イーサリアムは「価格が動かないまま使われ始める」段階へ──オンチェーン活動から見る現在の相場フェーズ【エックスウィンリサーチ】

⚫︎価格が停滞する中でも、イーサリアムのネットワーク利用は過去最高水準に近づいている。
⚫︎コントラクト数とトランザクション増加は、投機ではなく実需主導の改善を示唆する。
⚫︎現局面は価格先行ではなく、利用構造が先行する中立〜条件付き強気フェーズと整理できる。

現在のイーサリアム市場は、明確な上昇トレンドや下落トレンドが確認できないレンジ局面に位置づけられる。その中で、方向性としては条件付きでやや強気が優勢だが、価格主導ではなく、ネットワーク利用の改善が先行している点が特徴となっている。この局面を理解するうえで重要なのは、「価格が動かない=停滞している」と短絡的に判断しないことである。オンチェーンデータを見る限り、イーサリアムの内部では着実な変化が進行している。

まず、Ethereum上で稼働するコントラクト数に注目したい。長期チャートを見ると、コントラクト数は価格変動とは独立して、ほぼ一貫した増加基調を維持している。特に直近では過去最高水準に迫る水準まで積み上がっており、開発活動やアプリケーション利用が継続的に拡張していることを示唆する。この動きは、短期的な投機需要や一過性のブームだけでは説明しにくい。価格が高値圏にない状況下でもコントラクト数が増え続けている点は、ネットワークの利用目的が単なる価格上昇期待から、実務的・機能的な利用へとシフトしている可能性を示している。

次に、トランザクション総数の推移を確認すると、直近では1日あたり約288万件と、過去最高水準に達している。価格が明確な上昇トレンドに入っていない段階でトランザクション数が先行して伸びている構図は、過去のサイクルと比較しても特徴的だ。

エックスウィンリサーチではこれまで、相場が中立局面にある際、「価格よりも先にネットワーク実需が回復するケース」が繰り返し観測される点を指摘してきた。現在の状況は、当時の見解と結果的に整合的であり、価格に表れない形で内部構造が変化している段階と整理できる。

一方で、これらのオンチェーン改善が短期的に価格上昇へ直結すると考えるのは慎重であるべきだ。デリバティブ市場では依然として先物・オプションが価格形成に大きな影響を与えており、短期的な値動きは清算やレバレッジ調整によって左右されやすい。現物の利用増加が確認されていても、フローが伴わなければ価格は横ばいを続ける可能性がある。また、マクロ環境やリスク資産全体の資金配分が不安定な状況では、オンチェーン指標の改善が評価されにくい局面も想定される。したがって、現段階では「強気トレンド入り」と断定する材料は揃っていない。

反対シナリオとして注意すべき点も明確だ。トランザクション数やコントラクト数の増加が、ガスコスト低下や一部プロトコルによる内部処理増加に起因し、アクティブアドレスや実質的な価値移転を伴わない場合、構造的な需要回復とは言い難い。その場合、評価は修正される必要がある。

現時点では、イーサリアムは「価格が停滞する中で、ネットワーク利用が先行して改善するフェーズ」にあることがベースシナリオである。ただし、オンチェーン活動の質的改善が継続せず、実需の広がりが確認できなくなった場合、この見方は見直す必要がある。

オンチェーン指標の見方

コントラクト数:Ethereum上で実際に稼働しているアプリケーションや機能の広がりを示す指標であり、価格変動の影響を受けにくい点が特徴です。この指標が中長期的に増加を続けている場合、投機的な動きとは独立して、開発や実装ベースでネットワークの利用価値が拡張している可能性を示唆します。そのため、相場が停滞している局面でも、基盤の成長を確認するための重要な参考情報となります。

トランザクション数:ネットワークがどれだけ実際に使われているかを示す最も基本的な利用指標です。価格が大きく動いていない局面でこの数値が増加する場合、取引やアプリ利用といった実需が先行して回復している兆候と捉えることができます。ただし、一時的なスパイクなのか、平均水準が切り上がっているのかを見極めることが、構造的な需要回復を判断する上で重要になります。