SB 1038)と下院法案(HB 1039)はいずれも、州が管理する「戦略的暗号資産準備金」の創設を目指すものだ。いずれの法案も、従来の州基金に暗号資産投資を組み込むのではなく、独立した準備金ファンドを設ける点が特徴となっている。
ビットコインに限定された上院案
上院に提出されたSB 1038は、州の最高財務責任者(CFO)の監督下に「フロリダ戦略的暗号資産準備金」を設立する内容となっている。特筆すべきは、投資対象となる暗号資産に厳格な条件を課している点だ。
具体的には、過去24カ月間の平均時価総額が5000億ドル(約78兆5000億円、1ドル=157円換算)以上であることを要件としており、現時点でこの条件を満たすのはビットコインのみとなる。事実上、州の準備資産としてビットコインに限定した制度設計だ。
また、同法案では、保管方法、会計処理、情報開示に関する独自ルールを定めるとともに、専門家による諮問委員会の設置も盛り込まれている。価格変動の大きい暗号資産を扱う上で、リスク管理と透明性を重視した構造となっている。
より柔軟な下院案、CFOに裁量権
一方、共和党のJohn Snyder(ジョン・スナイダー)議員が提出した下院法案HB 1039は、やや柔軟なアプローチを取る。こちらも州財務省の外に独立した「戦略的暗号資産準備金基金」を設け、CFOが管理する点は共通しているが、最低投資額や比率を明示的に義務付けていない。
2025年に検討され、最終的に廃案となった法案では、一部の州基金について最大10%までビットコインに配分する案が盛り込まれていた。HB 1039ではこの数値目標を撤回し、CFOの判断に委ねる形に改められている。
独立監査の実施や諮問委員会の設置も規定されており、インフレ対策や分散投資の一環として暗号資産を活用する狙いが明確に打ち出されている。
「デジタル・ゴールド」としてのビットコイン
こうした動きの背景には、ビットコインを「デジタル・ゴールド」と位置付ける見方の広がりがある。フロリダ州のCFOであるJimmy Patronis(ジミー・パトロニス)氏は、公の場でビットコインを金になぞらえ、限定的な保有であれば州資産の分散化に寄与し得るとの認識を示してきた。
今回の法案提出には、ドナルド・トランプ大統領の盟友として知られるJoe Gruters(ジョー・グルーターズ)州上院議員も関与しており、ビットコインをインフレヘッジや長期的価値保存手段として評価する政治的潮流が浮き彫りになっている。
他州でも進む「州レベルのビットコイン」
フロリダの動きは孤立したものではない。テキサス州ではすでに州のビットコイン準備金が承認され、2024年にはブラックロックのビットコイン現物ETF(IBIT)を通じて、約500万ドル相当の初期投資が行われたと報じられている。
また、ニューハンプシャー州やアリゾナ州では、全面的な準備金創設には踏み込まないものの、公的機関がビットコインを保有・運用する際の枠組みを法制化している。特にニューハンプシャー州は、公的資金による暗号資産投資を明示的に認めた最初の州として、フロリダの議論でもたびたび参照されている。
ワイオミング州も、暗号資産やブロックチェーン企業の法的地位を明確化する数十本の関連法を整備し、全米有数の「クリプト・フレンドリー」な州として知られる。
CBDCを拒否し、分散型を選好するフロリダ
興味深いのは、フロリダ州がデジタルマネー全般を無条件に受け入れているわけではない点だ。2023年には、ロン・デサンティス州知事が、中央銀行デジタル通貨(CBDC)を州の商法上認めないとする法律に署名している。
連邦政府主導のデジタル通貨には懐疑的な姿勢を示す一方で、ビットコインのような分散型デジタル資産には門戸を開く。この対照的なスタンスは、フロリダ州の暗号資産政策の軸を象徴している。
SB 1038およびHB 1039はいずれも、2026年の立法会期で審議される予定だ。両院を通過し、州知事の署名を経て成立すれば、フロリダは全米でも最大規模の州として、暗号資産を準備資産として本格的に扱う実験に踏み出すことになる。
|文・編集:Shoko Galaviz
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