イギリスの大手銀行Lloyds Bank(ロイズ銀行)は、トークン化された預金(法定通貨の預金をブロックチェーン上でデジタル化したもの)を用いてイギリス国債を購入する取引を初めて完了したと発表した。この取引は、伝統的な銀行業務とブロックチェーン技術を融合させることを目指す試みとして重要だ。
今回の取引は、暗号資産(仮想通貨)取引所Archaxのトークン化技術と、プライバシー重視のブロックチェーンであるCanton Networkが協力した。ロイズ銀行はCanton Network上でトークン化預金を発行し、それを使ってArchaxからトークン化された国債を購入した。その後、Archaxは資金をロイズ銀行の口座へ戻すことで、ブロックチェーンと従来の銀行システム間の橋渡しができることを実証した。Canton Networkは規制下で使えるパブリックブロックチェーンとして機能し、取引の透明性と即時性、セキュリティを提供している。
この取引の意義は、銀行業務そのものがデジタル化・トークン化された資金で実行可能であることを示した点にある。トークン化預金は従来の預金と同様に金利を得られ、イギリスの規制の保護下にありながら、ブロックチェーン上での迅速な決済や高度な透明性を提供する。これにより、企業が瞬時に資産を移転・決済できる可能性が広がり、国際債券市場や資金運用の効率性が大きく向上する可能性がある。
ロイズ銀行のトランザクションバンキング商品担当責任者、Surath Sengupta(スラト・セングプタ)氏は「トークン化により現実資産をブロックチェーンインフラに載せ、企業がより高速・透明・柔軟に取引できるようになる。トークン化預金は引き続き利息を生み出し、伝統的な現金の利点を失わないことが極めて重要だ」と述べた。
また、取引に協力したArchaxの共同創業者、Graham Rodford(グラハム・ロッドフォード)氏は、「即時決済と高度な透明性は機関投資家にとってゲームチェンジャーだ。次世代の金融市場形成をリードできることを誇りに思う」と語っている。
今回の成功は、銀行がブロックチェーン技術を取り入れ、銀行業務の基盤そのものを変革する可能性を示した。トークン化された預金と資産は、単なる実験に留まらず、伝統的金融機関がデジタル資産インフラに深く関与する未来への一歩となるだろう。
|文・編集:井上俊彦
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