ラスベガスで開催されたCES 2026のオープニングにおいて、Nvidia(エヌビディア)のJensen Huang(ジェンスン・フアン)CEOは、同社初となる「極限共同設計(Extreme Co-Design)」AI(人工知能)プラットフォーム「Rubin(ルービン)」を発表した。この発表は、単なるハードウェアの刷新に留まらず、ビットコインマイナーの事業戦略や暗号資産(仮想通貨)市場の勢力図を大きく塗り替える可能性を秘めている。
Rubinはチップ、システム、ソフトウェアを一つのエコシステムとして統合した、これまでにないAIスーパーコンピューティング・プラットフォームだ。これは、次世代の「Rubin GPU」をはじめ、Armベースの「Vera CPU」、超高速通信を実現する「NVLink 6 Switch」、「ConnectX-9 SuperNIC」、「BlueField-4 DPU」、「Spectrum-6 Ethernet Switch」で構成されており、AI推論時の トークンあたりコストを最大10分の1に削減し、MoE(Mixture of Experts)モデルのトレーニングに必要なGPU数を4分の1に減らす性能が特徴だ。また、「HBM4」メモリの採用により、データ転送のボトルネックを解消したとしている。
フアン氏は「Rubinは単なる設計図ではなく、すでに生産段階にある」と明言した。そして、「AIは次なる産業革命の原動力であり、Rubinはその基盤となる。我々はコンピューティングの限界を押し広げ、すべてのデータセンターをAI工場へと変える」と、その圧倒的な自信を覗かせた。
ビットコインマイナーへの影響は
Rubinはビットコインマイナーに大きな影響を与える可能性がある。直近の市場動向として、NvidiaのAI向けGPUに対する需要が加速しており、ビットコインマイニング事業者はAI用途の需要を追うかたちでGPU供給争奪戦に巻き込まれているとの報道がある。AIモデル向けインフラ需要が高まることで、GPU価格の上昇や供給逼迫がマイナー機器の調達コストを押し上げる可能性が指摘されている。
具体的には、ASICに依存しないGPUマイニング勢や新規アルトコインプロジェクトでのGPU活用者が、AI用途向けにGPUをシフトする圧力に直面すると見られており、 マイニング機材の調達コスト上昇、リースやレンタル市場の活況、マイナーの設備投資戦略の見直しが進む可能性がある。特に在庫確保の競争が激化する中、事業スケールの小さいマイナーは不利になるリスクもある。
暗号資産市場全体への影響としては、AIインフラ需要と暗号資産マイニング需要の競合関係が今後のテーマとなるだろう。AI需要がGPU供給を奪う方向に進めば、一部マイナーのコスト構造が悪化し、ビットコインのハッシュレートやマイニング難易度に影響を与える可能性があるほか、GPUを必要とする新興ブロックチェーンプロジェクトの成長ペースにも影響が出るかもしれない。
一方で、Rubinが低コストかつ高性能なAIコンピューティング基盤を提供することで、AIネイティブな分散アプリケーションやオンチェーン推論サービスなど、暗号資産市場に新たな成長機会をもたらすというポジティブな見方もある。Rubinプラットフォームの本格稼働は、GPU市場の供給サイクルを再定義し、 AIと暗号資産という2つの大きなGPU需要の競争と共存の構図を新たな段階へと押し進める可能性が高い。
|文・編集:井上俊彦
|画像:Nvidia