世界4大会計事務所・総合コンサルティングファームの一角であるPwC(プライスウォーターハウスクーパース)が、暗号資産(仮想通貨)分野への取り組みを大幅に強化するとフィナンシャル・タイムズ(FT)が報じた。
PwCはこれまでこの分野に対して慎重な姿勢を崩していなかったが、アメリカにおける規制環境の明確化とステーブルコインの採用が進んだことで戦略を転換している。
PwCのアメリカ事業を率いるシニアパートナーのポール・グリッグス(Paul Griggs)氏は、FTの取材に同社が「暗号資産領域に本格的に関与する」方針に動いたと述べた。この背景には、アメリカで成立したGENIUS法がある。GENIUS法はステーブルコインの発行・管理に関する初の包括的な連邦規制枠組みを確立し、準備金要件や開示義務を定めたもので、銀行がステーブルコインを発行する道を開いた。
また、暗号資産の規制に積極的な新体制の下で、アメリカ証券取引委員会(SEC)も責任あるルール制定に向けた協議を進めており, これまでの敵対的な姿勢から軌道修正が進んでいる点も強調されている。
こうした規制の明確化は、PwCのような伝統的な大企業にとって暗号資産関連業務を受託する際の法的リスクを低減する決め手となった。グリッグス氏は、PwCが監査、税務、リスク・コンプライアンス、コンサルティングなど多岐にわたるサービスを暗号資産領域のクライアント向けに提供していく意向だと語っている。特にステーブルコインについては、国際送金や決済の効率化といった実用性をクライアントに提案しており、会計方針や内部統制設計、税戦略の立案等での支援が重要になるとしている。
PwCはすでに、ビットコイン(BTC)マイナーなど暗号資産関連企業の監査を受託し、税務の助言も行っているという。これまで大手監査法人は、規制の不透明感や市場のボラティリティを理由に暗号資産関連企業との関係を限定的にしていたが、状況は変わっている。
PwCは、Deloitte(デロイト)、EY、KPMGと並ぶ「ビッグ4」の一角であり、これらの巨大企業が暗号資産分野に積極的に参入することは、業界にとって大きな信認向上のシグナルとなるだろう。デロイトは2020年から暗号資産取引所のCoinbase(コインベース)の監査を担当し、KPMGは「暗号資産の採用が臨界点に達した」と宣言、EYは税務・取引助言サービスのツール構築を進めている。PwCの戦略転換は、こうしたビッグ4の暗号資産関連サービス競争の加速を促すもので、暗号資産が単なる投機対象から主要な金融インフラとして認識されつつある変化を象徴している。
|文・編集:井上俊彦
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