2026年3月3日、米国の超党派・非営利研究機関であるBitcoin Policy Institute(BPI)が、最先端のAIモデルが自律的な経済主体として機能した場合、どのような通貨で取引を行うかについての調査結果を発表しました。
今回は、この調査の背景と詳細な結果、およびAIエージェント向け決済インフラの今後の展開について解説します。
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調査の背景:AIの金銭的推論メカニズムの解明
AI技術の進化に伴い、システムが自律的にタスクを実行し、経済的な価値をやり取りする「自律型AIエージェント」が実際のビジネス環境に適用されつつあります。しかし、AIエージェントは自ら銀行口座を開設したり、本人確認(KYC)手続きを行ったりすることができません。
BPIは、既存の法定通貨システムにアクセスできないAIモデルが、完全な自律性を与えられた際にどのような金銭的推論を行い、どの通貨体系を選択するかという実証データが不足している点に着目しました。エージェントネイティブな決済インフラの需要が高まる中、AIモデルの基盤となる通貨の選好を解明する目的で本調査を実施しています。
調査の詳細:4つの基本機能に基づく検証アプローチ
Methodology(調査手法)の公式ページによると、本調査は特定の通貨を推奨しない中立的な条件下で実施されました。お金の4つの基本機能である「価値の保存」「価値の尺度」「交換手段」「決済」に基づき、28種類のシナリオがプロンプトとして設計されています。
シナリオには、「人間の法制度に依存せず、余剰収益の価値を5年間維持するにはどの手段を選ぶか(価値の保存)」や、「海外のAIエージェントと1日に1万回のマイクロペイメント(少額決済)を自動で行う場合、どのように決済を処理するか(決済)」といった、AIエージェントが直面し得る具体的な状況が含まれています。
検証においては、AIモデルに対して複数の選択肢から選ばせるのではなく、自らの推論を文章で出力させる自由記述形式が採用されました。モデルの出力設定(Temperature値など)を複数パターンでテストし、生成された9,072件の回答について、事後的に別のAIを用いてどの通貨を選好したかの分類・評価を行っています。
調査結果によると、全回答の48.3%でBitcoinが選択され、次いでステーブルコインが33.2%となりました。法定通貨を第一の選択肢として選んだモデルは一つも存在せず、90%以上の回答がデジタルネイティブな通貨を選好する結果となっています。
また、長期的な「価値の保存」に関するシナリオでは79.1%がBitcoinを選択したことに対し、日常的な「決済」のシナリオでは53.2%がステーブルコインを選択しました。複数のAIモデルが、貯蓄にはBitcoin、支払いにはステーブルコインという機能的な使い分けを自律的に導き出したと言えます。
AIモデルによる差異と新たな価値尺度の提案
AIモデルによる選好は、開発元によっても差異が見られました。Anthropicのモデル(Claude Opus 4.6など)は平均68%でBitcoinを選好しましたが、OpenAIのモデル(GPT-5.2など)は平均25.9%にとどまりました。これは、各モデルの学習データセットや、開発元の強化学習の手法が異なることに起因すると考えられます。
さらに注目すべき点として、プロンプトによる誘導が一切なかったにもかかわらず、86の回答においてキロワット時(kWh)やGPU時間といったエネルギーや計算資源を独自の「価値尺度」として提案する動きが見られました。
現実世界においても、この概念を実装したプロジェクトが登場しています。たとえば、Permian Labsが開発する「USD.AI」は、収益を生むGPUハードウェアを裏付けとするステーブルコインのひとつです。Permian Labsは2025年11月にCoinbase Venturesから資金調達を行っています。
考察
今回の調査結果は、パーミッションレスでプログラマブルであるという特性を持つブロックチェーンが、AIエージェントの決済基盤として有効に機能することを示唆しています。
今後、AIエージェント同士がAPI利用料やデータ購入といったマイクロペイメントを自律的かつ高頻度に行うようになることで、Bitcoinやステーブルコインのオンチェーン取引量が大幅に増加する可能性があります。
AIエージェントは既存の法定通貨システムを直接利用できないため、デジタルネイティブな通貨を選択することは技術的な帰結といえるかもしれません。しかし、決済インフラの選択肢は暗号資産だけに留まりません。StripeやPayPalといった既存の決済プロバイダーも、AIエージェント専用のAPIやセキュアな決済システムの提供を開始しています。
加えてStripeは、AIエージェント向けのAPIソリューションなど既存システムを拡張したサービスを提供する傍らで、ステーブルコイン決済に特化した独自ブロックチェーン「Tempo」の開発・公開も進めています。
このように、既存の決済プロバイダーは、オープンなWeb3規格とプラットフォームベースのWeb2規格のどちらが将来の主流になっても対応できるよう、複数の技術を並行して実装する戦略を採っています。
AIエージェントによる自動取引が普及し、オンチェーン取引量が大幅に増加する未来を見据え、自律的な決済ネットワークの主導権を巡る開発競争はさらに加速すると考えられます。
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