世界最大のステーブルコイン発行企業であるTether(テザー)は、ブロックチェーン間の相互運用性を担う技術企業LayerZero Labs(レイヤーゼロ・ラボ)への戦略的投資を発表した。
今回の投資は、すでに実運用環境で実績を持つ相互運用インフラを支援するものであり、テザー社が次世代のデジタル資産基盤をどこに見据えているのかを明確に示す動きとなっている。
USDt0を支える「実証済みインフラ」への評価
レイヤーゼロ・ラボは、現在市場で最も広く採用されているブリッジング(異なるブロックチェーン間の接続)フレームワークの一つを開発している企業だ。
この技術は、デジタル資産を複数のブロックチェーン間で安全かつ効率的に移動させるための中核的な仕組みとして機能している。
過去1年間、レイヤーゼロの相互運用インフラはEverdawn Labs(エヴァードーン・ラボ)によって活用され、USDt0およびXAUt0の開発と市場展開が行われてきた。これらは実際の市場環境下で運用され、大規模なクロスチェーン取引を支えてきた点が特徴だ。
特にUSDt0は、レイヤーゼロのOmnichain Fungible Token(OFT)規格を基盤として構築されており、ブロックチェーンをまたいでも流動性の分断や価値の損失が生じない設計となっている。
USDt0はローンチから12カ月未満で、700億ドル(約11兆円、1ドル=155円換算)以上のクロスチェーン価値移転を実現した。これは、相互運用技術が理論段階にとどまらず、グローバル規模で実用に耐えることを証明した事例といえる。
テザー社はこの実績をもって、レイヤーゼロの技術を「主要なデジタル資産を支えるクリティカルなインフラ」と位置づけている。
Wallet Development Kitと組み合わさる基盤レイヤー
テザー社は、レイヤーゼロの相互運用インフラが自社のWallet Development Kit(ウォレット・デベロップメント・キット:WDK) と組み合わさることで、デジタル資産の決済・清算・カストディにおける最先端の基盤レールを形成すると説明している。
この基盤は、以下の用途を想定している。
- 実世界でのデジタル資産決済
- 大規模な資産清算・送金
- 規模拡張を前提としたカストディ運用
さらに注目されるのが、「エージェンティック・ファイナンス」への対応だ。
AIエージェントが自律的に取引する時代へ
プレスリリースでは、レイヤーゼロのインフラがAIエージェントによる自律的ウォレット運用を可能にすると明言されている。
AIが自身のウォレットを持ち、ステーブルコインやデジタル資産を使って摩擦なく取引を行う世界を前提とした設計だ。
テザー社のCEOであるPaolo Ardoino(パオロ・アルドイノ)氏は、「レイヤーゼロは、あらゆるトランスポートレイヤーや分散型台帳を横断して、デジタル資産をリアルタイムで移転できる技術を構築した。これは金融業界における根本的なユーティリティであり、前例のない規模でマイクロペイメントを実行するAI経済を支える基盤となる」とコメントした。
流動性の分断を防ぐグローバル決済構想
今回の投資は、テザー社の広範な戦略とも一致している。
同社は、ブロックチェーンごとに分断されがちな流動性を解消し、ステーブルコインをグローバルな決済・清算手段として機能させることを重視してきた。
レイヤーゼロの相互運用技術は、異なるブロックチェーン環境間での資産移動を標準化し、ステーブルコインが「特定チェーンに閉じた存在」になることを防ぐ役割を果たす。
|文・編集:Shoko Galaviz
|画像:Shutterstock
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